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19-3.尾の最後?(須佐視点)

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 *・*・*(須佐すさ視点)








 兄神の月読命つくよみのみことの忠告が間に合わず、須佐は八岐大蛇ヤマタノオロチの尾にいかずちの術を喰らわせてしまった。

 そして、それを受けて尾は今度こそ倒れるかと思ったが。


「…………あひゃひゃひゃひゃ!?」


 変な奇声を発して、雷を受けたところから、傷が治るだけでなく。どんどんと仮の身体が変形していった。

 いくらか美しかったものが、どんどんと歪んでしまい。

 まるで、それは。


「……八岐大蛇?」


 何故。

 本体に到達していないのに、神々である須佐達の攻撃で力を取り込んだのか。考えられるのはそれくらいしかないが、一体全体どうして。

 どうして、八つの頭を持つ形状にまで変化していくのか。


「……受け過ぎて、力が膨れ上がったせいか?」


 天と地と、冥。三つの力を一気に取り込んだのだ。何も副作用が起きないわけがない。

 となれば。


「す……さ、のぉおおお!?」


 特に、三神の中でも異質な須佐の力を多く取り込んだ今なら。

 あの時のように、酒がなくとも倒せるかもしれない。

 変形を待たずして、須佐は奴のところへと突っ込んでいく。


「「須佐!?」」
素戔嗚尊すさのおのみこと様!?」


 後ろの皆が叫んだ声が聞こえてきたが、迷っている場合じゃない。

 奴はここで食い止めねば、と。須佐は別れようとしていた頭部を草薙剣くさなぎのつるぎで、一思いに薙ぎ払ったのだった。



 ギャアアアアアアアアアアアア



 耳障りな叫び声がしたが、躊躇わない。

 ひとつ、またひとつ確実に切り落としていき。

 まだ意思がありそうだった尾の頭部を真二つに割っていくと。

 瘴気があふれてきたので、慌てて後方に飛んだ。


「……やったか?」


 瘴気があふれて、落ちていく頭部は消滅していった。

 あれだけ手こずった癖にしては呆気ない、最後だったが。

 腑に落ちない部分はあったが、ひとまず。

 終わった、と須佐は剣についてた血を払った後に。エミにもだが、月詠つくよみにも抱きつかれてしまった。
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