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19-2.吸収(月詠視点)
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まずい。
神の力を取り込んでしまっている。
そして、吸収してから八岐大蛇の尾は本体を唄で探れたのか。こちらの攻撃を今度は避けて、飛んで行ってしまった。
すぐに弟の須佐が追いかけていったが、あの速度で間に合うかどうか。
「油断し過ぎていましたね……」
月詠も、エミも、閻魔大王も当然追いかけたが、須佐には劣る。
さすがは、父神の能力を色濃く受け継いだ猛き神だからか。
「ほんとよん? あん時はベロベロに酔っ払ってたせいねん?」
エミが月詠の横に並びながら、ぷくっと膨れっ面になりながら怒っていた。
だが、まだ完全に怒りを露にしていなかった。天を統べる神の頂点にいるのだから、本気で怒れば西洋などの神々を軽く凌駕してしまう。
今そうすると、黄泉の先とは言え、閻魔大王が管理を務める地獄が崩壊してしまうからだ。意外と適当に見えて、考えている姉神なのである。
「とにかく、須佐が追っているのですが……最悪の結果にならないと良いですが」
「尾っぽが本体取り込んで、地獄で復活?」
「姉上……わかっているのなら急ぎましょう。閻魔大王の胃痛を増やさないでください」
「……お願いいたします」
「あらん?」
結局はいつも通りだ。
いつも通りのようにして、いつも通り以上の力を発揮して八岐大蛇の復活を止めなくてはいけない。
何故、穫をつけ狙うのかは未だによくわかっていないが。
考えられるのは、金剛刀である咲夜のことだ。
あれは、人間には得難い力だ。
過去の万乗の人間と血の盟約を交わしたとは言え、あれに固執するのは何故か。
人間達はともかく、化け物があれを得てどうするのか。
わからないことだらけだが、本体を取り込んで復活させてはいけない。
はるか先で、戦闘を繰り返している弟と尾の様子を見る限り、急げば間に合うかもしれないが。
神の攻撃を吸収すればするほど、強くなる。
そのことに合点がいき、月詠は叫んだ。
「須佐! 雷を奴にはなってはなりません!!」
「月詠?」
「月読命様??」
だが、もう遅かった。
こちらの声が聞こえていなかったわけではないようだが、二度目の雷光を須佐は尾に浴びさせてしまい。
尾の姿は、今度は人型を保てずに歪に変化していったのだった。
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