イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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18-2.朝からスフレパンケーキ

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 *・*・*









 車を走らせること、およそ三十分。

 高速道路を使うようで、しばらく同じ景色が続いたが。みのりは、楽しかった。大好きな人と一緒にデートが出来るのだから。

 少し前だったら、考えられないくらいに楽しい。


「パンケーキ屋の店長がね? 以前依頼で除霊させたことがきっかけで仲良くなったんだ。だから、彼女さんが出来たら是非連れてきて欲しいって……前々から言われてたんだよ?」
「そ、そう……ですか」


 笑也えみやの彼女。

 事実その通りだが、改めて言われると気恥ずかしい。その店長の前でも堂々と紹介するのだろう。羞恥心が込み上がってきてくるが、穫も堂々とせねば。

 笑也に彼女、恋人として。

 笑也の隣に立つと決めたのだから、しっかりしようと拳を握ると、笑也に髪をくしゃくしゃと撫でられてしまう。


「そんな緊張しなくていいから」
「う……」
「とりあえず、あとちょっとで着くから」


 高速から降りて、下道を数分進んでいけば。

 目的地らしい、パンケーキ屋に到着したのだった。十時ごろだが、店はもうオープンしているようで。駐車場には車が何台か止まっていた。


「いらっしゃいませ」


 カントリー風の装飾が目立つ外観どおり、店内も可愛らしい雰囲気だった。

 出迎えてくれた店員は男性で、恰幅の良い体格で親しみが持てる印象だったが。笑也が手を振れば、彼は優しい笑みを浮かべた。


「お久しぶりです」
「お久しぶりです、達川たちかわさん。そちらが……?」
「そう。僕の彼女」
「ば、万乗ばんじょう穫、と言います! はじめまして!!」
「はじめまして、店長の犀川さいかわと言います」


 ご案内しますね、と案内してくれた席はテラス席で。綺麗に整えてあるフロアは、少し肌寒いが犀川がブランケットを持ってきてくれたので助かった。


「じゃあ、店長スペシャルを二つ」
「かしこまりました。お飲み物はいかがなさいますか?」
「僕はホットコーヒー。穫ちゃんは?」
「えっと……ホットティーで」
「かしこまりました。お飲み物、先にお持ちしますか?」
「お願いします」


 と、穫に飲み物を選択肢させただけで、笑也が注文をするのだった。


「……笑也さん、店長スペシャルって?」
「ああ。僕もまだ一回しか食べてないんだけど。犀川さんの気まぐれで、スフレパンケーキのプレート内容が変わるんだ」
「あ、シェフの気まぐれメニューって感じですか?」
「そうそう。穫ちゃんもいるし、きっと豪勢なプレートになると思うよ?」


 それから、別の店員が持って来てくれた飲み物で体を少し温めて。

 笑也と話し込んでいたら、そのパンケーキがようやくお目見えで。

 ふわふわ分厚いパンケーキもだが、クリームが山盛り。

 いかにも、ハワイアンパンケーキと言う感じなのが出てきた。


「わあ!」
「今日は万乗さんがいらっしゃってくださったので、少し張り切ってみました」
「ありがとうございます!」


 朝から、スイーツと言うのも少し驚いたが。

 目の前に出されたパンケーキを見ると、そんな驚きは喜びに変わっていく。

 パンケーキもスフレなのに、分厚くてふるふる震えていた。これは、焼くのに時間がかかるのがよくわかった。


「では、ごゆっくり」


 犀川が持ち場に戻ってから、笑也と一緒に手を合わせて。

 ほっぺが落ちそうなくらい、蕩ける食感のパンケーキとホイップクリームを堪能した。

 途中、笑也にクリームがついてるとそれを取ってもらったが。

 なんの躊躇いもなく口に運ぶのだから、穫の心臓を高鳴らせてしまったのだった。
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