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17-5.須佐と尾(須佐視点)
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八岐大蛇の、怒りの矛先が己に来るとはわかっていた。
だから、時間稼ぎをするのも、須佐が請け負うことになっていた。
幽世ではなく、地獄。
死者の魂が行き来する、いわばあの世で。
八岐大蛇の本体を封印させているとは言え、完全復活させてはならない。
だから、姉神と兄神が術を繰り出すまで、須佐が時間稼ぎをする。
が、倒せるのなら、須佐だけでも倒したいと、対峙する前は思っていたが。
須佐を見るなり、歪んだ表情になった時。
須佐は、はるか昔に八岐大蛇と対峙した時のように背筋が凍った気がした。たしかに、あの時は強い酒を飲ませてから倒したのだ。今回、そのような小手先の仕掛けなど出来ない。
尾とは言え、八岐大蛇の意思を持っている存在だ。相手も二度も引っかかるほど馬鹿じゃない。
「……来い」
「言われなくても……!」
須佐が手にしている剣は、奴からかつて取り出した草薙剣。
力の残滓は向こうにもあるだろうが、対抗出来る手段は須佐にはこれしかなかった。
尾は、右手に妖力を纏わせ、剣のようにした。
それを迎え打つと、かなりの硬度を持った剣だとわかった。どのように、封印を解除したかはわからないが、何千年も蓄積していた妖力を解放したせいか。
神である須佐を押そうとは、少し侮っていた。
「……だが!!」
須佐とて、神だ。
何もせずに、姉達の日本の統治に手を貸していたわけではない。
あの世の狭間。
幽世の長としても。
そして、これに狙われている、穫達の今後の未来のためにも。
須佐は己を巻き込むつもりで、雷光を地獄の雲から尾に向かって落とすのだった。
「が……!? はっ!!?」
効くかどうかはわからないが、多少ダメージを受けた須佐でも少々痛みはしたが。
直撃を受けた、尾は。
当然焦げたのだが、ケタケタと笑っていたのだった。
「……こんなもん~? 素戔嗚尊?」
やはり、一撃だけでは殺せないか。
だが、今はまだ無防備。隙があったので突撃してした。
しかし、尾も馬鹿ではないのでまた右手を剣にして、須佐の持つ草薙剣を受け止めたのだった。
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