イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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16-3.絶対渡さない(笑也視点)

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 *・*・*(笑也《えみや》視点)








 また、みのりが狙われてしまった。

 しかも、怨霊の塊だった呪怨ではなく。神代かみよの時代に存在していたらしい、伝説上の化け物。

 八岐大蛇ヤマタノオロチ

 しかも、須佐すさが所持している草薙剣くさなぎのつるぎを封じていた尾の部分。

 それが意思を持ち、月詠つくよみやエミらが危険だとずっとずっと封印していたらしいのに。

 どう言うわけか、封印が解かれて。穫の魂を連れ去ろうとしていた。

 まったくもって意味がわからない。

 だが、それ以上に腹正しかった。

 恋人である笑也を差し置いてもだが。

 穫を殺そうとしてまで、彼女の魂を抜き取ろうとするだなんて。

 笑也は、正直言って怒りが抑えられなかった。

 パーティーは一旦お開きとなり、今笑也は自室に穫を招いて、一緒にソファに座っている。

 バーラウンジで、穫の顎に笑也の脳天がぶつけた痛みはそれぞれもうない。

 ソファに座ってから、笑也は穫をゆっくりと抱き寄せた。穫は拒否することはなく、こてんと笑也の胸板に頭を置いてくれた。

 それがいじらしくて愛らしい。


「…………さない」
「……え?」
「僕の恋人を、わけわかんない奴になんて。絶対、渡さない」
「……はい」


 本心だ。

 笑也は、まだ穫と付き合ってひと月程度でも。

 腕の中にいる彼女を、愛している。

 将来の相手だと思っているくらい。現当主である母親にも、万乗ばんじょうの因縁と事件解決などを報告した際に、穫との事を伝えた。

 女っ気のなかった息子に、やっと春が来たのか、と母は安心してくれた。分家でも、当主並みの加護を持つ女性なら問題はない。

 今度、一度くらい挨拶させてほしいと言うのを思い出して。笑也は穫の髪に軽くキスしてから切り出すことにした。


「穫ちゃん、八岐大蛇のことは一旦置いとくけど。お願いがあるんだ」
「お願い、ですか?」
「うん。僕の家族に、会ってほしい」
「え?」
達川たちかわの現当主。母さんが、君に会ってみたいって」
「えええ!?」


 慌てる顔もすごく可愛い。

 笑也も、間接的には会ったが、穫の祖母にもきちんと挨拶したい。彼女が穫を守っていなければ、穫と出会うこともなかったから。

 少しして、穫が顔を真っ赤にさせながら頷いてくれたので。

 笑也は少し強めに彼女を抱きしめてから。

 蕩けるような口づけを、彼女に贈ったのだった。

 まだ数回しかしていないので、穫はすぐに酸欠のようになってしまったが。

 笑也もだが、穫も慣れていないのは当然なので。

 息が落ち着いてからは、二人で笑い合った。


「改めて、誕生日おめでとう。僕と出会ってくれてありがとう」
「私こそ、ありがとうございます」


 ハプニングはあったが。これで穫も成人した女性となった。

 少女から、女性になっていく姿が楽しみである。そのためにも、笑也から穫を奪い取ろうとする八岐大蛇の尾は、きっちりと倒さなくては。
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