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15-5.魂を抜かれ
しおりを挟む*・*・*(笑也視点)
穫が倒れた。
何が起きたか、エミの蛍火に照らされたバーラウンジですぐにわかるはずもなく。
大理石に、彼女が手にしていたカクテルグラスが落ちて。途端に割れる音が室内に響く。
笑也は咄嗟に穫の腕を掴んで抱きとめた拍子に。
自分のフルートグラスも落として、それも床に落ちて割れたのだった。
「どーしたのよ!?」
エミは巧に照明をつけるように指示してから、こちらに来た。
笑也もまだ、抱きとめた穫に何があったのかわからないでいたが。照明が点いて、穫の顔を覗き込むと。穏やかな表情で寝ていただけだった。
表面上は、だが。
「これ……!?」
「魂が……抜け始めているわねぇ?」
まだ温かいが、だんだんとその温かさも抜けていっている。
このマンションで。
エミや他の二神もいるのに、笑也の恋人の魂を抜けさせるだなんて、大胆な所業。
いったい、誰がそんなことをしたのだろうか。
「なんやなんや!?」
「「「穫!?」」」
「姉者!」
「姉上!」
他の皆も駆けつけてくれたのだが、穫の身体からどんどんと体温が消えていくばかりで。
どうしていいかわからないでいると、エミに軽く頭を殴られた。
「しっかりなさい!」
「……エミ」
「みのりんはあんたのでしょ? 今こそ落ち着いて、相手の経路を見つけるべきよ! けど、こん中でその術が使えるのは……残念だけど、あたし達やさわちんだけね?」
「琴波……さんが?」
「え、僕が行くんですか?」
まだ穫に起きた状況がわかっていない、佐和は自分を指差していただけだった。
「みのりんの魂を、誰かが奪おうとしてんのよ。さわちん、協力して!」
「わ、わかりました!!」
なので、穫をラウンジのソファに寝かせて。
エミと佐和は彼女の右手をしっかりと握りしめた。
「導け、導け。我が同胞」
「紡げ、紡げ。魂の導き」
「我を」
「我を」
「「導け!!」」
声を上げた途端。
佐和も崩れ落ちるようにソファにもたれかかり、エミは光の玉になって穫の身体の中に入ったのだった。
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