イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
84 / 168

15-4.誕生日パーティー③

しおりを挟む
 料理も、豪勢だった。

 ピザはいつもの宅配ピザでも、デラックスサイズで食べ応えがありそうなもので。

 だが他は、多分たくみの手製かもしれない。

 唐揚げ。

 フライドポテト。

 クリームコロッケ。

 ポテトサラダ。

 フィッシュ&チップス。

 などなどなど。

 ジャンキーな食べ物だらけだった。

 もちろん、バースデーケーキもあったのだが。

 それは注文したものだと思われるが、サイズが。

 今まで、ごく普通の家庭で育ってきたみのりには、信じられないサイズだった。テレビで芸能人が扱うようなメートルサイズのバースデーケーキ。

 秋苺たっぷりで、穫の大好きなチョコクリームがふんだんに使われていて、とても美味しそうだった。


「今日ぐらいはって、僕が注文したんだよ?」
笑也えみやさんが?」
「そりゃ、彼氏ですからこれくらいは?」


 茶化して言うが、笑也が言うのだからちっとも嫌味っぽくない。

 グラスを持っていなければ絶対抱きつきに行ったが、今は我慢だ。

 巧が付属にと買っておいたらしいろうそくは、本数ではなく数字のタイプ。2と0のろうそくを、ケーキの真ん中あたりに刺して、すぐにチャッカマンで火を点けた。


「ほな、照明一回消すで?」


 巧が少し奥に行くと、一気に広いバーラウンジが真っ暗闇になった。見えたのは、穫の目の前にあるケーキのろうそくの灯りだけ。

 と思っていたら。

 目の前を、蛍のような灯りが通り過ぎたのだった。


「みのりんのパーティーなんだから、ちょっとしたデモンストレーションよん?」


 エミが何かしてくれたようで、蛍の光みたいな灯りがどんどん増えていき。

 上に登っていくと、まるで天の川のようになっていた。


「さ、穫ちゃん? 火を消して?」


 笑也に言われてから、穫はふっとろうそくに息を吹きかけて。

 火が消えて、天の川の光だけになったら、わっと声が上がった。


「では、穫ちゃんの誕生日を祝して。乾杯!!」


 笑也が音頭を取れば、他のメンバーも乾杯と言い合い。

 穫は、巧に作ってもらったグラスを笑也の細長いグラスとかち合わせて。

 人生で初めての、お酒を飲むことにした。

 ゆっくりとグラスを傾けて、ピンク色の液体を口に含むと。

 桃の甘味に、ほのかに苺の味がして。

 とてもフルーティーで、飲みやすいお酒だった。


「美味しいで……!?」


 笑也にそう言おうとしたら。

 天の川の光で照らされた彼の顔が、ぐにゃりと歪んで見えたのだった。


「穫ちゃん?」
【……穫】


 笑也は普通に返事をしただけなのに。

 彼の声に重なって、別の誰かが穫を呼んだ。

 その声が聞こえた直後から。

 穫の意識が途絶えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン
恋愛
最後の記憶は、消毒液の匂いと白い部屋と機械音。 月宮雫(20)は、長い闘病生活の末に死亡。 『来世があるなら何にも負けない強い身体の子供になりたい』 そう思ったお陰なのか、私は生まれ変わった。 剣と魔法の世界にティア=ムーンライドして朧げな記憶を持ちながら。 でも、相変わらずの病弱体質だった。 しかも父親は、強い身体を持つ勇者。 「確かに『強い身体の子供になりたい』。そう願ったけど、意味が全然ちがーうっ!!」 これは、とても可哀想な私の物語だ。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

セブンスガール

氷神凉夜
キャラ文芸
主人公、藤堂終夜の家にある立ち入り禁止の部屋の箱を開けるところから始まる、主人公と人形達がくりなす恋愛小説 ※二章以降各々ヒロイン視線の◯◯の章があります 理由と致しましてはこの物語の完結編が○○の章ヒロイン編と◯◯章の前半のフラグを元にメインストーリーが完結の際の内容が若干変化します。 ゲーム感覚でこの物語を読み進めていただければ幸いです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

苦労人お嬢様、神様のお使いになる。

いんげん
キャラ文芸
日本屈指の資産家の孫、櫻。 家がお金持ちなのには、理由があった。 代々、神様のお使いをしていたのだ。 幼馴染の家に住み着いた、貧乏神を祓ったり。 死の呪いにかかった青年を助けたり……。

《書籍化》転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
《アルファポリス・レジーナブックスより書籍化されました》 ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

後宮一の美姫と呼ばれても、わたくしの想い人は皇帝陛下じゃない

ちゃっぷ
キャラ文芸
とある役人の娘は、大変見目麗しかった。 けれど美しい娘は自分の見た目が嫌で、見た目を褒めそやす人たちは嫌いだった。 そんな彼女が好きになったのは、彼女の容姿について何も言わない人。 密かに想いを寄せ続けていたけれど、想い人に好きと伝えることができず、その内にその人は宦官となって後宮に行ってしまった。 想いを告げられなかった美しい娘は、せめてその人のそばにいたいと、皇帝の妃となって後宮に入ることを決意する。 「そなたは後宮一の美姫だな」 後宮に入ると、皇帝にそう言われた。 皇帝という人物も、結局は見た目か……どんなに見た目を褒められようとも、わたくしの想い人は皇帝陛下じゃない。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...