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14-6.良縁を結ぶ(エミ視点)
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想い想われ、恋焦がれて。
これとない逸材と知ってから、十六年以上経ったが。
やっと、想う相手が出来て良かった、とエミこと天照大神は思った。
結ばれた二人をそっとさせようと思ったが、入れ替わりで巧が部屋に行ってしまったのは、エレベーターで気づいたのでもうしょうがなく。
エミは、佐和や咲夜達と一緒に、公園などで時間を潰そうかとマンションを出た。
まだまだ暑いが、エミは神体なので関係ない。咲夜や羅衣鬼も実体化してはいるが人間じゃないので、関係はない。
ひとり、佐和だけが暑いとマンションの自販機で飲み物を買おうとしたが。
あまりの金額の高さに、声を上げてしまった。
「高過ぎるだろう!? この設定!!」
【ここだもの? これくらいが標準なのよん】
「ううむ。僕もバイトしていないわけじゃないが、これは遠慮しておこう」
と言うわけで、近所の公園に出向くと。珍しくアイスの移動販売があったので、エミは久しぶりに人間化して。一応と持っていた所持金で全員分のアイスを買ってやった。
「はい、どーぞ」
「いいんですか?」
「いいわよん。たまには使わなきゃだし」
あの自販機の飲み物は、悪くないのだがエミの好みではない。だから、アイスの方がずっとずっと良かった。
エミはチョコチップとティラミス風味のにした。こう言う店屋物でも、味は悪くなかった。
四人で、公園で一番でかいベンチで座りながら食べることにする。
「しかし。穫が好きな相手と結ばれて良かった良かった」
佐和はレモンシャーベットとマスカルポーネチーズケーキのアイスを食べていた。
「そうねん? お互い初恋みたいだし、良い出会いが結べたようで良かったわ~」
「ふふ。達川氏になら、穫を預けてもいいですから」
「笑也を信頼してる?」
「達川氏は、極力誠実に見えますからね? 僕だけじゃ、あの呪怨をどうにも出来なかったですから」
「そうねん?」
神として、日ノ本の最高神としては、あれしきの怨霊の塊を消滅することは簡単だった。
だが、穫の願いは、誰も無闇に死なないでほしいと言うこと。
けれど、その願いのせいで、呪怨が無差別に人間達を屠ったのも現実に起きた。彼らの魂は、月詠が回収したので、裁判を行わずに輪廻転生させることにはなったが。
「……私の役割も、ひとまず終わりました」
咲夜は、ダークチョコレートチップ入りのチョコアイスにバニラを食べていた。
本体はまだ穫の中にあるが、意識を繋ぐ分体はここにいる。
たしかに、万乗を苦しめていた事態は終息を迎えた。金剛刀である咲夜が穫に宿っている理由も、ある意味終わりを迎えたのだ。
だが、エミは咲夜をまだまだ彼女から抜けさせないつもりでいる。
「だーめよん? 万乗の血の盟約はとりあえず終わったかもだけど、あんたの役目はみのりんが寿命を終えるまで見届けなさい? 高天原に戻れるかどうかはその先次第」
「……承知しました」
「羅衣鬼もね?」
「! はい!」
羅衣鬼はいちごとチョコのアイスを食べていたのだった。
「となれば。穫は達川の次代当主の妻になる可能性が高いんですね?」
「その通り! 応援するわよ、さわちん!」
「ええ!」
行く先に困難はあれど。
見守る相手に、良縁を結ぶことが出来たのだから。
今年の出雲での大会議はいい報告が出来そうだ、と。エミはさらに上機嫌になった。
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