イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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14-1.戦いから明けて

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 *・*・*









 あの戦いから数日後。

 みのりは実家に来ていた。

 祖母に、呪怨を退治出来た事を報告するためだ。

 真雪まゆきは、穫を守るために使っていた守護の術の反動でしばらく寝込んでいたのだった。穫が行く頃には、普通に起き上がれるようにはなったが。


「……そうかい。達川たちかわさん達もだが、本家の御当主まで」
「うん。……いつきさん、なんだけど。一緒に戦ってくれたの」
「…………私が霊体で抗議に行っても、動かなかった方なのに」
「自分以外の万乗ばんじょうの人間を死なせないためだって」
「……そう」


 納得してくれたのか、真雪は穫が持ってきた冷茶をゆっくりと飲んだ。


「今度、ここに来ていいかって。ちゃんと謝罪したいらしいの」
「私から連絡しようか?」
「おばあちゃん、まだ無理出来ないでしょう? あ、笑也えみやさんに聞いたよ? おばあちゃんが使ってたの、年齢を考えると危険なのだからもう使わない方がいいって」
「ふふ。達川の御当主に言われちゃぁね?」
「まだ御当主じゃないらしいよ?」
「そうだったのかい?」


 とりあえず、もう心配はないと安心させてから真雪を布団で寝るように促した。


「まだ、笑也さんとの契約が終わってないから。私はあのマンションに住むけど」
「万乗の業を祓ってくださったんだ。その分、しっかりお務めするんだよ?」
「うん!」


 帰る前に、咲夜さくや羅衣鬼らいきを顕現させてから顔合わせを済ませて。

 今日は休日だが、ハウスキーパーの仕事はちゃんとあるので咲夜と人間に化けさせた羅衣鬼を伴って、スーパーに買い物に行く。

 いくら買い足しても買い足しても、エミが憑依した笑也の胃袋は底無し沼なのと。

 エミの弟神である須佐すさ月詠つくよみ達もしょっちゅう来るので、インスタント食品を使った食事を貪り食べていく。

 穫がいなくても作れるくらいだから、そこはもうどうしようもない。ゴミ収集は羅衣鬼が吸引してくれるので楽ちんではあるが。


「野菜もたくさん食べてもらわなきゃ」
「……肉も欲しい」
「俺もー」
「それはもちろんだけど」
「なーなー、穫。菓子買っていい?」
「だーめ。まだうちにあるでしょ?」


 姉弟に見えるようなそうじゃないような。

 そんな年齢差で二人が顕現しているので、周りからは不振がられない。

 時折、咲夜の美少女っぷりにナンパがあるが。そういうのはすぐに彼女から一刀両断にされるので、最近はほぼない。

 穫も稀にあったが、すぐに二人からの口撃で撃退させられた。穫が笑也を好きなのを知ってくれているからか。

 かと言え、恋愛事に臆病過ぎる自分が、あの美形さんに告白だなんて畏れ多い。まず、雇い主だし、命の恩人だし、実質上の保護者だから。


「あら、穫さん?」


 スーパーを出て三人で歩いていると、商店街に用があったのか斎がひとりで歩いていた。相変わらず、眩しいくらいの美女である。


「こんにちは。おひとりですか?」
「ええ。…………遠巻きに護衛はいるけど」
「ですよね?」


 由良ゆらもだが、水無みなしが黙っているはずがない。

 十分成人している女性でも、こんな美女になにかあってからでは遅いからだ。

 とりあえず、穫と別れるまで並んで歩くことにした。


「買い出しすごいわね?」
「エミさんもですが、須佐さん達がたくさん食べるもので……」
「インスタントが除霊と供物に使えるだなんて。達川さんならではの発想ね?」
「あと、エミさんが大好きですし」
「ふふ。私この前の打ち上げくらいでしか食べたことなかったけど。侮れないわね?」
「全部が全部頼ってちゃいけないですけど」


 笑也の表向きの仕事がインスタント食品研究家だから、仕事を並行するのと同じではあるが。

 それを話せば、斎は小さく微笑んだ。


「お似合いね?」
「はい?」
「穫さんと達川さん」
「はいぃいいい!?」


 斎には一切告げていないのに。

 どういうわけか、穫の気持ちがバレていたようだ。

 斎を見ても、にこにこと笑っているだけで。


「打ち上げの時に、エミ様が達川さんに戻った後。穫さんとっても素敵な表情でいたの。だから、ああこの人は……って私は思ったんだけど」
「え、いえ、その……!?」
「穫さんは万乗でも私以上の逸材だもの。もしお付き合いなさるんなら、私は後見人になるわ」
「ふぇえうぇえ!?」


 なら、本人にもバレバレなんじゃ、と思ったら。斎の後ろから、厳ついが渋めの男性が頭をかきながらやって来た。


「斎様、からかうのはほどほどに」
「あら、水無」
「み、なし……さん?」
「……ああ」


 そして、斎と並んだ彼は。

 なんとお似合いなんだと、こちらが眩しく感じるほどで。

 少し斎を脇に呼んで、コソコソと話すことにした。


「どうしたの?」
「斎さんこそ、水無さんとはどういう関係ですか?」
「へ、え!? み、水無は分家でも私の護衛で」
「お似合いですよ?」
「穫さん!」


 少々意趣返しをしてから。

 斎は水無と並んで帰って行ったのだった。


「……あれは時間の問題だな?」
「だよな!」


 咲夜達もこう言うくらいだから。

 斎にも、ちゃんと幸せになって欲しいと願うのだった。
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