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13-5.呪怨と接戦②
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キリがない。
どれだけ、剣になっている咲夜をふるっても、あとからあとから触手が再生されるように増えていくのだ。
それだけ、無関係な人間を貪り食べて力をつけてしまったのか。
自分の判断力の遅さに悔しく思うが、悔いていても仕方がない。早くこの化け物を倒さないと、もっともっとたくさんの人間達を食べては魂まで取り込んでしまうのだ。
奴の体内に取り込まれれば、生まれ変わるのも不可能になるかもしれない。
穫はそれも許せなかった。
【穫、右! 次は左だ!】
「俺もいるぜー!!」
「……はあ。はあ……!」
羅衣鬼もいるのでひとりではないのだが、穫が十束剣である咲夜を振るわねば、呪怨は倒せない。
万乗の本家に呪詛返しがないようにするには、分家でも金剛刀の所持者である穫が退治しないと意味がないのだ。
だけど、触手ばかり迫ってきて、なかなか本体に近づけない。
「……震え、震え。国津神に魅入られし、天津神。我が身の欠片を彼の者に、彼の者に伝わせ宿せ!!」
斎の声がした。
この激動の最中、何をと思っていると。別のところで分身と戦っている佐和のように手を素早く組んでは次ヘと繰り返していた。
彼女の周りは無防備なのに、水無達が術の完成まで防いでいたのだった。
「我が力の欠片を、彼の者に!!───────【風波・円風陣】!!」
組んでた手を穫の方に向けたら、穫の周りに風が吹き荒れた。
なんだと思って、咲夜を振り下ろしたら。触手がいとも簡単に消失出来るだけでなく、風のお陰で触手が穫に当たることがなかった。
「穫さん! あまり長くは保たないけれど、早く呪怨本体を!!」
「は、はい!!」
わざわざ穫のために、身を挺して術を施してくれたのか。
だが、このお陰で好機を見出せた。
触手が当たらなくなったことで、呪怨も焦り始めてきて。どんどんと後退していくが、穫と羅衣鬼は逃さなかった。
穫は、ここまで繋いでくれた。
斎に。
エミに。
佐和に。
水無達にも。
彼らの協力なくしては、この好機を掴めなかった。
だから、絶対に逃さないし、穫も逃げない。
【行け、穫!!】
「終わりだああああああああ!!」
「俺も続くぞおおおおおお!!?」
咲夜と羅衣鬼と三人で。
渾身の一撃を、呪怨にお見舞いするのだった。
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