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13-3.呪怨とようやく
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何処かから、稲妻が落ちる音がした。
けれど、空は曇天どころか晴天。
雨も降る気配がないのに、何処から、と穫もだが佐和やエミも気づいて立ち止まった。羅衣鬼もキョロキョロとしてたが見つからないようだ。
「今の音!?」
「うむ。術を扱うのなら、雷鳴関係だろうね?」
「須佐とかよりは弱いけどぉ?」
「あれでですか!?」
「んふ~? 神だもん? 人間に劣るわけないわん?」
「……そうですね」
「……うん。そうだね」
とりあえず、斎が呪怨に接触したかもしれない。
それを示すかのように、何度も何度も雷鳴が響き渡るので。穫達はそちらの方角を目指すことにした。
途中、佐和の式神が何体か戻ってきて、あの方向へと導いてくれたため。穫達は迷わず、その方角に向かう。
殺されるかもしれない。
けれど、自分以外の人間を死んでほしいとは思わない。
傲慢な考えかもしれないが、穫の考え方はどうしたってただの一般人だ。斎もだが、佐和のように術を駆使する考え方は知らない。
手にしている咲夜を振るうとしても、相手を倒すのにためらいがないわけじゃないのだ。
ただの、町にある食堂の孫娘。
祖母に憧れて、将来の夢は食堂を継ぐ事。それまでに、好きになった学問を学ぶことが出来ればいいなと、今の大学を受験しただけ。
だから、こんな風に学問以上に、妖怪とかなんとかに関わることになるだなんて。
思ってもみなかった。
「みーのりん! あれよ!」
走りながら、エミが指を向けた場所では。
斎や水無達が、黒くて大きな虎と戦っているのが見えたのだ。
「斎さん!?」
怪我していないか、こちらからでは見えないが。
呪怨らしいどす黒い大虎は、背中から触手のようなものを出して、斎達に攻撃をしていた。
こんな光景が現実にあると思えなかったが。
事実、現実だった。
「……? み、のり、さん!?」
何故ここに、と顔に書いてあった。
振り向いた直後、呪怨の触手が当たりそうだったので。穫は咲夜に頼んで、咄嗟に瞬間移動して。触手を振り払って消滅させたのだった。
「私を……万乗を苦しめてきた、呪怨!!」
勇気だなんてこれっぽっちもない。
今も、怖い怖いと思っているくらい小心者だ。
だけど、誰も死んでほしくない気持ちは本当だ。
【と……つか、を持つ……お、んなぁ!?】
「そう。私! 私が食べたいんでしょ? けど、食べさせない! お前はここで倒す!!」
「当然よん。みのりん!」
「僕も援護する!!」
ひとりじゃない。
支えてくれる人達がいるから。
立ち向かえるんだ、と。咲夜に教わりながら剣を振るった。
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