イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
68 / 168

13-2.呪怨の発生(呪怨視点)

しおりを挟む





 *・*・*(呪怨視点)









 ああ、ああ。

 喰らいたい、喰らい足りない。

 何を。

 何が。

 肉を。

 血を。

 魂を。

 喰らうに喰らいまくって。

 呪怨は、本来の目的をまた忘れかけていた。

 喰らい過ぎて。

 味を、味わい過ぎて。

 味をしめて。

 ああ、この満足感は何時以来か。

 昔、昔。

 ああ、昔だ。

 巫蠱ふこ呪詛じゅそを、愚かにも見様見真似でやろうとしていた、万乗ばんじょうの女がきっかけだった。

 まだ呪怨として間もなかった、呪詛の塊だった呪怨を生み出して。愚かにも取り込まれてしまった、哀れな女。

 あの時に、柔らかい肉と甘い血の味を知ってしまった。

 それから、喰らいに喰らいまくったが。

 いつのまにか飽きてきて。満足してしまったから、しばらく飽きてしまったのだ。

 だが、それは違った。

 単純に、毒のように溺れたくなかったからだ。

 呑まれてしまいたくなかった。今のように。

 だから、今近づいている懐かしい気配に、すぐに気づけなかった。


「…………呪怨、お前をここで倒す!」


 濃い。

 濃い、霊力を持った女だった。

 人間にしては美しい女。

 そして、十束とつかのつるぎを宿した、あの女とは違う万乗と同じ血を持つ女。

 素直に、喰らってしまいたいと思った。


【……我を、倒すだと?】
「お前は、昔も今も、世に必要とされない存在だ!」
【……くくく】


 たしかに霊力は素晴らしいが、立ち向かう勇気とやらが足りないように思える。震える魂が、呪怨の目に映ったからだ。

 おこがましい。

 弱い、弱い。

 なら、喰らうまでだ、と。

 屠ってた肉を、ひと口で口に入れた。


水無みなし由良ゆら!!」
「「はっ!!」」


 女の背後にいたのか、二人の黒ずくめの男が出て来た。

 女の命に従い、呪怨の方になにか呪を施してきた。呪術師としては、手練れなのか。拘束の札みたいなものを飛ばしてきて、呪怨の足を止めようとしたつもりだが。

 弱い、まだまだ弱い。


【……たわいもない!】


 そんな弱い拘束など、力を得ている呪怨にはなんの効果もない。

 そう思っていたのだが。


「……それは時間稼ぎ。本命はこちら!!」


 女の声がした途端。

 呪怨の上から、稲妻が降り注いできたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

後宮見習いパン職人は、新風を起こす〜九十九(つくも)たちと作る未来のパンを〜

櫛田こころ
キャラ文芸
人間であれば、誰もが憑く『九十九(つくも)』が存在していない街の少女・黄恋花(こう れんか)。いつも哀れな扱いをされている彼女は、九十九がいない代わりに『先読み』という特殊な能力を持っていた。夢を通じて、先の未来の……何故か饅頭に似た『麺麭(パン)』を作っている光景を見る。そして起きたら、見様見真似で作れる特技もあった。 両親を病などで失い、同じように九十九のいない祖母と仲良く麺麭を食べる日々が続いてきたが。隻眼の武官が来訪してきたことで、祖母が人間ではないことを見抜かれた。 『お前は恋花の九十九ではないか?』 見抜かれた九十九が本性を現し、恋花に真実を告げたことで……恋花の生活ががらりと変わることとなった。

イケメン歯科医の日常

moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。 親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。 イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。 しかし彼には裏の顔が… 歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。 ※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。

キモオタの僕と七人の妹~許嫁はドSで無慈悲な科学のお姫様~

万卜人
キャラ文芸
キモオタな僕に、前世からの宿命による七人の妹が出現! 政府によるオタク弾圧を跳ね返すため、僕らは戦いを挑む。敵は美人の女性総理大臣に、ツッパリに転んだ裏切りのオタク評論家。さらにはヴァーチャルリアルティでの冒険もあるぞ!

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

Apricot's Brethren

七種 智弥
キャラ文芸
~あらすじ~ 目覚めた時、少年は自分がどこにいるのかわからなかった。周囲は見知らぬ風景で、何の手掛かりもない。記憶喪失に陥り、自分の正体や過去のことを思い出すことができないのだ。 少年は不安と焦りを感じながらも、周囲を探索し始める。いつの間にか迷い込んだ家屋の中で、何か手掛かりを見つけることを期待しながら。 しかし、その最中に家主に発見されてしまう。驚きとパニックに襲われる中、少年は説明しようとするものの、家主は警戒心を抱いている様子だった。 男との腹を割った会話の末、少年は家主に自分の状況を説明する。記憶喪失であり、自分の正体を探しているのだと。家主は悶着の末、少年と行動を共にすることとなる。 そして少年の正体を追求するための冒険へ。彼らは様々な場所を訪れ、人々と出会いながら少年の謎を解き明かしていく。 果たして、少年Xの正体とは何なのか。彼の過去や記憶はどこにあるのか。そして、この見知らぬ世界に迷い込んだ理由とは何なのか。 少年と男の物語は、彼らの運命を変える大きな真実へと続いていく……。

【完結】皇帝の寵妃は謎解きよりも料理がしたい〜小料理屋を営んでいたら妃に命じられて溺愛されています〜

空岡
キャラ文芸
【完結】 後宮×契約結婚×溺愛×料理×ミステリー 町の外れには、絶品のカリーを出す小料理屋がある。 小料理屋を営む月花は、世界各国を回って料理を学び、さらに絶対味覚がある。しかも、月花の味覚は無味無臭の毒すらわかるという特別なものだった。 月花はひょんなことから皇帝に出会い、それを理由に美人の位をさずけられる。 後宮にあがった月花だが、 「なに、そう構えるな。形だけの皇后だ。ソナタが毒の謎を解いた暁には、廃妃にして、そっと逃がす」 皇帝はどうやら、皇帝の生誕の宴で起きた、毒の事件を月花に解き明かして欲しいらしく―― 飾りの妃からやがて皇后へ。しかし、飾りのはずが、どうも皇帝は月花を溺愛しているようで――? これは、月花と皇帝の、食をめぐる謎解きの物語だ。

学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ
キャラ文芸
 三国志×学園群像劇!  平凡な少年・リュービは高校に入学する。  彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。  しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。  妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。  学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!  このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。 今後の予定 第一章 黄巾の乱編 第二章 反トータク連合編 第三章 群雄割拠編 第四章 カント決戦編 第五章 赤壁大戦編 第六章 西校舎攻略編←今ココ 第七章 リュービ会長編 第八章 最終章 作者のtwitterアカウント↓ https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09 ※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。 ※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。

ピアニストの転生〜コンクールで優勝した美人女子大生はおじいちゃんの転生体でした〜

花野りら
キャラ文芸
高校生ピアニストのミサオは、コンクールで美人女子大生ソフィアと出会う。 眠りながらラフマニノフを演奏する彼女は、なんと、おじいちゃんの転生体だった! 美しいピアノの旋律と幻想的なEDMがつむぎあった時、それぞれの人間ドラマが精巧なパズルのように組み合わさっていく。 ちょっぴりラブコメ、ほんのりシリアスなローファンタジー小説。

処理中です...