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12-4.草薙剣(須佐視点)
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血潮、血潮。
血潮の臭い。
神である素戔嗚尊ですら、むせ返るような臭いだった。
姉神である天照大神も、あの穫も街に出ているとわかったが。姉はともかく、穫はまだ覚醒したての少女に過ぎない。
この惨状に耐えられるとは思わないが、決断力はある女だ。自らの決断で姉と共に街に出たのだろう。
「……とにかく、どこだ?」
呪怨が表立って、出てきたと言うことは。
穫を狙ってのこと。
つまりは万乗の家の者を狙い、喰らうための準備。
だが、こうも無差別に喰い荒らせば、骨どころか魂すら幽世にはいかない。
神として、月読命の弟として。
そこは本分を違えてはいけないからだ。
「……兄者も兄者で動いているとは思うが」
須佐は、天に向かって手を掲げた。そこから光が生じて、ひとつの剣が現れたのだ。
「……草薙剣よ。我を導け」
妻にまで導いてくれた、八岐大蛇の尾から取り出した宝剣。
人間達の模造刀ではなく、本物の宝剣だ。エミの許可で須佐が持つことを許されている大事な相棒だ。
柄を握ったら、天高く掲げて、剣先から雷光がほとばしる。辺り一面に落ちていくが、人間達に危害は与えない。
狙うは、呪怨のみ。
「……ち。分身だけか」
今の一撃で消せたのは、呪怨の分身程度。
いくら草薙剣でも、近接戦ではないので、遠隔操作は難しいだろう。
とにかく、今いるビルから飛び降りて、地上に立つと。
人間達が集まったり、逃げたりと忙しない状況となっていた。
「……俺も協力すると言った矢先にこれか」
まったく、人間と言うものは刺激を求める存在だ。
それが悪いわけではないが、今回は最悪だった。
【……去れ!】
草薙剣を振り下ろして、群がる人間達に呪を向ければ。ゆっくりではあったが、群がるのをやめて人間達は帰って行った。
ひとまずは、これを繰り返しつつ呪怨を探すしかない。
「姉者……本体は頼むしかないか?」
出来るだけ須佐も手伝いたいが、それが叶うかわからない。
だから、出来ることをするしかないのだった。
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