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10-5.渇き(呪怨視点)
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ああ、足りない。
ひとり、またひとり、と。
呪怨は屠っていく。
人間を。
男女、年齢関係なく。
見つけては、引きずり込んで。
影の影で、屠って、骨まで残らず喰らう。
そんな日々を繰り返していたら。
ああ、己はなんのために存在しているのか。
喰らうが喰らう。
血を、骨を、魂を。
貪りに貪って、いつのまにか存在の意味を忘れそうになっている。
なんだったか、なんだったか。
【……………………ああ、ああ。思い出した、万乗だ】
天津神を宿している女。
呪怨を呪怨に仕立てることになった、あのにっくき万乗の家の者。
天津神に愛される存在。
許すまじ、許すまじ。
だが、なんだったか。
人間達の、血を、肉を、骨を、魂を。
喰らうにつれ、その目的が薄らいできている。
であれば、もうこのままでもいいかもしれないと思うほど。
【……いいや。……いいや、いいや。あれの肉も喰らいたい】
成熟には程遠いが、柔らかく旨そうな肉と血の香りがしそうだった。
しかも、天津神を宿しているのであれば、霊力もたんまりと蓄えていることだろう。
【…………くく。くくくく……あーはっはははは!?】
そうだ、何も呪怨の分身を差し向けなくともよかったではないか。
わざわざ、遠巻きに攻撃せずとも良いではないか。
ならば、まだまだ喰らおう。
力をつけるために。
瘴気をつけて、あの女の血肉を喰らうためにも。
まだまだ喰らおうではないか。
【……ああ、ああ。ならば、霊力がある人間も喰らおうではないか】
多少抵抗はされるだろうが、喰らって損はない。
向かおう。
街へ。
そして、血潮を求めて。
万乗の女を、この牙で引き裂くためにも。
呪怨は根城に溜め込んでいた、死体などをすべて喰らい終えてから。
まだまだ、渇きが落ち着かないまま、街へと空を駆けたのだった。
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