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9-3.穫の決意
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笑也から話があると言われた。
夕飯のリクエストにしては、少しおかしいと思った。エミからのリクエストなら、多分LIMEのメッセージで送れば済むものなのに。
まさか、呪怨に関係することだろうか。
「穫~! 講義終わったかい?」
少し考え込んでいたら、佐和が合流してきた。
「あ、うん。笑也さんからメッセ届いてきて」
「うん? 達川氏が?」
「お話があるんだって」
「ふーん。穏やかな内容ではないかもしれないねえ?」
やはり、佐和もそう思ってくれた。
つい昨日の襲撃の事もある。もしかしたら、万乗全体に何かあったかもしれない。
宿っている、咲夜からは何もアクションはなかったが。とりあえず、佐和も行くと言ってくれたので、メッセだけ笑也に送ってから帰宅したのだが。
何故か、笑也は部屋の端で丸まっていて。
エミから、終始ツンツンと肩を突かれていた。
【あんら、おかえり~? さわちんはいらっしゃーい】
「た、ただいまです」
「お邪魔します。……達川氏、どうしたんです?」
【ちょっとね~? 巧~? みのりん達帰ってきたわよ?】
「おー」
笑也は放っておいていいのか、キッチンにいるらしい巧を呼ぶと。彼は、何か料理をしているのかと思えば、ケーキを人数分持ってきてくれたのだ。
ケーキと言っても、昨日買い出しの際に買ってきたホットケーキミックスで作ったと思われるパンケーキだったが。
それでも、綺麗な焼き目だった。
「ありがとうございます」
「おお! ホットケーキ?」
「一応パンケーキやで? とりあえず、穫ちゃん。咲夜と羅衣鬼も出して?」
「? はい?」
頼まれたので二人を顕現させれば、うじうじしていた笑也も回復したのか。ソファに腰掛けたかと思えば、いきなり深々と腰を折ったのだ。
「ごめん、穫ちゃん!」
「え……はい?」
「万乗の人間じゃないんだけど、あの呪怨のせいで死人が出ちゃったんだ!!」
「……え?」
死んだ。
誰かが死んだ。
万乗の人間ではないけれど。
その事実が、すぐ頭に入って来ず。意識が遠のきかけたが、隣にいた咲夜にすぐに抱きかかえられた。
「気をしっかり持て、穫!」
「け……ど、さく、や」
「たしかに、目を逸らせれない事実だ。だが、穫が悪いことはひとつもない!!」
「そうだぞ、穫!」
羅衣鬼も叫びながら、穫に抱きついてきた。
すると、さらに空いている肩の方に誰かが抱きついてきたのだ。
「そうだとも、穫? 君は何も悪くない。金剛刀の所持者と言う理由だけで、呪怨は君を狙っているとは聞いたが。あれは意思を持った呪いだ。自分勝手で動き回っているんだ。言い方が悪いが、今回が最初じゃないだろう。ああ言うのは、人間と違った思考回路の持ち主だからね?」
佐和が、穫に抱きつきながら教えてくれた。
たしかに、あの呪怨は自分の意思を持っていた。エミに問いかけるなどの自我を持っていたし、穫を付け狙ってもいた。であれば、弱った隙に畳みかけなければ、今回以上の被害が出るかもしれない。
なら、と。穫は首を縦に振った。
「笑也さん」
「? うん?」
「あれを退治するのに。万乗の本家さん達に迷惑をかけない方法、教えてもらえませんか?」
「穫ちゃん?」
「これ以上被害が出ないためにも、終わらせたいんです!」
たとえ、今回が終わっても。万乗の人間の未来はわからない。
祖母が頑張ってくれたように、子孫達にどう繋がるかもわからない。
だけど、今ここで祖母の頑張りを無駄にはしたくない。死人もこれ以上出したくない。
その決意を告げれば、笑也もだが浮いているエミも表情を変えて頷いてくれた。
「わかったよ、万乗穫さん」
【あんたの願い、我らが協力しましょうか?】
呪怨を消滅させるために。
穫は決意を固めるのだった。
その後、冷めてしまった巧のパンケーキはとても美味しかった。
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