イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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8-3.達川笑也①

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 *・*・*







 明確な対策があるわけではないが。

 元が人間どころか、動物霊などが集合したような怨念の塊だ。人間の常識が通じるわけがない。

 それはエミを含める、神々にも関係はあるが。自我が成立している分、融通は利く。ように、思うのがエミや須佐すさ達と関わることになったからだ。

 これまで、羅衣鬼らいきのように雑鬼に動物霊と関わってきた程度のみのりには、神様とは遠い存在でしかなかった。

 けれど、実際は妙に人間臭いと言うか、フレンドリーなのだ。エミは。


「……エミさん」
「んー?」


 ピザを食べに食べまくって、満足してソファで寝転がっているエミは、羅衣鬼以外が女ばかりだからか、だらけていた。

 これが、日本を代表する女神様には、とても見えないと思うけれど。


笑也えみやさんがエミさんを降ろすことが出来るのは、いつからだったんですか?」
「あーら? 達川たちかわに興味あるー?」
「えっと……はい」
「僕も噂程度しか知らないねえ? 達川氏とのメールでも具体的に聞くのはダメと言われていたから」
「え、ダメだった?」
「いーわよん? じゃ、ちょっと離れるわねえ?」


 エミが顔の前で手を振れば、体が揺らいで笑也の姿に戻った。そして、エミと言えば。

 笑也のすぐ上に、艶やかな白い装いと煌びやかな装飾を身につけた、どこをどう見ても女神様と言う出立ちで宙に浮いていたのだった。


「これが、天照大神あまてらすおおみかみだよ」
【これって、言わないの!】


 見た目がいくらか変わっても、やっぱりエミはエミだった。

 ただ、声が少し反響がかかっているように聴こえていた。


「ほう! このお姿が最高峰の天照大神!! 神々しいね!!」


 佐和さわはとにかく大興奮だったが。咲夜さくや達はそれぞれ畏まっているので、顔を伏せていた。


【ふふ。これが、あ・た・し! 別に呼び方はエミのままでいいわよん?】


 少々着崩した装束をエミは悩ましげに揺らして。羽衣のように見える布をゆらゆらと浮かせていた。


「えっと……改めて聞いていいんでしょうか?」
【みのりんのは、笑也があたしを降ろすことが出来るようになった時期ねん?】
「はい」
【んじゃぁ……笑也~? あれ持ってきてー?】
「はいはい。ちょっと待ってて」


 と言って、笑也は少しだけリビングから離れて。

 戻ってきた時には、分厚い冊子を持ってきた。厚みから見るに、アルバムだと思われる。


「達川氏のアルバムかな?」
「うん。僕がたくみと出会う前あたりからかな?」
【驚くわよ~ん?】


 ローテーブルに広げてくれたアルバムの中身を全員で覗くと。

 笑也のはずなのに、写っていたのは可愛らしい女の子の写真ばかりだった。


「あ……れ?」
「ほう~?」


 穫が不思議がっていると、佐和は何故か感心していた。


「えっと……これ全部僕だよ?」


 そこから爆弾発言を落とされたので、穫は思わずアルバムと笑也を交互に見るのだった。


「え、ええええ、笑也さん、女の子!?」
「はっはっは!! 落ち着きたまえ、穫。これは一種の呪法。つまりはおまじないなんだよ?」
「お……まじない?」
【こう見えて、笑也は超が十個つくくらいか弱い男だったのよん?】
「性別を逆にして、正常な身体にするためのおまじない。僕は、だいたい小学生に上がるまでずっとこんな格好をしてたんだ」


 今は大丈夫、とまだまだ混乱していた穫の頭を撫でてくれた。


【そして、男なのにイタコの素質がある稀有な存在。だーかーら、あたしは次代達川の当主を笑也に指名したわけ?】


 エミはニコニコ笑っているのだった。
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