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8-1.ひとときの休息
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片付けをしてからしばらくして。
穫の脱力し切った体力も元に戻り。
今日は宅配にしようと、エミがスマホでささっと注文してくれたのが。
「宅配とかは、ピザとかジャンキーな食べ物よねぇ?」
ほとんどエミの一存で決めたので、チーズは増し増し。サイドメニューは骨無しチキンとフライドポテト。
野菜は、と思ったが一応シーザーサラダが申し訳程度にあるだけだった。
「おお!? 豪華だね!!」
佐和もこう言うのは好きなのか、目を輝かせていた。
「さわちんもたっくさん頑張ってくれたから、ここは奢りよん?」
「では、有り難く」
「咲夜と羅衣鬼もいいわよん?」
「「御意」」
と言うことで、早い夕飯というか、エミにとってはおやつ感覚かもしれないが。
全員でいただきますをしてから、食べ始めた。
「ん~~~~!! みのりんのチーズ増し増しのも美味しかったけど。たまにはいいわねぇ?」
自分の、と言うか正確には笑也の奢りなのだが、エミは遠慮せずにぱくぱくとピザを食べていく。
羅衣鬼は初めて食べるので、チーズの伸びに驚いていたが。小さな身体に戻った今は一生懸命に食べていた。
「? この肉みたいなのは、素手で?」
「そうだとも、咲夜氏。素手でガブっと」
「…………!?」
佐和に教わった方法でかぶりつくと、すぐに咲夜はほっぺを赤くしたのだった。
穫も冷凍食品以外で久しぶりに食べる宅配だったが、エミのセレクトは外れじゃなかった。
チーズ好きには堪らない味付けであるし、シーザーサラダも宅配のなのに美味しい。
ぱくぱくと食べ終えてから、それぞれにコーヒーやカフェオレを淹れてあげたのだった。
「エミ氏。穫を付け狙うあの化け物は、まだ本体でやって来ないのだろうか?」
カフェオレを飲んでる佐和が、唐突に言い出した。
「そうねん? 分身をこれで三回くらい飛ばしてきたから……いい加減くすぶっているはずだわ。近いうちに来そうねぇ?」
「僕も琴波として手伝えないでしょうか?」
「協力はありがたいわ。けど、さわちんは大学内メインでみのりんを守ってあげて?」
「その根拠は?」
「あたし以外にも、弟達もいるから。あいつらの攻撃に必要以上に巻き込まないためねん?」
みのりんは当事者だから避けられないけど。
と、エミが言うので、佐和はこくりと頷いた。
「了解した。天照大神の弟神と言われば……天の三神とも言われる素戔嗚尊と月読命。この御二方がいらっしゃるなら、僕は必要ないでしょうね?」
「さわちんも、結構面白い術を使うけどねえ?」
「はは。恐悦至極」
今日はたまたまだったが、いくら佐和が強くても神様には敵わない。
その神様であるエミ達も、穫が誰も死なせたくないと言うお願いで依頼を進めているのだ。
月詠の最初の発言なら、死者を出していいのなら容易に片付く問題だったが。
たとえ、見ず知らずの親戚が関わっても。穫が死んでもいいとされていても。
穫は、誰にも死んでほしくなかったのだ。傲慢な願いかもしれないが。
「……穫。魂が揺れている」
「え?」
食べる手を止めていたら、咲夜がその手に自分の手を重ねていた。
「……何か気がかりなことがあるのか?」
「穫?」
「みのりん?」
エミ達にも気づかれたようで、穫は渋々話すことにした。
「自分勝手かもしれないですけど。やっぱり、呪怨のせいで誰にも死んでほしくないんです!」
力強く言えば、誰かにぽんぽんと頭を撫でてくれた。
顔を上げれば、エミが笑顔で立っていたのだ。
「言ったでしょ? みのりんの願いのために、笑也はきみと契約したのよん? だから、その気持ちのままでいいの!」
「エミさん……」
すると、真正面から羅衣鬼が飛びついてきた。
「俺だって、穫に死んで欲しくない! だから、穫もわがままになっていいんだ!」
「……羅衣鬼君」
「いいんだよ、穫。僕だって、いきなり知らない誰かが自分のために死んでもらっても嬉しくないからね?」
「佐和ちゃん……」
佐和もぽんぽんと肩を撫でてくれた。咲夜は羅衣鬼ごとぎゅっと抱きついてきて、皆と同じように言ってくれた。
「たしかに。今の万乗の大半は私の知る万乗ではない。だが、穫だから私は選んだのだ」
そして、羅衣鬼が潰れる寸前まで、咲夜はしがみついていたのだった。
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