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6-4.車谷教授
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大学まで行くと相当目立つので、途中のバス停近くまで乗せてもらうことになったが。
さすがは高級車、乗り心地がとても良い。
振動は多少感じるが、それがなければ乗っている感覚がわからないほどに。
「あ」
信号が赤の時に、笑也が声を上げたのだった。
「ど、どうしました?」
「うん。車谷教授に、君の住むとことか僕のとこのハウスキーパーになったこととか言うの、電話で言うのを忘れてた」
「あ、そうですね? 今日は講義もあるのでいるとは思うんですが」
「大学の駐車場に停めていーい? 今日だけだから、行くよ」
「わかりました」
それは忘れてはいけないことだったので、大学に到着してから門にいる守衛に聞いて、空いている駐車スペースに停まり。
学生館に二人で入ってから、ディスプレイの表示で教授がいるかどうか確認しようとしたが。
遠巻きにいる、部活動やサークルメインで来ている学生達からヒソヒソ話が聞こえてきた。
「なにあのイケメン!?」
「あんな人いた!? 講師? 准教授??」
「それか、隣の女の子の保護者? 彼氏には見えないけど」
「ねー?」
好き勝手言いたい放題。
まあ、笑也はサングラスをかけていてもスタイルがモデルや俳優顔負けなので、話題になるのも仕方がない。本人は気にしてないのか、スルーではあるけれど。
「あ、教授いました」
目的のディスプレイ表示になったら、車谷の表示が在籍を示す色になっていたので。
笑也にこっちだと言って案内すると、後方にいた女子生徒達はあからさまに残念がったが、それは無視無視。
たしかに、笑也は凄いイケメンではあるが。穫には恩人に等しい大切な人だ。彼氏だなんて恐れ多い。
そこで、ふと疑問には思ったが。とても小さな疑問だったので、すぐに消えてしまった。
同時に、教授のいる部屋に着いたので穫はノックをすることにした。
「教授。万乗です」
「ああ。いいですよ、入ってきてください」
笑也に依頼する仲介をお願いした以来でも、随分と前に思えた。
まだたった数日なのに、随分と濃い時間を過ごしたせいか。
中に入ると、狭い部屋だが本が棚にびっしりと並んでいる風景が目に飛び込んでくる。教授はパソコンと睨めっこしていたが、扉が閉まる音を聞くとこちらに振り返ってきた。
柔和な笑顔の、還暦目前くらいのご老人。と言っても、穫も正確な年齢は把握していないが。
「どうでした、万乗さん?……おや、君は」
「お久しぶりです、教授」
笑也は挨拶する時に、一度だけサングラスを外した。
「おやおや、達川君が自ら? 依頼は……まだ解決していないんですか?」
「色々ありまして。彼女の依頼は一個人の問題じゃなかったです。なので、居住を僕と同じマンションに移し。依頼料はハウスキーパーで働いてもらうことになりました。もちろん、別口で彼女に給与は支払います」
「……随分と大きな事件になったんですか?」
「はい。エミが了承するくらいに」
事情もすんなりと受け入れてくれている感じだった。
穫は彼に紹介されただけだが、それ以前に単純な知り合いだけじゃないのだろう。でなければ紹介出来るわけがない。
「あの……おふたりは元々お知り合いだったんですか?」
「あれ? 言ってなかった? 僕、ここの卒業生だけど?」
「まだ四年だと思えないですねぇ?」
「聞いてません!!」
しっかりしているようで、どこか天然。
いい具合に緊張をほぐしてくれたが、ここで本題に移ることになった。
「彼女は、結界師の力を受け継ぐ家系の人間だったようです。ただ、その人間故に長年の呪物などが呪怨になって、彼女を付け狙っていたようですね。最近になって力を増して、以前の彼女の自宅を荒らしてたようですが」
「それは大変ですまないですねえ? 万乗さん、怪我などはないですか?」
「はい! 達川さんのお陰でなにも」
「そうですか。それは何より。ですと、講義前に学生課で住居変更の申請だけはした方がいいですが、僕がしておきましょう。あのマンションに単身で学生が住むのは、普通無理ですから」
適当に誤魔化しておきましょう。
と言ってくれたので、ついでとなったが咲夜と羅衣鬼が付いてくれているのも教え。
ますます安心してくれてから部屋を出て。笑也とそこで別れることになった。
さすがは高級車、乗り心地がとても良い。
振動は多少感じるが、それがなければ乗っている感覚がわからないほどに。
「あ」
信号が赤の時に、笑也が声を上げたのだった。
「ど、どうしました?」
「うん。車谷教授に、君の住むとことか僕のとこのハウスキーパーになったこととか言うの、電話で言うのを忘れてた」
「あ、そうですね? 今日は講義もあるのでいるとは思うんですが」
「大学の駐車場に停めていーい? 今日だけだから、行くよ」
「わかりました」
それは忘れてはいけないことだったので、大学に到着してから門にいる守衛に聞いて、空いている駐車スペースに停まり。
学生館に二人で入ってから、ディスプレイの表示で教授がいるかどうか確認しようとしたが。
遠巻きにいる、部活動やサークルメインで来ている学生達からヒソヒソ話が聞こえてきた。
「なにあのイケメン!?」
「あんな人いた!? 講師? 准教授??」
「それか、隣の女の子の保護者? 彼氏には見えないけど」
「ねー?」
好き勝手言いたい放題。
まあ、笑也はサングラスをかけていてもスタイルがモデルや俳優顔負けなので、話題になるのも仕方がない。本人は気にしてないのか、スルーではあるけれど。
「あ、教授いました」
目的のディスプレイ表示になったら、車谷の表示が在籍を示す色になっていたので。
笑也にこっちだと言って案内すると、後方にいた女子生徒達はあからさまに残念がったが、それは無視無視。
たしかに、笑也は凄いイケメンではあるが。穫には恩人に等しい大切な人だ。彼氏だなんて恐れ多い。
そこで、ふと疑問には思ったが。とても小さな疑問だったので、すぐに消えてしまった。
同時に、教授のいる部屋に着いたので穫はノックをすることにした。
「教授。万乗です」
「ああ。いいですよ、入ってきてください」
笑也に依頼する仲介をお願いした以来でも、随分と前に思えた。
まだたった数日なのに、随分と濃い時間を過ごしたせいか。
中に入ると、狭い部屋だが本が棚にびっしりと並んでいる風景が目に飛び込んでくる。教授はパソコンと睨めっこしていたが、扉が閉まる音を聞くとこちらに振り返ってきた。
柔和な笑顔の、還暦目前くらいのご老人。と言っても、穫も正確な年齢は把握していないが。
「どうでした、万乗さん?……おや、君は」
「お久しぶりです、教授」
笑也は挨拶する時に、一度だけサングラスを外した。
「おやおや、達川君が自ら? 依頼は……まだ解決していないんですか?」
「色々ありまして。彼女の依頼は一個人の問題じゃなかったです。なので、居住を僕と同じマンションに移し。依頼料はハウスキーパーで働いてもらうことになりました。もちろん、別口で彼女に給与は支払います」
「……随分と大きな事件になったんですか?」
「はい。エミが了承するくらいに」
事情もすんなりと受け入れてくれている感じだった。
穫は彼に紹介されただけだが、それ以前に単純な知り合いだけじゃないのだろう。でなければ紹介出来るわけがない。
「あの……おふたりは元々お知り合いだったんですか?」
「あれ? 言ってなかった? 僕、ここの卒業生だけど?」
「まだ四年だと思えないですねぇ?」
「聞いてません!!」
しっかりしているようで、どこか天然。
いい具合に緊張をほぐしてくれたが、ここで本題に移ることになった。
「彼女は、結界師の力を受け継ぐ家系の人間だったようです。ただ、その人間故に長年の呪物などが呪怨になって、彼女を付け狙っていたようですね。最近になって力を増して、以前の彼女の自宅を荒らしてたようですが」
「それは大変ですまないですねえ? 万乗さん、怪我などはないですか?」
「はい! 達川さんのお陰でなにも」
「そうですか。それは何より。ですと、講義前に学生課で住居変更の申請だけはした方がいいですが、僕がしておきましょう。あのマンションに単身で学生が住むのは、普通無理ですから」
適当に誤魔化しておきましょう。
と言ってくれたので、ついでとなったが咲夜と羅衣鬼が付いてくれているのも教え。
ますます安心してくれてから部屋を出て。笑也とそこで別れることになった。
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