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6-2.夜の役目(咲夜視点)
しおりを挟む*・*・*(咲夜視点)
万乗の家の、数百年に渡る血の盟約により、今世宿った主についてだが。
分家の分家。
力は秘められていたが、祖母がそこそこの術師だったので孫娘だった主に、金剛刀である自分への封印の綻びが出来た。
だから、本家よりも件の呪怨から向けられる殺意が凄かった。
どうすればいいのか、自分には分からず。
だが、運が良かったのだ。
達川と言う、術師でも高位に立つ人間達の中で。天照大神を降ろすことが出来る、男なのにイタコの素質を持つ者が。
宿り主である、穫から自分を解放させて。
呪怨の一部を退散させることが出来、同時に護ることも出来た。
そして自分に、『咲夜』と言う名を与えてくれたのは穫だ。
男でも女でもない自分を、ひとまず女として顕現して。
日夜、彼女を護るために呪怨の片鱗が訪れた初日から。
夜な夜な、殺意を向けてくるあれらを対処するのが、咲夜の仕事だ。
寝る時は、穫は前の家で使ってたシングルベッドなので、小型の動物のような状態になって一緒に寝ることになっているのだが。
気配がしたら、咲夜は彼女の腕の中から抜け出て、ベッドから降りた。
『……来たか』
咲夜は穫と同じ女の姿になり、気配を一瞥してから穫の影をノックするように叩いた。
「……起きろ、羅衣鬼」
「ん?……おう?」
穫の影から、子供の姿の鬼。守護鬼になった羅衣鬼が出現して、若干眠たげだったが無理に引っ張った。
「仕事だ。奴らが来るぞ」
「なあ。月詠様の結界? とかがあるんだろ? なんで、あいつら来るんだ?」
「……私の勘だが、奴らは執拗に穫だけを狙うからだ」
「穫以外にも、万乗の人間ってのはいるんだろ?」
「私を宿していたからだ。あれは力のある万乗の人間を忌み嫌う」
「……じゃ。俺達の出番か?」
力を試したくてしょうがないのだろう。
だが、咲夜は術は使い慣れていない。ので、金剛刀の姿に戻って、青年の姿にさせた羅衣鬼の手に自分を持たせた。
『力任せでいい、とにかく振り下ろせ』
「よっしゃあ!」
羅衣鬼の掛け声と同時現れた靄達を。
咲夜と羅衣鬼は、亥の刻過ぎまで振り払うのだった。
結果、元通りに戻った二人は、疲れて寝起きが最悪だったわけである。
「おはよう? 二人とも、二日酔い?」
「んー」
「おー」
目配せでそう言うことにしておいて。
朝からだが、美味しいシジミの味噌汁を飲ませてもらい。
しっかり、気力を回復してから。穫が笑也の朝ご飯を作るのに、隣の部屋へ向かったが。
相変わらず、エミ達が悲惨な状態にしていたので。羅衣鬼も驚いていたが慣れさせるために、腐海を片付けるしかなかったのだが。
「なあなあ、穫。これ、食っていい?」
「え、食べる?」
「人間のゴミとか。俺達には食えるんだよ」
「お腹壊さない??」
「大丈夫大丈夫」
と、羅衣鬼が言うので任せることになり。
まるで、電動掃除機のように吸い込むように口に入れていったのだ。そしてしばらくして、三神がへべれけで倒れているのは相変わらずだった。
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