32 / 168
5-6.冷凍餃子でタッカルビ③
しおりを挟む*・*・*
蓋を開ければ、湯気の中に顔を隠したキムチとチーズの沼。
焼いて煮込んだ冷凍餃子はほとんど見えないが、きっと絶対美味しいはず。
夏なのに、鍋料理はどうかと思ったが。待ちきれないエミの様子にそれは杞憂だったとすぐわかった。
小鬼も入れて、全員によそい。咲夜もだが小鬼まで箸を使えるのは少し不思議だったが。とりあえず、巧と穫の分も器に入れてから、いただきますをした。
熱いので、全員息を吹き付けてから口に入れた。
「おい、っし!」
「こらええなあ? 酒すすむわ!」
「あーん、巧~! あたしも飲むぅうう!」
「そう思って色々持ってきたわ」
「……酒」
「咲夜も飲むか?」
「!」
飲み物を持参するとは言っていたが、やはり酒も入っていたか。エミに缶ビールを渡そうとしていた巧の両隣に、いつ来たのか須佐と月詠が座ったのだった。
「お? お前ら」
「……美味なる気配がして」
「あと酒もある予感がしたもので」
「あんら? 来たのねー?」
「ええ」
「応」
二人がソファに腰かけると、咲夜と小鬼が即座にひざまずいた。
「……咲夜と名乗ることになりました」
「……守護鬼、予定の者です」
「ほう?」
「良い名をもらったな?」
咲夜の方に顔を向けた須佐は、満更でない表情になっていた。
「ほらほら! まだあるけど。熱々が美味しいからあんた達も食べたらん?」
「是非」
「ありがたく」
「お椀持ってきますねー?」
器を持ってきた頃には、既に二神とも酒をガバガバ飲んでいたが。穫には、ノンアルサワーなどが用意されてたのでそちらをいただくことにした。
「姉上と笑也の好みとは言え、野菜が多いのは嬉しいですねえ?」
「体力をつけるには、野菜がいいので」
「良い心がけです。私もそれには賛成ですから」
そして、上品な箸遣いで月詠ははふはふ言いながら餃子タッカルビを口に入れてくれた。
「……まい、美味い! 酒も欲しくなる!」
対する須佐は熱いのが平気なのか、バクバクと食べていた。
いきなり二人増えても、大所帯は大所帯なので。
小鬼も咲夜もよく食べて、あっという間に鍋の中が空っぽに。ただし、量は少ないがスープがいくらか残ったので、ここはひとつ。
「量はひとりにつきほんの少しですが。キムチ雑炊かリゾットにしましょうか?」
「リゾットがいい!」
「異議なし!」
「いいですねえ?」
「お前らほんまチーズ好きやんな?」
というわけで、咲夜と小鬼にも手伝ってもらうことにしてリゾット作りに取り掛かることにした。
「穫ー! 俺何すればいい?」
「小鬼君には、レンジ待機」
「れんじ?」
「この箱みたいな機械」
まずはスープに合わせたレトルトの米のフィルムを少し剥がして。
レンジに入れて規定分数回して待つだけ。
小鬼にはそれを見ていてもらう。
穫は咲夜に鍋の中のスープをひとつの鍋に集めてもらい。
穫が火をつけて、味見をしながら沸騰させるのだった。
11
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説

クライエラの幽微なる日常 ~怪異現象対策課捜査file~
ゆるり
キャラ文芸
正義感の強い警察官と思念を読み取る霊能者によるミステリー風オカルトファンタジー。
警察官の神田智輝は『怪異現象対策課』という聞き馴染みのない部署に配属された。そこは、科学では解明できないような怪異現象が関わる相談ごとを捜査する部署らしい。
智輝は怪異現象に懐疑的な思いを抱きながらも、怪異現象対策課の協力者である榊本葵と共に捜査に取り組む。
果たしてこの世に本当に怪異現象は存在するのか? 存在するとして、警察が怪異現象に対してどう対処できるというのか?
智輝が怪異現象対策課、ひいては警察組織に抱いた疑問と不信感は、協力者の葵に対しても向いていく――。
生活安全部に寄せられた相談ごとを捜査していくミステリー風オカルトファンタジーです。事件としては小さなものから大きなものまで。
・File→基本的には智輝視点の捜査、本編
・Another File→葵視点のファンタジー要素強めな後日談・番外編(短編)
を交互に展開していく予定です。
花よめ物語
小柴
キャラ文芸
名高い騎士とおくびょうな少女の恋物語。アーサー王伝説を下地にしました。少女のもとに、ある騎士の一通の求婚状が届いたことから物語がはじまります──。
✳︎毎週土曜日更新・5話完結✳︎
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです
釈 余白(しやく)
キャラ文芸
現代日本と不釣り合いなとある山奥には、神社を中心とする妖討伐の一族が暮らす村があった。その一族を率いる櫛田八早月(くしだ やよい)は、わずか八歳で跡目を継いだ神職の巫(かんなぎ)である。その八早月はこの春いよいよ中学生となり少し離れた町の中学校へ通うことになった。
妖退治と変わった風習に囲まれ育った八早月は、初めて体験する普通の生活を想像し胸を高鳴らせていた。きっと今まで見たこともないものや未体験なこと、知らないことにも沢山触れるに違いないと。
この物語は、ちょっと変わった幼少期を経て中学生になった少女の、非日常的な日常を中心とした体験を綴ったものです。一体どんな日々が待ち受けているのでしょう。
※外伝
・限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/398438394/874873298
※当作品は完全なフィクションです。
登場する人物、地名、、法人名、行事名、その他すべての固有名詞は創作物ですので、もし同名な人や物が有り迷惑である場合はご連絡ください。
事前に実在のものと被らないか調べてはおりますが完全とは言い切れません。
当然各地の伝統文化や催事などを貶める意図もございませんが、万一似通ったものがあり問題だとお感じになられた場合はご容赦ください。

〈完結〉どうやら私は二十歳で死んでしまうようです
ごろごろみかん。
キャラ文芸
高二の春。
皆本葉月はある日、妙な生き物と出会う。
「僕は花の妖精、フラワーフープなんだもん。きみが目覚めるのをずっと待っていたんだもん!」
変な語尾をつけて話すのは、ショッキングピンクのうさぎのぬいぐるみ。
「なんだこいつ……」
葉月は、夢だと思ったが、どうやら夢ではないらしい。
ぬいぐるみ──フラワーフープはさらに言葉を続ける。
「きみは20歳で死んじゃうんだもん。あまりにも不憫で可哀想だから、僕が助けてあげるんだもん!」
これは、寂しいと素直に言えない女子高生と、その寂しさに寄り添った友達のお話。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
【完結】国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く
gari
キャラ文芸
☆たくさんの応援、ありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。
そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。
心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。
峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。
仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。
※ 一話の文字数を1,000~2,000文字程度で区切っているため、話数は多くなっています。
一部、話の繋がりの関係で3,000文字前後の物もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる