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5-5.冷凍餃子でタッカルビ②
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達川宅にやって来てからは、小鬼がずっとびくびくしていた。
笑也は穫達がやって来てからは、即座にエミに変わって。
そして、穫が連れてきた小鬼を見据えると、ひょいと穫の頭からつまみ上げて、リビングに連れて行ったらラグマットの上に座らせた。
そこから、ずっとだが。
穫も話に加わろうとしたが、巧に夕飯を作るように言われたので。気にはなるが、仕方がなく作ることにして、咲夜と一緒に取り掛かることにした。
「咲夜、今日の料理は鍋料理……みたいなものなの」
「鍋? を使うのか?」
「そうそう。メインの食材はこれ」
冷凍庫から、大量に取り出したのは冷凍餃子のパック。小分けパックになっている、取り出しやすいものだ。
「それが……ぎょーざ?」
「お肉と野菜たっぷりで、焼いても煮ても美味しいんだけど。今日のは両方しちゃうの」
「ほう?」
咲夜は覚醒したばかりなので、まだまだ料理は初心者だが。野菜を切るのを一緒にやろうと言うことになり、キャベツと玉ねぎを切ろうとしたのだが。
咲夜が、玉ねぎの皮を剥いただけでぽろぽろと涙をこぼしてしまったのだ。
「え、痛い!?」
「痛い……と言うのか? 目の周りが熱くて、かきむしりたい!」
「ダメだよ! 顔洗って洗って!」
洗顔の方法はすぐに教えていたので、目をしっかり洗ってもらい。持って来たタオルで顔を拭けば、目の痒みは多少落ち着いたようだ。
「……すまない」
「いいよ。私も気をつけていればよかったから。……とりあえず、慣れれば痛くなったりしないから」
「……昔はこのような野菜はなかった」
「えーと? 輸入されたのが結構最近だからかなあ?」
あまり詳しくはないが。
穫が玉ねぎをスライスして、咲夜にはキャベツを手でちぎってもらい。
冷凍餃子をしっかり焼いてから、鍋を三つ用意。業務用の鍋があったので、遠慮なく餃子を投入してから。
野菜、キムチ、チーズ、お湯少しと入れて蓋をして。
湯気が出てから、蒸すこと約10分。
蓋を開ければ、少し赤い色に染まったチーズタッカルビの完成だった。
少し味見をしたら、野菜はしっかりキムチ味になっていた。
「さ、持っていこ? 咲夜には鍋敷きを持ってもらえる?」
「力は私の方があるぞ?」
「大丈夫大丈夫。とにかく行こ行こ? これは熱いうちが美味しいから」
「わかった」
リビングに向かえば、エミが怖い表情で相変わらず小鬼を見下ろしていたのだ。
「みのりんが被害に遭ったのよ? それを手助けしようとして、逆に迷惑かけたんでしょ?」
「……おっしゃる通りです。俺は……友達を傷つきかけたのは変わりない」
「なら、成すべきことはわかってるかしらん?」
「なにさせる気や、エミ?」
「この『小鬼』を守護鬼にさせるつもりよん?」
「へ?」
陰から見守っていた穫にもさっぱりだったが、咲夜がため息を吐いていた。
「……私以外にも、か」
「どーゆこと?」
「妖からも、穫を守護する存在にさせるおつもりだ」
「え?」
その声が大きかったのか、エミがこっちに振り返ってきた。
「みのりーん! ご飯出来たー?」
「あ、はい。出来ました。持っていきます」
さあさあ、とエミが輝かんばかりの笑顔になったので。ローテーブルの上に咲夜が鍋敷きを置き、その上に鍋を載せた。それをあと二回繰り返せば、エミはさらに恍惚とした表情に。
「な~に、なに? キムチとチーズのいい匂い~? 鍋?」
「冷凍餃子でチーズタッカルビにしました」
「美味しそう~~!!……ほら、あんたもおいで?」
「へ?」
「言ったでしょ? あんたをみのりんの守護鬼にさせるって? だーかーらー、もう身内よ身内」
「……!?」
いまいち、そのしゅごきと言う単語がよくわかっていないのだが。
小鬼の表情が明るくなっていくのだから、いいことなのかもしれない。
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◆◇◆◇
もくじ
【メインストーリー】
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二章 闇メン
三章 護りのミサト!
四章 スノウドロップ
伍章 ジンギ!
六章 あなた好みに切ってください
七章 コバヤシ君の日報
八章 カラスたちの戯れ
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