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5-3.笑也とエミ(笑也視点)
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作業がしやすい。
それはとてもいいことだ。
いいこと尽くしではある。
達川笑也、二十六歳。
本職はイタコだが、表面上はインスタント食品研究家だ。
今日も今日とて、後者のインスタント食品を扱う研究をしている。ここ最近、訳あって雇うことになった、大学生の万乗穫のお陰で、ゴミ屋敷以上に腐海と化していた部屋はすべてピカピカ。
キッチンの方も、綺麗に磨かれているので、降霊してない状態の笑也でいるうちは、綺麗に使おうと心掛けている。
だから今も、カップ焼きそばに合うトッピングを吟味している時も慎重だった。
「うーん……最近のカップ焼きそばは、『量』、『質』の両極端だからなあ??」
『量』なら、一日で摂取する量を超えるかどうか。
『質』なら、有り得ない辛さにするとかトッピングのソースなどをアレンジするとか。
その二つを大事にしたいが、新商品開発などにも協力している笑也としては、そろそろネタが尽きてきたのだ。
好物のチーズネタなら腐るくらいある。だが、先方が求めているのはチーズ系ではないので、残念だが違う食品を掛け合わせなくてはいけない。
が、だいぶそのネタが尽きているので、どうしたものか。
ため息を吐いていると、頭上からクスクス笑う声が聞こえてきた。
【相変わらず、女が堕ちそうなため息の吐き方ねえ?】
姿を現したのは、きらびやかに着飾ったエミこと天照大神だった。だが、エミとは笑也に降りた場合の呼称なので相応しくないかもしれないが。
自分に降りてきてない状態だと、霊体で笑也の前に現れたりもするのだ。まだ昔、降霊が出来なかった幼い笑也の前でも。
「……君に言われたくはないけど?」
【あたしは大神だもの。日本の神道の頂点。母君はともかく、美しくて当然だわ】
「はいはい。穫ちゃん達はまだだよ?」
【わかっているわよ? ちょーっと面白い情報仕入れたからの伝えに来たのよん。みのりんも言うだろうけど】
「?」
エミの口から、穫の前の住居で遭遇したラップ現象が。穫の幼馴染みとも言える雑鬼の妖が関わっていたそうだ。
穫を助けるためにしたことが全て逆に作用してしまい。
昨日、穫に宿っていた咲夜が覚醒したことである程度の邪気などが祓えたことで彼女に近づけるようにはなったが。
咲夜が覚醒したことで、弱い雑鬼では穫に触れることが出来なくなったそうだ。その作用を、咲夜が調整して触れるようにはしたのだとか。
【てわけで、妖にも一部味方がいたってわけ】
「じゃ、連れてくるかもしれないね?」
【『小鬼』って呼び名をつけてたそうよ? だから、普通の雑鬼よりは力があったそうなの】
「……ある意味眷属?」
【そうね?】
穫を付け狙う呪怨は、しぶといし根深い。
昨日は分身を差し向けてきただけだったが、今日はどうなるかわからない。
笑也は彼女が帰宅してこちらにやって来たら、すぐにでもエミを降すつもりではいる。笑也も達川の人間なので、決して弱くはないが。
神を降ろした時に比べれば、弱いと同じ。
だから、エミに選ばれた笑也は彼女に頼るしかないのだ。
その代償がインスタント大量消費で、毎回毎回家中を腐海にさせてしまうのだが。
「……とりあえず。二人が帰って来るまで、一件終わらせるよ」
【んふふ~? 今日の夕飯は何かしら~?】
「僕に降りたからって、ほどほどにしてね?」
【代価はきっちり貰わなきゃ】
「はいはい」
とりあえず、エミも交えつつ笑也は夕方になって穫達が帰ってくるまでに。なんとか二件終わらせることが出来たのだった。
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