イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
27 / 168

5-1.いつもの日常が

しおりを挟む





 *・*・*






 月曜、平日。

 みのりは大学はあるが、そろそろ夏休みが始まるし、レポートもさして急ぐ必要はない。

 ただ、笑也えみやのところより前にバイトしている、本屋の方があるのだ。

 今日は大学に行かなくても問題はないが、そのバイトが朝からあるので。穫は一人で本屋に向かう。

 と言っても、体内には咲夜さくやを宿している。一緒に働くことは出来ないので、エミが宿した状態で連れて行けば問題ないと言ったからだ。

 表面上は、穫は一般人だが。

 視える人間にとっては異質に映るかもしれない。


【人が多いな、穫?】
『そりゃ、街中だもの』


 咲夜と意思疎通するのに慣れるのにもちょうどいい。

 そう言う理由もあって、穫は宿すことを承諾した。加えて、今までちょっかいを出してきた雑魚の浮遊霊なども祓えるそうだ。

 その証拠に、一定の距離まで詰め寄ってきた悪霊達が、風船が弾けるように消えていくのだ。覚醒した咲夜を宿しているのだから、当然だと彼女に言われた。


【雑魚が多いな? 私がいる限り、大丈夫だ。穫はいつも通りに過ごせ】
『うん』


 そして、問題点がひとつ。

 穫が笑也と同じマンションに引っ越したことだ。

 本屋の店長にだけは、緊急連絡先の変更を言わねばならないので、あらかじめ用意した便箋を渡したのだった。


「あら、こんな時期に?」
「ちょっと……実家の関係で」
「わかったわ。変更届の用紙だけは書いてもらえる? あとの処理はしておくから」
「お願いします」


 わかってはいたが、意外にもあっさりと終わったので穫は着替えてからその用紙に記入した。

 店長に渡したら、穫は先に働いている先輩達を手伝うのに店内に出た。

 荷物運び、レジ、荷物運びなどなど。

 本屋は地味に見えて、実は結構な重労働なのだ。台車なども使うが、基本的には手で本の山を運んでストッカーである引き出しの中にしまうなど。

 街の本屋でも、結構大きい本屋なので時給もそこそこ良い。そして、バイトでも社割で本が買えるのがメリットだ。


【……雑魚以外に、妖もいるな?】
『あやかし?』
【穫にわかりやすく言うなら、妖怪だ】


 あと少しで昼休憩と言うところで、ずっと黙っていた咲夜が語りかけてきた。

 妖怪、と聞くと穫は幼い頃を思い出す。

 仲良くしていた、妖怪変化達のことだ。

 穫が大人になってからは、どう言うわけか姿を見せなくなってしまったが。

 どこなのかキョロキョロすると、店の隅に黒い影があった。

 悪霊かと一瞬構えたが、飛んできたその姿に、穫は目を丸くした。


『み~の~り~~!!』


 丸っこいフォルム。

 小さな角に、くりくりとした一つ目。

 穫に抱きつくと、ぽふっと音がしたが体内にいる咲夜は大慌てだった。


【こら、雑鬼!? 穫から離れろ!?】
『うわ!? あっちちち!? マジで穫にスッゲーもん憑いてた!?』
【……昇華させようか?】
『わーわー!? 勘弁!!』


 穫は固まってしまいかけたが、今は仕事中だ。

 一つ目のざっきと言う類の妖怪には、小声でちょっと待ってと言ってから休憩をもらいに行き。

 外で休憩を取ることにして、昼ごはんを買ってから公園で話すことにしたのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

麻布十番の妖遊戯

酒処のん平
キャラ文芸
麻布十番の三叉路に、夜な夜な現れる古民家がある。 彼らは江戸より前からこの世に住み、人に紛れて毎日を楽しんでいた。 しかし、そんな彼らも長くこの世に居過ぎたせいか、 少々人の世にも飽きてきた。 そんなときに見つけた新しい楽しみ。 【人】ではなく、【霊】を相手にすることだった。 彷徨える霊の恨みをきれいさっぱり取り祓うかわりに 死に樣を話してくれと。 それを肴に話に花を咲かせたい。 新しい遊戯を発見した彼らが出会う【霊】とはいかなるものか。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

美しいものを好むはずのあやかしが選んだのは、私を殺そうとした片割れでした。でも、そのおかげで運命の人の花嫁になれました

珠宮さくら
キャラ文芸
天神林美桜の世界は、あやかしと人間が暮らしていた。人間として生まれた美桜は、しきたりの厳しい家で育ったが、どこの家も娘に生まれた者に特に厳しくすることまではしらなかった。 その言いつけを美桜は守り続けたが、片割れの妹は破り続けてばかりいた。 美しいものを好むあやかしの花嫁となれば、血に連なる一族が幸せになれることを約束される。 だけど、そんなことより妹はしきたりのせいで、似合わないもしないものしか着られないことに不満を募らせ、同じ顔の姉がいるせいだと思い込んだことで、とんでもない事が起こってしまう。

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~

絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。 ※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

ピアニストの転生〜コンクールで優勝した美人女子大生はおじいちゃんの転生体でした〜

花野りら
キャラ文芸
高校生ピアニストのミサオは、コンクールで美人女子大生ソフィアと出会う。 眠りながらラフマニノフを演奏する彼女は、なんと、おじいちゃんの転生体だった! 美しいピアノの旋律と幻想的なEDMがつむぎあった時、それぞれの人間ドラマが精巧なパズルのように組み合わさっていく。 ちょっぴりラブコメ、ほんのりシリアスなローファンタジー小説。

あやかしとシャチとお嬢様の美味しいご飯日和

二位関りをん
キャラ文芸
昭和17年。ある島の別荘にて病弱な財閥令嬢の千恵子は華族出の母親・ヨシとお手伝いであやかし・濡れ女の沼霧と一緒に暮らしていた。 この別荘及びすぐ近くの海にはあやかし達と、人語を話せるシャチがいる。 「ぜいたくは敵だ」というスローガンはあるが、令嬢らしく時々ぜいたくをしてあやかしやシャチが取ってきた海の幸に山の幸を調理して頂きつつ、薬膳や漢方に詳しい沼霧の手も借りて療養生活を送る千恵子。 戦争を忘れ、ゆっくりとあやかし達と共に美味しいご飯を作って食べる。そんなお話。 ※表紙はaipictorsで生成したものを使用しております。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

俺様当主との成り行き婚~二児の継母になりまして

澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
夜、妹のパシリでコンビニでアイスを買った帰り。 花梨は、妖魔討伐中の勇悟と出会う。 そしてその二時間後、彼と結婚をしていた。 勇悟は日光地区の氏人の当主で、一目おかれる存在だ。 さらに彼には、小学一年の娘と二歳の息子がおり、花梨は必然的に二人の母親になる。 昨日までは、両親や妹から虐げられていた花梨だが、一晩にして生活ががらりと変わった。 なぜ勇悟は花梨に結婚を申し込んだのか。 これは、家族から虐げられていた花梨が、火の神当主の勇悟と出会い、子どもたちに囲まれて幸せに暮らす物語。 ※3万字程度の短編です。需要があれば長編化します。

処理中です...