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3-5.弱き、当主(???視点)
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ついに、動いた。
あれが。
万乗への呪いが。
まさか、金剛刀の所持者が分家でも程度の低い術師の孫娘とは思わず。
当主である自分は、なんと運のない人間だと思うしかなかった。
「……それもまた一興。分家とは言え、金剛刀の所持者だ。私か、あれか。どちらが万乗に相応しいかわかるものだ」
『……は!』
「死せば、故意に継承の儀を。残れば、本家に養子にでもしてやろうか。誰か、今のあれを見てまいれ」
『御意』
側近達が完全に去ってから、万乗の当主は窓の前に立ち。そして、急に力を失ったかのように床に座り込んでしまった。
「あぁああぁああ!? また私は言ってしまったぁああ!!」
万乗の当主として、仮面を被るのは至極当然だが。
人としては、犯罪者同然のことだ。よくわかっているのに、他人には真逆の言葉をかけてしまう。
それくらい、実は現当主は二面性を持つ人間なのだ。
例の分家の孫娘とて、本当は見殺しにも引き込むこともしたくない。
しかも、あの達川の人間が関わっているのなら、自分達が介入するよりずっと安全だ。
「……助けに行こうにも、私じゃ弱いし」
万乗の歴史を紐解けば、比較的強い部類には入るが。それでも金剛刀を所持しているあの分家の少女よりは劣る。
何もできないわけではないが、達川が関わっているのであれば手出ししたところで意味がない。
今は、万乗の呪いである『呪怨』の動きを探らなくては。
当主として出来ることは、一族の人間に必要以上被害が行き渡らないようにすること。
「……頼みます。分家の少女」
もし解決したのなら、当主の立場を譲りたいくらいだが。
まだまだ年若い少女が望むまい、と思うのだった。
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