上 下
22 / 168

3-5.弱き、当主(???視点)

しおりを挟む





 *・*・*(???視点)






 ついに、動いた。

 あれが。

 万乗ばんじょうへの呪いが。

 まさか、金剛刀こんごうとうの所持者が分家でも程度の低い術師の孫娘とは思わず。

 当主である自分は、なんと運のない人間だと思うしかなかった。


「……それもまた一興。分家とは言え、金剛刀の所持者だ。私か、あれか。どちらが万乗に相応しいかわかるものだ」

『……は!』

「死せば、故意に継承の儀を。残れば、本家に養子にでもしてやろうか。誰か、今のあれを見てまいれ」

『御意』


 側近達が完全に去ってから、万乗の当主は窓の前に立ち。そして、急に力を失ったかのように床に座り込んでしまった。


「あぁああぁああ!? また私は言ってしまったぁああ!!」


 万乗の当主として、仮面を被るのは至極当然だが。

 人としては、犯罪者同然のことだ。よくわかっているのに、他人には真逆の言葉をかけてしまう。

 それくらい、実は現当主は二面性を持つ人間なのだ。

 例の分家の孫娘とて、本当は見殺しにも引き込むこともしたくない。

 しかも、あの・・達川たちかわの人間が関わっているのなら、自分達が介入するよりずっと安全だ。


「……助けに行こうにも、私じゃ弱いし」


 万乗の歴史を紐解けば、比較的強い部類には入るが。それでも金剛刀を所持しているあの分家の少女よりは劣る。

 何もできないわけではないが、達川が関わっているのであれば手出ししたところで意味がない。

 今は、万乗の呪いである『呪怨』の動きを探らなくては。

 当主として出来ることは、一族の人間に必要以上被害が行き渡らないようにすること。


「……頼みます。分家の少女」


 もし解決したのなら、当主の立場を譲りたいくらいだが。

 まだまだ年若い少女が望むまい、と思うのだった。
しおりを挟む

処理中です...