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2-6.経緯・金剛刀
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何だかとんでもない事態になってしまった。
「ほーへーほー?」
ソファに置いたままの状態にしてある、穫が自分の心臓部から引き抜いたらしい、金剛刀。
両刃の美しい輝きを持つ剣らしいが、他の三大神が見る前に巧が鑑定士が使うような片眼鏡を装着してじっくりと眺めている。
見過ぎなくらいに見ているので、何故か穫の方がドキドキしてしまうが。
「ほー? 人体の中に入ってたと思えんなあ? マジもんの刀……いや、剣?」
「ちょっと、巧~? あたしの配下をそんなエッチな目で見ないでよ?」
「誰がエッチや!!」
「お前」
「巧ですね~?」
弟二神まで似たツッコミを入れるとは、さすがはエミの兄弟だからか。
とりあえず、エミにバトンタッチになったので。エミが軽々と金剛刀を握って少し上にと構えた。
美人が剣を握る様は、不謹慎だがとても美しいと思えた。
「さ、金剛刀?……十束の一端よ。あたし、天照の呼び声に応えよ」
エミが呼び掛ければ、金剛刀は淡く赤色の光を帯び。やがて光が先端に集まって、人のような形となったのだった。
『……お久しゅうございます、大神』
大きさは人形サイズではあるが、月詠に劣らず、美しい男性だった。透けてて髪の毛とかは光の色のままだが、ほかは穫の目でもはっきりと見えた。
「久しぶりね? 何故、と聞きたいことは多いけど。あなたの今の主はみのりん……そこにいる、万乗穫で間違っていない?」
『……はい。その通りです』
「ならよかったわ。下手な人間達の手に渡るよりずっといいもの? じゃ、万乗の家に契約した経緯を聞いても?」
『……現世だと、五百年もの昔です』
金剛刀はこう答えた。
人間で言う五百年もの昔。戦乱の世の時代に、金剛刀は気まぐれに人間達の世に降り立った。剣ではなく人の振りをして、物見遊山のために各地を歩き回ったらしい。
そして、幾月が過ぎた頃に、とある武将に仕えていた万乗の祖先である人間と出会ったそうだ。当時は『物江』と言う姓を名乗っていたそうだが。
彼と気が合い、金剛刀は交流を深めて。いつしか朋友となった。
やがて、あの事件が起きるまでは。
「あの事件?」
『物江が、暗殺されたのです。結界師と言えど、油断していればただの人間。そして、術師を殺せば報酬は弾むなどと。愚かな人間が思うことです。だが、物江が死ぬのが嫌だと……人に触れ過ぎた我は出過ぎたことをしました』
一時的でも、金剛刀が物江を宿主とすれば命は繋げれる。だが、そうすれば金剛刀は物江の血族と未来永劫縛られてしまう。
当時はそれを構わないと思い、半ば強引に契約をしたのだ。あとで、物江にも盛大に怒られてしまったが。
「……………………じゃ、あなたはみのりんの祖先のためだけに。あたしの配下の任を振り払ったの??」
『…………誠に、申し訳ありません』
切先の上で正座とは滑稽に映るが、事実は事実だ。
神に仕えることよりも、自分の欲を優先させてしまったのだから。
エミは、金剛刀の謝罪に軽くため息を吐いてから穫に手招きしてきた。
「みのりん、おいで?」
「? はい?」
ゆっくり近づくと、エミはほら、と金剛刀を穫に持たせた。
悪霊の一端を祓った時は自覚していなかったが、やはり軽かった。まるで、紙を持つくらいに。
「う~~ん。しっくりくるわね?」
「え……っと?」
「みのりんにぴったり収まっているのよ、金剛刀が。あたしはみのりんなら預けていいと思うわ」
『……ありがとうございます』
穫が礼を言う前に、金剛刀が先に礼を言い。切先から刃の上を歩いてくると、彼は小さな手を柄を掴んでる穫の手に当てた。光の色のように暖かかった。
「? あの」
『我が盟約。万乗との血の盟約によって、結ばん。我が主はこの者也。他は認めん』
一瞬、フラッシュのように光ったがすぐに消えて。
穫の右手の甲に、五芒星を合わせたような不思議な紋様が浮かび上がっていた。
「え、え?」
『穫。我の主はそなただ。他は認めん。そのための契約の印だ。普通の人間には見えない』
「そ……ですか?」
『敬称は言い。我はある意味そなたの配下だからな?』
「ええ!?」
「じゃ、とりあえずぅ!! 宴再開と行きましょう!! 月詠とかが強化したから、しばらくはあいつらも襲って来ないしぃ?」
「応!」
「そうですね?」
「ほな、金剛刀もやな??」
「もち!!」
『……かたじけない』
というわけで、新たなメンバーが加わったが。穫の仕事は変わらずハウスキーパーなので。今日は巧と一緒に彼らをもてなすことになったのだった。
「ほーへーほー?」
ソファに置いたままの状態にしてある、穫が自分の心臓部から引き抜いたらしい、金剛刀。
両刃の美しい輝きを持つ剣らしいが、他の三大神が見る前に巧が鑑定士が使うような片眼鏡を装着してじっくりと眺めている。
見過ぎなくらいに見ているので、何故か穫の方がドキドキしてしまうが。
「ほー? 人体の中に入ってたと思えんなあ? マジもんの刀……いや、剣?」
「ちょっと、巧~? あたしの配下をそんなエッチな目で見ないでよ?」
「誰がエッチや!!」
「お前」
「巧ですね~?」
弟二神まで似たツッコミを入れるとは、さすがはエミの兄弟だからか。
とりあえず、エミにバトンタッチになったので。エミが軽々と金剛刀を握って少し上にと構えた。
美人が剣を握る様は、不謹慎だがとても美しいと思えた。
「さ、金剛刀?……十束の一端よ。あたし、天照の呼び声に応えよ」
エミが呼び掛ければ、金剛刀は淡く赤色の光を帯び。やがて光が先端に集まって、人のような形となったのだった。
『……お久しゅうございます、大神』
大きさは人形サイズではあるが、月詠に劣らず、美しい男性だった。透けてて髪の毛とかは光の色のままだが、ほかは穫の目でもはっきりと見えた。
「久しぶりね? 何故、と聞きたいことは多いけど。あなたの今の主はみのりん……そこにいる、万乗穫で間違っていない?」
『……はい。その通りです』
「ならよかったわ。下手な人間達の手に渡るよりずっといいもの? じゃ、万乗の家に契約した経緯を聞いても?」
『……現世だと、五百年もの昔です』
金剛刀はこう答えた。
人間で言う五百年もの昔。戦乱の世の時代に、金剛刀は気まぐれに人間達の世に降り立った。剣ではなく人の振りをして、物見遊山のために各地を歩き回ったらしい。
そして、幾月が過ぎた頃に、とある武将に仕えていた万乗の祖先である人間と出会ったそうだ。当時は『物江』と言う姓を名乗っていたそうだが。
彼と気が合い、金剛刀は交流を深めて。いつしか朋友となった。
やがて、あの事件が起きるまでは。
「あの事件?」
『物江が、暗殺されたのです。結界師と言えど、油断していればただの人間。そして、術師を殺せば報酬は弾むなどと。愚かな人間が思うことです。だが、物江が死ぬのが嫌だと……人に触れ過ぎた我は出過ぎたことをしました』
一時的でも、金剛刀が物江を宿主とすれば命は繋げれる。だが、そうすれば金剛刀は物江の血族と未来永劫縛られてしまう。
当時はそれを構わないと思い、半ば強引に契約をしたのだ。あとで、物江にも盛大に怒られてしまったが。
「……………………じゃ、あなたはみのりんの祖先のためだけに。あたしの配下の任を振り払ったの??」
『…………誠に、申し訳ありません』
切先の上で正座とは滑稽に映るが、事実は事実だ。
神に仕えることよりも、自分の欲を優先させてしまったのだから。
エミは、金剛刀の謝罪に軽くため息を吐いてから穫に手招きしてきた。
「みのりん、おいで?」
「? はい?」
ゆっくり近づくと、エミはほら、と金剛刀を穫に持たせた。
悪霊の一端を祓った時は自覚していなかったが、やはり軽かった。まるで、紙を持つくらいに。
「う~~ん。しっくりくるわね?」
「え……っと?」
「みのりんにぴったり収まっているのよ、金剛刀が。あたしはみのりんなら預けていいと思うわ」
『……ありがとうございます』
穫が礼を言う前に、金剛刀が先に礼を言い。切先から刃の上を歩いてくると、彼は小さな手を柄を掴んでる穫の手に当てた。光の色のように暖かかった。
「? あの」
『我が盟約。万乗との血の盟約によって、結ばん。我が主はこの者也。他は認めん』
一瞬、フラッシュのように光ったがすぐに消えて。
穫の右手の甲に、五芒星を合わせたような不思議な紋様が浮かび上がっていた。
「え、え?」
『穫。我の主はそなただ。他は認めん。そのための契約の印だ。普通の人間には見えない』
「そ……ですか?」
『敬称は言い。我はある意味そなたの配下だからな?』
「ええ!?」
「じゃ、とりあえずぅ!! 宴再開と行きましょう!! 月詠とかが強化したから、しばらくはあいつらも襲って来ないしぃ?」
「応!」
「そうですね?」
「ほな、金剛刀もやな??」
「もち!!」
『……かたじけない』
というわけで、新たなメンバーが加わったが。穫の仕事は変わらずハウスキーパーなので。今日は巧と一緒に彼らをもてなすことになったのだった。
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