イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
16 / 168

2-6.経緯・金剛刀

しおりを挟む
 何だかとんでもない事態になってしまった。


「ほーへーほー?」


 ソファに置いたままの状態にしてある、みのりが自分の心臓部から引き抜いたらしい、金剛刀こんごうとう

 両刃の美しい輝きを持つつるぎらしいが、他の三大神が見る前にたくみが鑑定士が使うような片眼鏡を装着してじっくりと眺めている。

 見過ぎなくらいに見ているので、何故か穫の方がドキドキしてしまうが。


「ほー? 人体の中に入ってたと思えんなあ? マジもんの刀……いや、剣?」
「ちょっと、巧~? あたしの配下をそんなエッチな目で見ないでよ?」
「誰がエッチや!!」
「お前」
「巧ですね~?」


 弟二神まで似たツッコミを入れるとは、さすがはエミの兄弟だからか。

 とりあえず、エミにバトンタッチになったので。エミが軽々と金剛刀を握って少し上にと構えた。

 美人が剣を握る様は、不謹慎だがとても美しいと思えた。


「さ、金剛刀?……十束とつかの一端よ。あたし、天照あまてらすの呼び声に応えよ」


 エミが呼び掛ければ、金剛刀は淡く赤色の光を帯び。やがて光が先端に集まって、人のような形となったのだった。


『……お久しゅうございます、大神おおみかみ


 大きさは人形サイズではあるが、月詠つくよみに劣らず、美しい男性だった。透けてて髪の毛とかは光の色のままだが、ほかは穫の目でもはっきりと見えた。


「久しぶりね? 何故、と聞きたいことは多いけど。あなたの今の主はみのりん……そこにいる、万乗ばんじょうみのりで間違っていない?」
『……はい。その通りです』
「ならよかったわ。下手な人間達の手に渡るよりずっといいもの? じゃ、万乗の家に契約した経緯いきさつを聞いても?」
『……現世だと、五百年もの昔です』


 金剛刀はこう答えた。

 人間で言う五百年もの昔。戦乱の世の時代に、金剛刀は気まぐれに人間達の世に降り立った。剣ではなく人の振りをして、物見遊山のために各地を歩き回ったらしい。

 そして、幾月が過ぎた頃に、とある武将に仕えていた万乗の祖先である人間と出会ったそうだ。当時は『物江』と言う姓を名乗っていたそうだが。

 彼と気が合い、金剛刀は交流を深めて。いつしか朋友ともとなった。

 やがて、あの事件が起きるまでは。


「あの事件?」
『物江が、暗殺されたのです。結界師と言えど、油断していればただの人間。そして、術師を殺せば報酬は弾むなどと。愚かな人間が思うことです。だが、物江が死ぬのが嫌だと……人に触れ過ぎた我は出過ぎたことをしました』


 一時的でも、金剛刀が物江を宿主とすれば命は繋げれる。だが、そうすれば金剛刀は物江の血族と未来永劫縛られてしまう。

 当時はそれを構わないと思い、半ば強引に契約をしたのだ。あとで、物江にも盛大に怒られてしまったが。


「……………………じゃ、あなたはみのりんの祖先のためだけに。あたしの配下の任を振り払ったの??」
『…………誠に、申し訳ありません』


 切先の上で正座とは滑稽に映るが、事実は事実だ。

 神に仕えることよりも、自分の欲を優先させてしまったのだから。

 エミは、金剛刀の謝罪に軽くため息を吐いてから穫に手招きしてきた。


「みのりん、おいで?」
「? はい?」


 ゆっくり近づくと、エミはほら、と金剛刀を穫に持たせた。

 悪霊の一端を祓った時は自覚していなかったが、やはり軽かった。まるで、紙を持つくらいに。


「う~~ん。しっくりくるわね?」
「え……っと?」
「みのりんにぴったり収まっているのよ、金剛刀が。あたしはみのりんなら預けていいと思うわ」
『……ありがとうございます』


 穫が礼を言う前に、金剛刀が先に礼を言い。切先から刃の上を歩いてくると、彼は小さな手を柄を掴んでる穫の手に当てた。光の色のように暖かかった。


「? あの」
『我が盟約。万乗との血の盟約によって、結ばん。我が主はこの者也。他は認めん』


 一瞬、フラッシュのように光ったがすぐに消えて。

 穫の右手の甲に、五芒星を合わせたような不思議な紋様が浮かび上がっていた。


「え、え?」
『穫。我の主はそなただ。他は認めん。そのための契約の印だ。普通の人間には見えない』
「そ……ですか?」
『敬称は言い。我はある意味そなたの配下だからな?』
「ええ!?」
「じゃ、とりあえずぅ!! 宴再開と行きましょう!! 月詠とかが強化したから、しばらくはあいつらも襲って来ないしぃ?」
「応!」
「そうですね?」
「ほな、金剛刀もやな??」
「もち!!」
『……かたじけない』


 というわけで、新たなメンバーが加わったが。穫の仕事は変わらずハウスキーパーなので。今日は巧と一緒に彼らをもてなすことになったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

後宮一の美姫と呼ばれても、わたくしの想い人は皇帝陛下じゃない

ちゃっぷ
キャラ文芸
とある役人の娘は、大変見目麗しかった。 けれど美しい娘は自分の見た目が嫌で、見た目を褒めそやす人たちは嫌いだった。 そんな彼女が好きになったのは、彼女の容姿について何も言わない人。 密かに想いを寄せ続けていたけれど、想い人に好きと伝えることができず、その内にその人は宦官となって後宮に行ってしまった。 想いを告げられなかった美しい娘は、せめてその人のそばにいたいと、皇帝の妃となって後宮に入ることを決意する。 「そなたは後宮一の美姫だな」 後宮に入ると、皇帝にそう言われた。 皇帝という人物も、結局は見た目か……どんなに見た目を褒められようとも、わたくしの想い人は皇帝陛下じゃない。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

セブンスガール

氷神凉夜
キャラ文芸
主人公、藤堂終夜の家にある立ち入り禁止の部屋の箱を開けるところから始まる、主人公と人形達がくりなす恋愛小説 ※二章以降各々ヒロイン視線の◯◯の章があります 理由と致しましてはこの物語の完結編が○○の章ヒロイン編と◯◯章の前半のフラグを元にメインストーリーが完結の際の内容が若干変化します。 ゲーム感覚でこの物語を読み進めていただければ幸いです。

アリス倶楽部

いなかぼっこ
キャラ文芸
高知県に住む私立女子高校3年生の村上奈緒。彼女は両親がいないがひたむきに生きる女の子。ある時、ひょんなことから、ライバルの明日香によりセルフプロデュースアイドルの道を志す事になる。沙也香、ささもっちゃん、まゆみ、友子などのメンバーと共にアイドルグループ__ピンキーダイナマイトを結成する。楽しいスクールライフや路上ライブ、公民館ライブ、学園祭ライブ、四国四県ライブなど行い順調に見えたのだが...。自体は奈緒が想像できない程、世界は恐ろしい方向へと転がりつつあった。奈緒が密かに他の人との違いに気付き名付けたアリス(発展途上系超大型情報密度保有女子)の女の子とは?何故?何の目的で自分がアリスならなければならなかったのか?奈緒の衝撃の過去とは?楽しいスクール系アイドルストーリーはやがて世界を巻き込む壮絶なストーリーへと変貌する。我美町の鬼才いなかぼっこが送るヒューマンラブストーリーを是非ご覧下さい。とまぁ偉そうにいってみたんですが、ピンキーダイナマイトは序章にすぎないので楽しいアイドル話になると思います。少しづつ更新していくので宜しくお願いしますね! 小説家になろうでも掲載中。

《書籍化》転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
《アルファポリス・レジーナブックスより書籍化されました》 ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン
恋愛
最後の記憶は、消毒液の匂いと白い部屋と機械音。 月宮雫(20)は、長い闘病生活の末に死亡。 『来世があるなら何にも負けない強い身体の子供になりたい』 そう思ったお陰なのか、私は生まれ変わった。 剣と魔法の世界にティア=ムーンライドして朧げな記憶を持ちながら。 でも、相変わらずの病弱体質だった。 しかも父親は、強い身体を持つ勇者。 「確かに『強い身体の子供になりたい』。そう願ったけど、意味が全然ちがーうっ!!」 これは、とても可哀想な私の物語だ。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

苦労人お嬢様、神様のお使いになる。

いんげん
キャラ文芸
日本屈指の資産家の孫、櫻。 家がお金持ちなのには、理由があった。 代々、神様のお使いをしていたのだ。 幼馴染の家に住み着いた、貧乏神を祓ったり。 死の呪いにかかった青年を助けたり……。

処理中です...