8 / 168
1-4.依頼遂行①
しおりを挟む
どうして、寝室のベッドにあるはずのクッションが、玄関まで飛んで来るのだろうか。
今までの、いわゆるラップ現象とやらでは、ここまでの事態はなかった。と言うのも、現象が起きるのは室内でもリビングや寝室、それぞれの領域内だったからだ。
穫が避けながらその場所を出れば、ぴたりと治るくらいの、限定された不可思議な現象ばかり。
それだけが続くも、ストレスになる事に変わりはないし、本当に困ってもいた。
だから、今目の前でエミがキャッチしてるクッションが飛んできたのがまだ信じられない。
「ほーんと、軽いモノで助かったわ。まだまだ飛んできそうだけど、あたしの後ろから出ちゃダメ」
「は、はい」
「食器とかが来ても、笑也が弁償するでしょうから安心なさいな?」
「え、そこは安心したくないような」
「来るわよ」
納得しがたい理屈を押し付けられてると、また違うクッションが二個飛んできた。それをエミがすかさず受け止め、次が飛んで来る前に急いで部屋に入り鍵を閉める。
エミのような女性なら土足で上がると思いきや、意外にもすぐにスニーカーを脱いで持ってたクッションを床に置いてくれた。
彼女は笑也であるはずの女性だが、『イタコ』としての姿としてしかまだ認識出来ていない。だが、彼女がいれば大丈夫と笑也が言ってたのだから信じるしかなかった。
エミは、次のが飛んで来るかどうか構えてはいたけれど、あちらは何も飛ばしてこなかった。むしろ、向こうもエミの存在に気付き、慎重になってるのかもしれない。
「……はっはーん。次は、家主じゃないあたしに向けて、トラップでも仕掛けようってとこかしら?」
「わ、わな?」
「んー、最悪……室内のガラスを粉々にさせてぶつけてくるとか?」
「け、怪我どころで済まないんじゃ!」
「だーいじょぶ大丈夫。君は、あたしが全身全霊で守ってあ・げ・る。そーだ、ちょっとだけ我慢してて?」
「はい?」
じっとしてるように言われ、なんだろうと思うも彼女はスラックスのポケットから小さな布の小袋を取り出した。
そして、穫に向けたかと思うと、空いてる手で忍法の構えのようなポーズを取り出した。
「清らかな泉のかけらよ。この者を護れ、我が身に変えて護れ。砕ける時は、彼女の吐息ごと護れ」
今度は、穫でも聞き取りやすい詠唱。
それと、軽い調子で行ったにも関わらず、本当に穫を気遣っての魔法か何かのように思えた。
一瞬だけ小袋が強く光ったが、目を閉じてしまった穫が次に目を開けた時、視界に映る色がほんのり白がかってるように見えたのだ。
「こ、これは?」
「霊視能力があるから、視えるのは本当のようね? これは水晶のクラスターを媒介にした結界よ。君に怪我させないように障害物から身を守るためにねん」
「あ、ありがとう……ございます」
イタコがそんな大掛かりな事まで出来るのか不思議に思ったが、まずは礼を告げた。
穫は視える以外何も出来ない素人だから、何かあってからではきっと遅い。足手まといでしかないだろうが、穫が視えた女の子を確認するにもここにいなくてはならないから。
エミは一度にっこり笑うと、水晶の小袋をしまってから今度は笑也が道端で除霊したのと同じ、インスタント飲料のスティックを取り出したのだった。
「さーて。本命が出て来るまで、除霊タイムよん?」
そこからは無双タイムになったのか。
エミは、次に飛んできた青白い何かに破いたコーヒーらしきモノを振りかけ。どんどんと、悪霊らしきものを除霊していったのだ。
「いつーつ、六つ。ななーつ! ん、もういっちょ!!」
進んで行くたびに、家の中がコーヒーまみれになるがあとでなんとか掃除すればいいだろう。
彼女に呼ばれるまで、穫は玄関から動かなかった。
今までの、いわゆるラップ現象とやらでは、ここまでの事態はなかった。と言うのも、現象が起きるのは室内でもリビングや寝室、それぞれの領域内だったからだ。
穫が避けながらその場所を出れば、ぴたりと治るくらいの、限定された不可思議な現象ばかり。
それだけが続くも、ストレスになる事に変わりはないし、本当に困ってもいた。
だから、今目の前でエミがキャッチしてるクッションが飛んできたのがまだ信じられない。
「ほーんと、軽いモノで助かったわ。まだまだ飛んできそうだけど、あたしの後ろから出ちゃダメ」
「は、はい」
「食器とかが来ても、笑也が弁償するでしょうから安心なさいな?」
「え、そこは安心したくないような」
「来るわよ」
納得しがたい理屈を押し付けられてると、また違うクッションが二個飛んできた。それをエミがすかさず受け止め、次が飛んで来る前に急いで部屋に入り鍵を閉める。
エミのような女性なら土足で上がると思いきや、意外にもすぐにスニーカーを脱いで持ってたクッションを床に置いてくれた。
彼女は笑也であるはずの女性だが、『イタコ』としての姿としてしかまだ認識出来ていない。だが、彼女がいれば大丈夫と笑也が言ってたのだから信じるしかなかった。
エミは、次のが飛んで来るかどうか構えてはいたけれど、あちらは何も飛ばしてこなかった。むしろ、向こうもエミの存在に気付き、慎重になってるのかもしれない。
「……はっはーん。次は、家主じゃないあたしに向けて、トラップでも仕掛けようってとこかしら?」
「わ、わな?」
「んー、最悪……室内のガラスを粉々にさせてぶつけてくるとか?」
「け、怪我どころで済まないんじゃ!」
「だーいじょぶ大丈夫。君は、あたしが全身全霊で守ってあ・げ・る。そーだ、ちょっとだけ我慢してて?」
「はい?」
じっとしてるように言われ、なんだろうと思うも彼女はスラックスのポケットから小さな布の小袋を取り出した。
そして、穫に向けたかと思うと、空いてる手で忍法の構えのようなポーズを取り出した。
「清らかな泉のかけらよ。この者を護れ、我が身に変えて護れ。砕ける時は、彼女の吐息ごと護れ」
今度は、穫でも聞き取りやすい詠唱。
それと、軽い調子で行ったにも関わらず、本当に穫を気遣っての魔法か何かのように思えた。
一瞬だけ小袋が強く光ったが、目を閉じてしまった穫が次に目を開けた時、視界に映る色がほんのり白がかってるように見えたのだ。
「こ、これは?」
「霊視能力があるから、視えるのは本当のようね? これは水晶のクラスターを媒介にした結界よ。君に怪我させないように障害物から身を守るためにねん」
「あ、ありがとう……ございます」
イタコがそんな大掛かりな事まで出来るのか不思議に思ったが、まずは礼を告げた。
穫は視える以外何も出来ない素人だから、何かあってからではきっと遅い。足手まといでしかないだろうが、穫が視えた女の子を確認するにもここにいなくてはならないから。
エミは一度にっこり笑うと、水晶の小袋をしまってから今度は笑也が道端で除霊したのと同じ、インスタント飲料のスティックを取り出したのだった。
「さーて。本命が出て来るまで、除霊タイムよん?」
そこからは無双タイムになったのか。
エミは、次に飛んできた青白い何かに破いたコーヒーらしきモノを振りかけ。どんどんと、悪霊らしきものを除霊していったのだ。
「いつーつ、六つ。ななーつ! ん、もういっちょ!!」
進んで行くたびに、家の中がコーヒーまみれになるがあとでなんとか掃除すればいいだろう。
彼女に呼ばれるまで、穫は玄関から動かなかった。
10
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
俺様当主との成り行き婚~二児の継母になりまして
澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
夜、妹のパシリでコンビニでアイスを買った帰り。
花梨は、妖魔討伐中の勇悟と出会う。
そしてその二時間後、彼と結婚をしていた。
勇悟は日光地区の氏人の当主で、一目おかれる存在だ。
さらに彼には、小学一年の娘と二歳の息子がおり、花梨は必然的に二人の母親になる。
昨日までは、両親や妹から虐げられていた花梨だが、一晩にして生活ががらりと変わった。
なぜ勇悟は花梨に結婚を申し込んだのか。
これは、家族から虐げられていた花梨が、火の神当主の勇悟と出会い、子どもたちに囲まれて幸せに暮らす物語。
※3万字程度の短編です。需要があれば長編化します。

【完結】龍神の生贄
高瀬船
キャラ文芸
何の能力も持たない湖里 緋色(こさと ひいろ)は、まるで存在しない者、里の恥だと言われ過ごして来た。
里に住む者は皆、不思議な力「霊力」を持って生まれる。
緋色は里で唯一霊力を持たない人間。
「名無し」と呼ばれ蔑まれ、嘲りを受ける毎日だった。
だが、ある日帝都から一人の男性が里にやって来る。
その男性はある目的があってやって来たようで……
虐げられる事に慣れてしまった緋色は、里にやって来た男性と出会い少しずつ笑顔を取り戻して行く。
【本編完結致しました。今後は番外編を更新予定です】

博士の愛しき発明品たち!
夏夜やもり
キャラ文芸
近年まで、私と妹は常識的でゆるやかな日常を送っていました。
しかし、ご近所に住む博士の発明品で、世界と一緒に振り回されてしまいます!
そんなお話。あと斉藤さん。
【あらすじ】
氏名・年齢・性別などを問われたとき、かならず『ひみつ』と答える私は、本物の科学者と出会った!
博士は、その恐るべき科学力と体をなげうつ研究努力と独自理論によって、悍ましき発明品を次々生み出し、世界と私たちの日常を脅かす!
そんな博士と私と妹たちで繰り広げるS・Fの深淵を、共に覗きましょう。
**―――――
「ねえ、これ気になるんだけど?」
居間のソファーですっごい姿勢の妹が、適当に取り繕った『あらすじ』をひらひらさせる。
「なこが?」
「色々あるけどさ……SFってのはおこがましいんじゃない?」
「S・F(サイエンス・ファンキー)だから良いのだよ?」
「……イカレた科学?」
「イカした科学!」
少しだけ妹に同意しているが、それは胸にしまっておく。
「文句があるなら自分もお勧めしてよ」
私は少し唇尖らせ、妹に促す。
「んー、暇つぶしには最適! あたしや博士に興味があって、お暇な時にお読みください!」
「私は?」
「本編で邪魔ってくらい語るでしょ?」
「…………」
えっとね、私、これでも頑張ってますよ? いろいろ沸き上がる感情を抑えつつ……。
本編へつづく
*)小説家になろうさん・エブリスタさんにも同時投稿です。
【完結】皇帝の寵妃は謎解きよりも料理がしたい〜小料理屋を営んでいたら妃に命じられて溺愛されています〜
空岡
キャラ文芸
【完結】
後宮×契約結婚×溺愛×料理×ミステリー
町の外れには、絶品のカリーを出す小料理屋がある。
小料理屋を営む月花は、世界各国を回って料理を学び、さらに絶対味覚がある。しかも、月花の味覚は無味無臭の毒すらわかるという特別なものだった。
月花はひょんなことから皇帝に出会い、それを理由に美人の位をさずけられる。
後宮にあがった月花だが、
「なに、そう構えるな。形だけの皇后だ。ソナタが毒の謎を解いた暁には、廃妃にして、そっと逃がす」
皇帝はどうやら、皇帝の生誕の宴で起きた、毒の事件を月花に解き明かして欲しいらしく――
飾りの妃からやがて皇后へ。しかし、飾りのはずが、どうも皇帝は月花を溺愛しているようで――?
これは、月花と皇帝の、食をめぐる謎解きの物語だ。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
麻布十番の妖遊戯
酒処のん平
キャラ文芸
麻布十番の三叉路に、夜な夜な現れる古民家がある。
彼らは江戸より前からこの世に住み、人に紛れて毎日を楽しんでいた。
しかし、そんな彼らも長くこの世に居過ぎたせいか、 少々人の世にも飽きてきた。
そんなときに見つけた新しい楽しみ。
【人】ではなく、【霊】を相手にすることだった。
彷徨える霊の恨みをきれいさっぱり取り祓うかわりに 死に樣を話してくれと。
それを肴に話に花を咲かせたい。
新しい遊戯を発見した彼らが出会う【霊】とはいかなるものか。
学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~
トベ・イツキ
キャラ文芸
三国志×学園群像劇!
平凡な少年・リュービは高校に入学する。
彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。
しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。
妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。
学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!
このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。
今後の予定
第一章 黄巾の乱編
第二章 反トータク連合編
第三章 群雄割拠編
第四章 カント決戦編
第五章 赤壁大戦編
第六章 西校舎攻略編←今ココ
第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる