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1-3.インスタント食品研究家
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インスタント食品で除霊が出来る。
そんな新事実を知り、穫は後片付けをしている笑也に詰め寄った。
「笑也さん!!」
「うん? なんだい??」
「笑也さんのお部屋があんなにも凄かったのは、ご自宅でも除霊をしてたんですか!?」
「うーん? 半分正解。僕の本業は一応イタコだけど。普段はインスタント食品の研究家なんだ」
「はい?」
いわゆる、フードコーディネーターのような職業なのだろうか。まだ大学二年でしかない美兎には、職業が星の数ほどあるのは理解しているが、笑也の職種は初耳だったので。
「まあ。どのような食事がインスタントに向きか不向きか。色々研究して、ブランドに提案するとかコラボを持ちかけたりとか。僕の仕事はそう言う感じかな?」
「じゃあ……あのゴミの海は?」
「あー、あれね? 今の神様や妖怪とかってね? 普通の食事もだけど、手軽で味もいい、ほどほどに食べれるインスタントとかファストフードとかが好評なんだよ? お金は不便してないし、もてなしたりしてたらいつもああなるわけ」
「な、なる……ほど?」
それで、さっきの悪霊達も天国か地獄に行ったのか。インスタント食品でとか、本当に聞いたことがないのだが目の前で起きたことを否定するつもりはない。
「さっきの除霊も、びっくりしたでしょ?」
「わ!?」
すると、片付けが終わった笑也が穫の顔を覗いてきたのだ。
「あはは、ごめんごめん。けど、穫ちゃんの依頼解決にも貢献出来る事実が見せれたでしょ? とりあえず、家まで急ごうか?」
「あ、はい!」
そして、電車で穫の自宅に向かうまで。お互いの事を話し出したら夢中になってしまった。
「へぇ? 実家が食堂なんだ。だから、あんなにご飯美味しかったんだね」
「そんな……手伝ってただけです。笑也さんは、お料理しないんですか?」
「うん。さっき言った事情もあるんだけど。普段の仕事に合わせると、材料から料理するのはあんまりかなぁ?」
だから、冷食やインスタント食品以外で食材が思った以上に少なかったのか。
納得がいくと、ひとつだけ思い当たった事があった。
「じゃ、じゃあ……巧さんが淹れてくださった紅茶も?」
「うん。蜂蜜は僕の好みで置いてあるけど、あれも粉のミルクティーだね」
「へー」
基本的にコーヒーもドリップで淹れる穫なので、あまり意識した事がなかった。
だが、インスタントも全般に悪くないと捉えれば、活用しようと思える。
そんなたわいもない会話が、人混みにいる時のカモフラージュと気づいたのは、穫のアパートに着いてからだった。
「さて。ここからは、本職だよ」
穫達以外誰もいない廊下に立つと、笑也をまとう空気が変わった気がした。
「穫ちゃん、ドア開けたら僕の後ろに。エミが全部追っ払ってくれるだろうけど」
「は、はい」
なので、言われたように鍵を開けてから彼の後ろに回る。
笑也はすぐにドアを開けなかったが、エミがしてたように頭に手をかざした。
「我が身に降ろせ、高天ヶ原の御神。魅入られ、魅入る国津神の御許」
呪文のような、詠唱のように言葉が少しずつ紡がれ、声が高くなっていく。
「我が身に降ろせ、万物の象徴。全てを見通せ、遍く星の声。────さあ、我が身を見よ」
少し間を置き、完全に女性そのものの声になった途端。
背丈と髪の長さが変わるのが穫の目に映り、立っていたのはあの美女エミだった。
「あたしの気に入りの子を困らせてる奴は、どこのどいつ?」
そして、次の瞬間。
ドアがひとりでに開き、大きめのクッションが飛んできたのが見えた。
そんな新事実を知り、穫は後片付けをしている笑也に詰め寄った。
「笑也さん!!」
「うん? なんだい??」
「笑也さんのお部屋があんなにも凄かったのは、ご自宅でも除霊をしてたんですか!?」
「うーん? 半分正解。僕の本業は一応イタコだけど。普段はインスタント食品の研究家なんだ」
「はい?」
いわゆる、フードコーディネーターのような職業なのだろうか。まだ大学二年でしかない美兎には、職業が星の数ほどあるのは理解しているが、笑也の職種は初耳だったので。
「まあ。どのような食事がインスタントに向きか不向きか。色々研究して、ブランドに提案するとかコラボを持ちかけたりとか。僕の仕事はそう言う感じかな?」
「じゃあ……あのゴミの海は?」
「あー、あれね? 今の神様や妖怪とかってね? 普通の食事もだけど、手軽で味もいい、ほどほどに食べれるインスタントとかファストフードとかが好評なんだよ? お金は不便してないし、もてなしたりしてたらいつもああなるわけ」
「な、なる……ほど?」
それで、さっきの悪霊達も天国か地獄に行ったのか。インスタント食品でとか、本当に聞いたことがないのだが目の前で起きたことを否定するつもりはない。
「さっきの除霊も、びっくりしたでしょ?」
「わ!?」
すると、片付けが終わった笑也が穫の顔を覗いてきたのだ。
「あはは、ごめんごめん。けど、穫ちゃんの依頼解決にも貢献出来る事実が見せれたでしょ? とりあえず、家まで急ごうか?」
「あ、はい!」
そして、電車で穫の自宅に向かうまで。お互いの事を話し出したら夢中になってしまった。
「へぇ? 実家が食堂なんだ。だから、あんなにご飯美味しかったんだね」
「そんな……手伝ってただけです。笑也さんは、お料理しないんですか?」
「うん。さっき言った事情もあるんだけど。普段の仕事に合わせると、材料から料理するのはあんまりかなぁ?」
だから、冷食やインスタント食品以外で食材が思った以上に少なかったのか。
納得がいくと、ひとつだけ思い当たった事があった。
「じゃ、じゃあ……巧さんが淹れてくださった紅茶も?」
「うん。蜂蜜は僕の好みで置いてあるけど、あれも粉のミルクティーだね」
「へー」
基本的にコーヒーもドリップで淹れる穫なので、あまり意識した事がなかった。
だが、インスタントも全般に悪くないと捉えれば、活用しようと思える。
そんなたわいもない会話が、人混みにいる時のカモフラージュと気づいたのは、穫のアパートに着いてからだった。
「さて。ここからは、本職だよ」
穫達以外誰もいない廊下に立つと、笑也をまとう空気が変わった気がした。
「穫ちゃん、ドア開けたら僕の後ろに。エミが全部追っ払ってくれるだろうけど」
「は、はい」
なので、言われたように鍵を開けてから彼の後ろに回る。
笑也はすぐにドアを開けなかったが、エミがしてたように頭に手をかざした。
「我が身に降ろせ、高天ヶ原の御神。魅入られ、魅入る国津神の御許」
呪文のような、詠唱のように言葉が少しずつ紡がれ、声が高くなっていく。
「我が身に降ろせ、万物の象徴。全てを見通せ、遍く星の声。────さあ、我が身を見よ」
少し間を置き、完全に女性そのものの声になった途端。
背丈と髪の長さが変わるのが穫の目に映り、立っていたのはあの美女エミだった。
「あたしの気に入りの子を困らせてる奴は、どこのどいつ?」
そして、次の瞬間。
ドアがひとりでに開き、大きめのクッションが飛んできたのが見えた。
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