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1-2.インスタント食品で除霊
しおりを挟む「穫ちゃーん、笑也の方出来たでー?」
「はーい」
他人の家なので、やはり気にし過ぎは良くない。
そう思い直して、穫はリビングに戻ると目を疑うような光景があった。
「た……達、川さん?」
巧と違う、キチンとした格好の男性が笑也とは信じ難かった。
髪もワックスか何かで整えられたのか、優しげな瞳と顔立ちが丸出し。
彼は穫を見ると照れ臭そうに、髪をかき出した。
「うん、巧に色々いじられた」
「わっかい女の子の部屋に上がるんやから、当然やろーが」
「まあ、そうだけど」
髪をいじっただけでこの印象の違い。
巧に負けず劣らず、好印象を持てる男性の顔立ちに、穫は何故か変な緊張感を抱いてしまった。
「じゃ、行こうか万乗さん?」
穫の顔を見て、今度は優しい笑顔を振りまいてきたため、穫は変な声を上げそうになってしまった。
外に出てからは、日傘をまた差したので笑也の顔は見れなかったが、駅に着くまで何故か無言状態に。
(な……何か、話さなくちゃとは思うんだけどっ)
前髪を上げただけでイケメンとは実にけしからん、と思いたい。
お約束なパターンだとしても、穫自身はイケメンへの免疫力があまりないので緊張しまくってしまう。食堂の客は中年以上の世代が多く、大学もキャンパスの関係かイケメンは少ない。
だから、巧にも思ったがイケメンを目にすると、ドキドキとしてしまうのだ。
「…………万乗さん、ちょっといい?」
「ひゃ、ひゃい!」
急に声をかけられたので、思わず変に上ずった声が出てしまった。
だが、依頼を受けてもらったから無視は出来ないと傘を少し傾ければ、困ったような表情が見えてきた。
「……巧だけじゃずるいから、僕も穫ちゃんって呼んでいーい?」
「え、は……はい?」
「僕の事も笑也でいいから」
「え、え?」
「はい、決まり」
何故か、勝手に決められてしまったが依頼内容ではなかったのか。
それから、呼び方を改めたお陰か、緊張感がいくらかほぐれて電車に向かう途中。
どう言うわけか、気味の悪いタイプの悪霊に取り囲まれてしまい。穫はビクビクしか出来ないでいた。
「え、え、え、笑也……さん!!」
「うーん。ちょっと厄介? でもまあ、このレベルなら大丈夫大丈夫」
「何がだいじょびなんですか!?」
「噛んじゃって可愛い。ま、見てて見てて」
と、スラックスのポケットから取り出して、穫に見せたのは。スティック状の、インスタント飲料の元だった。
「ま、まさかそれで!?」
「うん。大丈夫大丈夫。意外と……ね!」
そして、なんの躊躇もなく開封して悪霊達に振り撒けば。
「ほ、本当に……??」
キラキラエフェクトが聞こえるような感覚で、目の前の悪霊達が綺麗さっぱりいなくなってしまったのだ。ついでに言えば、浄化されたらしく上を見るように笑也に言われて見れば。白装束の状態で人間だった幽霊達が飛んでいってしまってた。
「盛り塩とか、浄化されたものより。ジャンキーでお手軽なインスタント食品の方が効果ありなんだよ?」
ただし、使用者は僕前提で、と笑也が告げた言葉に。
穫はあの腐海の森と化していた部屋を思い出したのだった。
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