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第128話 未来へ続く
しおりを挟む「揚げたてカレーパンです! いかがでしょうかー?」
水城桜乃だった、あたしは。
今は卯月桜乃になって……ルーブルのパン屋を切り盛りしている。おじいちゃんとお父さんにお母さんも相変わらず一緒に。
旦那になった駿は、一度は高校野球で甲子園に行くくらい活躍した選手になったけど……腕を怪我してリタイアしてしまった。不随ほどではないから、お義父さんに弟子入りして焼き鳥屋さんを継ぐために今も頑張っている。
あたしとは、中学二年生の時に……あたしがどんどんかっこよくなっていく駿を意識してきたことで、あたしから告白して付き合い始めた。駿がずっと好きだって言うのは気づかなかったけど……そこから喧嘩もそこそこしたりしても、最終的には結婚出来たわ。
お互いが家の仕事に就職するくらいだから……二十二歳くらい。子どもはまだだけど、早い方がいいっておじいちゃんが言ったのよね? 曾孫出来るまで死ぬ気はないって縁起の悪いこと言うんだから。
「副店長! フレンチ完売です!」
「はーい!」
なっちゃんはうちの店に同時期に就職してくれた。と言うか、同じ専門学校に進学した時からバイトで入ってくれてたの。今でも戦力として製造や接客でも大活躍してくれている。結婚は近いうちに、樹おじいちゃんのお孫さんと式を挙げる予定だ。引き出物にうちのお菓子を注文してくれるくらい信頼されているの。樹おじいちゃんは昔元気になったが、流石に高齢だったので……数年前に老衰で天国に旅立った。いよ子おばあちゃんもその翌年に。
あの家はまだ残っているんだけど、なっちゃんとその彼氏さんはそこに住む予定だ。だから遊びに行くことは出来る。
「追加ちょうど出来たよ」
奥から出てきたのは黒髪白肌の美女。……人間に化けた『美濃』さんだ。口調は艶めいたものじゃなく普通。歳は三十歳くらいに設定してるんだけど……ご近所の男の人とかに大モテなのよね? あたしと仕事がしたいからって、蔵から出てきただけなのでそんな気はさらさらないらしいけど。
(付喪神って、お父さんたちに打ち明けた時は……まあ、納得されちゃったけど)
あたしがなんでおじいちゃんがいてもパンを作れるか、やっと理解出来たって。魔法のことも見てもらった時はめちゃくちゃ驚いてひっくり返ったわ。今も使えるけど……それは新商品を開発するときね。あたしよりお父さんの方がやる気満々なのよねぇ。今副店長になったあたしとも真剣に考えてくれるからいいけど。
(そうよ……副店長になったんだもん)
まだ就任したばかりだけど……ルーブルを引き継ぐのはあたしだって、認めてくれた証拠だと言ってくれた。弟の宙太はちなみに駿に憧れたことで、逆に野球の道に進んで今は高校野球部で甲子園に出場するために練習に明け暮れている。駿も、ちょっとだけ指導しているそうよ。義弟になったから頼られるのも嬉しいって。
宙太が目指す道を決めたのなら、あたしはあたしでルーブルを続けていく道を歩むのみ。
美濃さんと一緒に歩んでいくパン屋を……次の世代に繋げていく道を走っていくんだ。
ちょうどあたしの前に来た美濃さんと目が合えば、二人で手を伸ばしてハイタッチした。
『パンでパンでポン』。
小学生の時に、本体であるままごとキッチンを展開する時に美濃さんと決めた合言葉。
流石に人前では出来ないけど……今日も今日とて相棒と作っていくんだ。最高に美味しいパンを!!
【終】
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