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第119話 今度は父親らしく

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 俺は妻の桃代ももよが親父に叱りつける様を見て、俺もめちゃくちゃ驚いたんが。

 娘の桜乃さくのが、桃代に『楽しかったから大丈夫』としがみついたことについても、めちゃくちゃ驚いた。宿題の内容については、小学生が学ぶには無茶苦茶難しいのに……桜乃は大丈夫と言い切った。酵母の扱いだなんて、大人でも調整が難しいもんなのに?

 俺はこそっと抜けて蔵に向かい、あの美濃みのさんに会いに行った。扉を開ければ、中にいた彼女はバツの悪そうな表情を見せてくれた。


涼太りょうた、桜乃への宿題についてはすまなんだ。あまり叱らないでやって欲しいのじゃ』

「……酵母のテーマ提案は、あなたですか」

『単純なパン作りよりは良いと思ったが。表彰されるとは、あちきも予想外じゃよ』

「……せめて、もう少しでかくなってからにしてくださいよ」


 しっかりしているようで意外に抜けている性格のようだ。大昔にこの人を怖いと思った俺はなんだったんだ? ど綺麗だけど、めちゃくちゃ気さくな性格の人じゃないか。


『うむ。駿しゅん夏樹なつきも意欲的だったからの? みおの手助けもあり、レポートはいい出来じゃったが』

「そこに親父も加われば、表彰されますよ……」

『ちとやり過ぎたかの……』


 けどまあ、桜乃自身が本当に家を継ぐ意志は見せてもらったし。

 その世代になるのは当分先でも、俺もまだまだ負けられないなと……ここはひとつ提案をしようと思う。

 新しいパンへのインスピレーション。

 敵情視察ならぬ、ライバル店の新商品を買い出しに行くことだ。いつもなら一人で行くんだが……親として、将来の上司としては、娘を連れ出すのも悪くないだろう。


「美濃さん、桜乃に少し旅のようなものをさせてあげたいんです」


 考えていた事を告げれば、美濃さんは『良い』と頷いてくれた。なので、すぐに家側に戻り。まだ桜乃が桃代にレポートの内容を教えてもらっていたので……親父はとりあえず解説者として控えさせられていたが。

 久しぶりに親子での出歩きについて、桜乃自身はどう言ってくれるか。

 美濃さんとパン作りしている以外じゃ、相手は親父に任せっきりだっらからな?
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