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第103話 説得材料
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私が不器用だった、本当の理由がわかった。
お母さんが、いつも『カン』であちこちの機械をじょーずに使っていたから……私も出来ると思い込んで。
そうしたら、あんな風に『ばーん』ってなっちゃったわけで……だから、不器用だと思ったの。
(……でも、ちがった)
桜乃ちゃんが……桜乃ちゃんといっしょにいたあの綺麗なお姉さん。美濃さんって、黒い髪が綺麗なお姉さんのおかげで、ちがってたことがわかったの。
うれしくて、いっしょにつくっていいって言われた時は……泣いちゃった。すっごくうれしかったんだもん。今まで、ごはんつくっちゃだめって言われてたから。
だから、バターづくりもとっても楽しかった。
バターミルクもおいしかった。
もちもちパンといっしょに持って帰っていいって言われて……それと、桜乃ちゃんのおじいさんもいっしょに来てくれたの。
「ちょいと、夏樹ちゃんのお母さんに説明をしようと思ってな?」
「せつめい……ですか?」
おみやげは重いからって、おじいさんが持ってくれて……おうちに着くと、お母さんがちょうどポストからお手紙か何かを取っていたわ。
「おう。伊澤さん」
「あら、水城さん! 夏樹を送ってくださったんですか?」
「それもあるが、ちょいとお願いごとに来たんだよ」
「……お願い? ですか?」
お母さんもだけど、私も教えてもらってないからわからない。
おじいさんは、にっと笑顔になってから私の頭を軽くたたいてくれた。
「夏樹ちゃんの、ちょっと不器用なとこは『適当』が癖になってたんだ」
「え? 癖?」
「どうやら、奥さんの様子を見よう見まねで覚えようとした結果らしい。ああ、奥さんが悪いんじゃない。子どもってそういうもんだ。うちの息子も昔似たようなことはしてた」
「……そうだったんですね」
お母さんは、ちょっと泣きながら私をギュッと抱っこしてくれた。
「……お母さん?」
「ごめんね。勝手に決めつけて……これからは、ゆっくり教えてあげるから」
「! ほんと!?」
おうちで料理ができるんだと思ったら、すっごくうれしくなった! 少しのせつめいだけなのに、やっぱり桜乃ちゃんのおじいさんはすごい。いろんな人に、頼りにされているからだろうけど。
「だから、練習の場所としてうちのとこも使わさせてくれ。孫らもいるから一人じゃない」
「……お願いします」
「わーい!」
私は本当にうれしいのに、またたくさん泣いちゃった……。
お母さんが、いつも『カン』であちこちの機械をじょーずに使っていたから……私も出来ると思い込んで。
そうしたら、あんな風に『ばーん』ってなっちゃったわけで……だから、不器用だと思ったの。
(……でも、ちがった)
桜乃ちゃんが……桜乃ちゃんといっしょにいたあの綺麗なお姉さん。美濃さんって、黒い髪が綺麗なお姉さんのおかげで、ちがってたことがわかったの。
うれしくて、いっしょにつくっていいって言われた時は……泣いちゃった。すっごくうれしかったんだもん。今まで、ごはんつくっちゃだめって言われてたから。
だから、バターづくりもとっても楽しかった。
バターミルクもおいしかった。
もちもちパンといっしょに持って帰っていいって言われて……それと、桜乃ちゃんのおじいさんもいっしょに来てくれたの。
「ちょいと、夏樹ちゃんのお母さんに説明をしようと思ってな?」
「せつめい……ですか?」
おみやげは重いからって、おじいさんが持ってくれて……おうちに着くと、お母さんがちょうどポストからお手紙か何かを取っていたわ。
「おう。伊澤さん」
「あら、水城さん! 夏樹を送ってくださったんですか?」
「それもあるが、ちょいとお願いごとに来たんだよ」
「……お願い? ですか?」
お母さんもだけど、私も教えてもらってないからわからない。
おじいさんは、にっと笑顔になってから私の頭を軽くたたいてくれた。
「夏樹ちゃんの、ちょっと不器用なとこは『適当』が癖になってたんだ」
「え? 癖?」
「どうやら、奥さんの様子を見よう見まねで覚えようとした結果らしい。ああ、奥さんが悪いんじゃない。子どもってそういうもんだ。うちの息子も昔似たようなことはしてた」
「……そうだったんですね」
お母さんは、ちょっと泣きながら私をギュッと抱っこしてくれた。
「……お母さん?」
「ごめんね。勝手に決めつけて……これからは、ゆっくり教えてあげるから」
「! ほんと!?」
おうちで料理ができるんだと思ったら、すっごくうれしくなった! 少しのせつめいだけなのに、やっぱり桜乃ちゃんのおじいさんはすごい。いろんな人に、頼りにされているからだろうけど。
「だから、練習の場所としてうちのとこも使わさせてくれ。孫らもいるから一人じゃない」
「……お願いします」
「わーい!」
私は本当にうれしいのに、またたくさん泣いちゃった……。
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