103 / 128
第103話 説得材料
しおりを挟む
私が不器用だった、本当の理由がわかった。
お母さんが、いつも『カン』であちこちの機械をじょーずに使っていたから……私も出来ると思い込んで。
そうしたら、あんな風に『ばーん』ってなっちゃったわけで……だから、不器用だと思ったの。
(……でも、ちがった)
桜乃ちゃんが……桜乃ちゃんといっしょにいたあの綺麗なお姉さん。美濃さんって、黒い髪が綺麗なお姉さんのおかげで、ちがってたことがわかったの。
うれしくて、いっしょにつくっていいって言われた時は……泣いちゃった。すっごくうれしかったんだもん。今まで、ごはんつくっちゃだめって言われてたから。
だから、バターづくりもとっても楽しかった。
バターミルクもおいしかった。
もちもちパンといっしょに持って帰っていいって言われて……それと、桜乃ちゃんのおじいさんもいっしょに来てくれたの。
「ちょいと、夏樹ちゃんのお母さんに説明をしようと思ってな?」
「せつめい……ですか?」
おみやげは重いからって、おじいさんが持ってくれて……おうちに着くと、お母さんがちょうどポストからお手紙か何かを取っていたわ。
「おう。伊澤さん」
「あら、水城さん! 夏樹を送ってくださったんですか?」
「それもあるが、ちょいとお願いごとに来たんだよ」
「……お願い? ですか?」
お母さんもだけど、私も教えてもらってないからわからない。
おじいさんは、にっと笑顔になってから私の頭を軽くたたいてくれた。
「夏樹ちゃんの、ちょっと不器用なとこは『適当』が癖になってたんだ」
「え? 癖?」
「どうやら、奥さんの様子を見よう見まねで覚えようとした結果らしい。ああ、奥さんが悪いんじゃない。子どもってそういうもんだ。うちの息子も昔似たようなことはしてた」
「……そうだったんですね」
お母さんは、ちょっと泣きながら私をギュッと抱っこしてくれた。
「……お母さん?」
「ごめんね。勝手に決めつけて……これからは、ゆっくり教えてあげるから」
「! ほんと!?」
おうちで料理ができるんだと思ったら、すっごくうれしくなった! 少しのせつめいだけなのに、やっぱり桜乃ちゃんのおじいさんはすごい。いろんな人に、頼りにされているからだろうけど。
「だから、練習の場所としてうちのとこも使わさせてくれ。孫らもいるから一人じゃない」
「……お願いします」
「わーい!」
私は本当にうれしいのに、またたくさん泣いちゃった……。
お母さんが、いつも『カン』であちこちの機械をじょーずに使っていたから……私も出来ると思い込んで。
そうしたら、あんな風に『ばーん』ってなっちゃったわけで……だから、不器用だと思ったの。
(……でも、ちがった)
桜乃ちゃんが……桜乃ちゃんといっしょにいたあの綺麗なお姉さん。美濃さんって、黒い髪が綺麗なお姉さんのおかげで、ちがってたことがわかったの。
うれしくて、いっしょにつくっていいって言われた時は……泣いちゃった。すっごくうれしかったんだもん。今まで、ごはんつくっちゃだめって言われてたから。
だから、バターづくりもとっても楽しかった。
バターミルクもおいしかった。
もちもちパンといっしょに持って帰っていいって言われて……それと、桜乃ちゃんのおじいさんもいっしょに来てくれたの。
「ちょいと、夏樹ちゃんのお母さんに説明をしようと思ってな?」
「せつめい……ですか?」
おみやげは重いからって、おじいさんが持ってくれて……おうちに着くと、お母さんがちょうどポストからお手紙か何かを取っていたわ。
「おう。伊澤さん」
「あら、水城さん! 夏樹を送ってくださったんですか?」
「それもあるが、ちょいとお願いごとに来たんだよ」
「……お願い? ですか?」
お母さんもだけど、私も教えてもらってないからわからない。
おじいさんは、にっと笑顔になってから私の頭を軽くたたいてくれた。
「夏樹ちゃんの、ちょっと不器用なとこは『適当』が癖になってたんだ」
「え? 癖?」
「どうやら、奥さんの様子を見よう見まねで覚えようとした結果らしい。ああ、奥さんが悪いんじゃない。子どもってそういうもんだ。うちの息子も昔似たようなことはしてた」
「……そうだったんですね」
お母さんは、ちょっと泣きながら私をギュッと抱っこしてくれた。
「……お母さん?」
「ごめんね。勝手に決めつけて……これからは、ゆっくり教えてあげるから」
「! ほんと!?」
おうちで料理ができるんだと思ったら、すっごくうれしくなった! 少しのせつめいだけなのに、やっぱり桜乃ちゃんのおじいさんはすごい。いろんな人に、頼りにされているからだろうけど。
「だから、練習の場所としてうちのとこも使わさせてくれ。孫らもいるから一人じゃない」
「……お願いします」
「わーい!」
私は本当にうれしいのに、またたくさん泣いちゃった……。
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
大阪の小料理屋「とりかい」には豆腐小僧が棲みついている
山いい奈
キャラ文芸
男尊女卑な板長の料亭に勤める亜沙。数年下積みを長くがんばっていたが、ようやくお父さんが経営する小料理屋「とりかい」に入ることが許された。
そんなとき、亜沙は神社で豆腐小僧と出会う。
この豆腐小僧、亜沙のお父さんに恩があり、ずっと探していたというのだ。
亜沙たちは豆腐小僧を「ふうと」と名付け、「とりかい」で使うお豆腐を作ってもらうことになった。
そして亜沙とふうとが「とりかい」に入ると、あやかし絡みのトラブルが巻き起こるのだった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~
七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。
冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??
八百万の学校 其の参
浅井 ことは
キャラ文芸
書籍化作品✨神様の学校 八百万ご指南いたします✨の旧題、八百万(かみさま)の学校。参となります。
十七代当主となった翔平と勝手に双子設定された火之迦具土神と祖父母と一緒に暮らしながら、やっと大学生になったのにも関わらず、大国主命や八意永琳の連れてくる癖のある神様たちに四苦八苦。
生徒として現代のことを教える
果たして今度は如何に──
ドタバタほのぼのコメディとなります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる