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第92話 酵母を学ぼう①

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「こーぼってなーに?」


 わかんなくて美濃みのさんに聞いたけど、美濃さんは首をたてに振って……ままごとキッチンからボウルを持ってきたわ。


『これが、酵母こうぼのひとつなのじゃ』


 中に入ってたのは……生地?

 だけど、真っ茶色でぶつぶつが多くて……いつもの生地じゃないわ。これを何に使うんだろう?


「あれ? 酵母って、イーストとかですよね?」

 あたしや駿しゅんがジーッとのぞいてたら、みおちゃんがはいって手をあげたわ。

 質問の意味は、あたしもちょっとだけわかった。イーストはつぶつぶの粉で、パン作りには大事な材料っていうくらいだけど。


『今のも間違いではないぞ? 一般的にパンの発酵を促すのはイースト菌を意味する。じゃが、イーストと呼ばれるものは幾つか存在する上に用途も違うのじゃ。この酵母は粉と湯で作るものじゃよ』

「「よーと?」」

「使い方ね。言われてみれば、レーズン種とか聞きますもんね」


 むずかしいお話だったけど、すぐにひっきようぐとノートを持って、あたしと駿はメモを書いた。ここからが、じゆうけんきゅうのスタートなんだもん!


『そうじゃ。これはその酵母のひとつで、文字通りじゃが『湯種ゆだね』と言うものじゃよ』

「「ゆだね?」」

「ぼこぼこに沸かした湯に、計った粉を混ぜて作るもんだ。使うのは、たいていフランスパン……細長い固いパンだな?」

「「うんうん」」


 おとうさんが作る固いパンはわかるわ。けど、バリバリ食べるときに、バターたっぷりつけるのがあたしはすきー!

 美濃さんは、さっそくだが……って、あたしたちをコンロの前に立つように言ったの。


『どれくらい湯を沸かすか、あちきが術で見せてやろう』


 澪ちゃんがおっきなおなべに水をたっぷり入れてくれて……美濃さんが、手を前に出したら、水がゴボゴボって動いた!? それにお湯がわいたように、湯気も出てきた!!


「だ、大丈夫!?」

『じゃが、湯種にはこれくらいの温度でなくてはいかん』

「熱いのが、かなめだからなあ?」


 おじいちゃんはボウルに粉を入れてたんだけど、白いのじゃなくてぜんりゅーふんだったわ。あれにお湯を入れたら、べちゃべちゃしないかなあ?

 お湯ができたら、美濃さんは魔法でおなべを動かして、お湯をゆっくりボウルの中に入れた。おじいちゃんは、木ベラでこねこねしていく。べちゃべちゃにはならなくて、おっきなお団子のようになったわ!


『これをまとめてラップにくるみ……冷めたら、冷蔵庫でしばらく寝かせれば、生地に混ぜられるのじゃよ』

「「しょーなんだ」」

「けど、匂いすごいですね……」

「作りたてはなあ?」


 さっきとは違うくっちゃい匂いに、あたしや駿は鼻をつまんだわ。でも、こーぼは大事なのね!
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