【完結】パンでパンでポン!!〜付喪神と作る美味しいパンたち〜

櫛田こころ

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第63話 祖父の見守り

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 孫の将来の夢。

 息子の後継ぎになってくれるのは嬉しかったが。

 まさか、俺が一度は手放してしまった……蔵の大事なもんを。

 また……付喪神の美濃みのと会わせてくれただけでなく、一緒にパンを作れるだなんて思わず。

 俺や、幼馴染みのいつきさんの不調まで治すパンを作れたんだ。

 孫の桜乃さくのは凄い。

 俺が、親父の言いつけで……美濃から離れなきゃなんなかったのを。

 いとも簡単に、壁を飛び越えて……何十年経ったが、美濃とまたパンが作れている。

 その美濃と……大人になっても、一緒にパンを作りたいって夢が出来たって言ったんだ。あいつの幼馴染みである、駿しゅんのように変わることは出来たとしても。

 ずっとずっと、美濃とパンを作りたいって言ったんだ。

 俺には……出来なかったのを、しっかりした言葉で。

 まだ……八歳くらいのガキだがぜ? 俺が情けなくなってきた。

 だけど。


「美濃さん、ソースの色すごいね?」

『パンと一緒であれば、濃い目の味付けが良い。カレーパンを覚えているかえ? しっかりした味じゃったろう?』

「うん! そっか~」


 傍から見てりゃ、姉妹の様に見えなくもないが……美濃は人間じゃない。神……とも、正確には違うらしいが、妖怪ともちぃっと違うみてぇだ。

 そんな姿も変わんねぇ美人さんが、最初からパン作りを可能にしていた。昔は俺もガキだったから……全部がもの珍しくて仕方なかったが。

 それなりにジジイになった今。

『なんでだ?』と思うことが増えた。

 俺と作ってた時には、ステータスとかスキルがちんぷんかんぷんでよくわからなかったが。

 家族が出来て、娯楽も色々増えた今となっちゃ。

 なんで、ゲームが乏しい時代だったのに、既に出来てたんだ?

 色々疑問は出てくるが、美濃だから……となると納得してしまう。

 それに……俺はもう、美濃の契約者じゃない。

 今は……桜乃がままごとキッチンの所有者だ。

 ずっといたいと願ったのは……桜乃だからな?

 俺は、いつかくたばってあの世に行くまで……手伝いをしてやるまでだ。

 それくらいなら……ずっと独りにさせてしまった、美濃への罪滅ぼしにはいくらかなるだろう。

 んでもって、自分で提案してなんだが……焼きそばパン用の濃いめの焼きそばの香りが、腹を異様に刺激してきてやべぇ。

 ドウコンを確認して、そろそろコッペパンの焼きに入るか?

 今の時代から使える発酵用の機械。

 息子に継がせた店のより、桜乃がキッチンの契約者だから……かなり可愛い外見だが。

 機能は店のと遜色なく使いやすい。

 桜乃が三代目になったら……ここはどうすんだろうなあ?

 一緒にって……まさか、店をキッチンにしねぇとは思うが。
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