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第58話 おとなのじじょー

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 美濃みのさんをひとりにしない。

 あたしは、そう決めた。

 美濃さんは大丈夫だって言ってくれたけど。

 おとなになったら、たしかに変わるかもって言われたけど。

 あたしは、そんなことはしたくない!

 美濃さんと……みんなとずっと一緒にパンを作っていきたい!!

 けど、どうしておとなになると……一緒にいられないんだろう?

 違う日に、ちょっとみおちゃんにそーだんしてもらったわ。


「……一緒にいたいけど、出来ないかもか」


 学校が終わって、澪ちゃんちのおとーふ屋さん『源』に行ったら……澪ちゃんがいたから、聞いてみたの。


「むずかしくないよね?」

「あ、うん。一緒にいるのわね? けど……大人になったら、難しいこともいっぱい出てくるわ」

「? そうなの?」


 おとなって、なんでも出来る人たちの事だと思ってたんだけど。澪ちゃんはにっこりじゃないけど……ちょっと笑ったわ。


「大人の事情って言葉はわかるかしら?」

「おとなのじじょー?」

「うん。大人はね。場合によっては、思い通りに出来ないことがあるの。私も豆腐屋を継ぐって話を、父さんにした時は……最初は反対されたりもしたわ。女が継ぐべきじゃないって」

「……おじさんが?」


 いっつもやさしくて、とーふのつくねくれるおじさんが?

 反対するんだ……? 女の人が、一緒におとーふ作っちゃダメなの? 今は一緒なのに?


「いっぱいいっぱい宿題みたいなものもあるの。それをひとつずつ……頑張ってクリアしたおかげで、今があるわ。今は反対してくれていないの」

「……その宿題が、おとなのじじょー?」

「それもあるわ。だから……段蔵だんぞうさんが美濃さんから離れたのも、そう言う理由があるはずよ?」

「……うん」


 ちょっとだけ怖いけど……おじいちゃんは優しい。

 パンもおいしく作れて……今はまた美濃さんと一緒だ。

 美濃さんともっと一緒にいるようにしたいけど……おとなのじじょーって、大変なんだ?

 澪ちゃんも、大変だったっていうくらいなんだもん。

 あたしの……わがままだけで、走っちゃダメ。

 澪ちゃんとのお話が終わったら……次は、おじいちゃん!

 ダッシュして帰ろうとしたら……家の近くで駿しゅんに会ったわ。

 ちょっと……泣いていたけど!?


「……さっちゃん?」

「駿! どうしたの!?」

「……ちょっと転んだ」


 よーく見たら、駿のおひざから血がいっぱい!?

 手をつかんで、あたしも転ばないように気をつけて……駿をゆっくり引っ張って、あたしのお家じゃなくておじいちゃん家に行った。

 おじいちゃん家に行けば、ちょうどおじいちゃんが出てくるところだったわ。


「おかえり。……駿、どした? その怪我」

「転んだみたいなの」

「手当してやっから。桜乃さくの、駿と風呂行け。水でゆっくり傷口洗ってやんな」

「うん」

「……ありがとうございます」


 で、駿がちょっと痛がったけど……砂とかをちゃんと洗ったわ。
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