【完結】パンでパンでポン！！〜付喪神と作る美味しいパンたち〜

第54話 おいし過ぎて

「……なくなっちゃった」


　おいしかったから……すぐに食べちゃった。

　今日まで作ったパンの中で……一番おいしかった！！


「おいしかったです」

「本当に！　美味しいですよ！！」


　駿しゅんに澪みおちゃんも首を縦に振ったわ。

　それくらい……おいしいのは本当。

　サクサク、カリカリで。

　パンはふんわり、ちょっともちっとしてて。

　中のちょっぴり辛いカレーと一緒だともっとおいしくて！！

　もっと食べたいわ！！

　美濃みのさんを見て、お願いしようとしたら……美濃さんが手をぽんぽんたたいて、ちゃぶ台の上にカレーパンのお皿を出してくれた！！


『おかわりは、作り手の醍醐味じゃ』

「「「わーい！」」」

「まあ、もう一個だけなら……」


　おじいちゃんにも良いって言ってもらえたから。

　一緒に出してくれた紙をまいて……またがぶり！

　ちょっとあったかいくらいだったけど……やっぱりおいしい！！

　カレーはご飯と一緒が好きだったけど……こっちが好きになっちゃいそう！！


「おいしーね？」

「うん！」


　駿に言われて、あたしも首を縦に振った。

　本当においしいけど、一緒に作ったジュースも呑むと……もっとおいしい！！　甘くてすっぱくて……カレーパンと一緒だとおいしい！！

　ジュースも駿とおかわりしたわ。


「いや～、カレーパンをこんなにも食べれるだなんて夢みたいですね！　うちの店だとお惣菜で麻婆カレーがあるだけですし」


　澪ちゃんも二個目を食べたら、ごちそうさまをしてた。

　マーボーカレーって、どんなだったっけ？　あんまり覚えてないや？


『ほっほ。たまには違う料理も楽しかろう？』

「はい！　勉強になります！　豆腐屋でも、豆腐と油揚げだけじゃやっていけないので……お惣菜とかで工夫したいですし」

『そうじゃな？　臨機応変に、他の知識を取り入れていくのも良い』

「ですね！」


　ちょっと、むずかしいお話だけど……おとーふ屋さんも大変なんだって言うのはわかったわ。

　澪ちゃんは、しょーらいの夢がおとーふ屋さんのてんちょーさんなんだもん。いっぱいがんばっているのは、あたしも知ってる。

　あたしも、しょーらいのためにがんばるわ！

　まだあるカレーパンは、おみやげに出来るようにみんなで紙につつんで……袋に入れたら、駿と澪ちゃんは帰っていくんだけど。

　駿が、ちょっとガッカリしてたのよね？


「駿？　どうかした？」

「……しばらく、野球の練習が多くなるから。ここに来れない」

「……そっか」


　駿のお家は焼き鳥屋さんだけど。

　駿の夢はやきゅうせんしゅだ。

　がんばらなきゃいけないし……一緒に作るのは楽しいけど、それはがまんしなきゃだ。


「また差し入れしてやっから、頑張れよ？」

「……ありがとうございます」


　おじいちゃんがそう言ってくれたからか、駿はちょっとだけ笑顔になれた。

　そうして、澪ちゃんと一緒に帰っていって……あたしたちは、カレーパンをお家に持ってったんだけど。


「……親父特製のカレーフィリングが、また食えるとは！！」


　おとうさんが、今日はすっごく喜んでた。

　でも、食べたらジタバタしてた後に……またガッカリして。

　見てて面白いとは思ったけど、あたしはおかあさんにカレーパンを渡そうと思ったら。

　宙太そらたにおっぱいを飲ませていたから、ちょっとごめんねと言われたの。


「終わってから食べるわ」

「……今はダメ？」

「そうね。宙太に悪いおっぱいをあげちゃうことになるの」


　良い悪いって……色々あるんだって、ちょっとべんきょうになったわ。

　宙太の顔は見えないけど、おいしそうに飲んでた。おっきくなったら、宙太ともパン食べれるよね？