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第51話 魔法じゃない魔法

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 ぐつぐつ煮ているお鍋の火を止めて、おじいちゃんが『茶色の粉』を入れちゃって。

 おたまでまぜまぜしたら……どんどん知ってる『カレー』になっていくの!!

 食べれる!? って聞こうとしたら、おじいちゃんは『まだだ』と首を横に振った。


「馴染ませないとなあ? このままだと、ほとんど味しねぇぞ?」

「なじむ?」

「入れたばっかだし、美味くもなんともねぇ」

「そうなんだ?」


 お料理って、やっぱり覚えることがいっぱいあるんだ?

 カキカキしてる音が聞こえてきたんだけど……みおちゃんがメモしてた音だったの。


「……市販のルゥじゃないカレー作りがこんな感じ」


 おとーふ屋さんで、カレーって作るのかな?

 あ、でもおとーふの……カレー味って、何かあった気がする! すぐに思い出せないけど。


「あくまで一例だ。本場のインド料理に比べたら、我流だしよ」

「それでも、作れる段蔵だんぞうさんはすごいです!」

「……全部、美濃みのに仕込まれた」

『ほほほ』


 おじいちゃんもすごいけど……美濃さんもすごぉい!!

 なんでも出来ちゃうんだ!!


「……味付けは、醤油とホールトマトに塩胡椒」


 色々入れてっていくけど……とーめーな水みたいなのはなんだろう??


「おじいちゃん、今入れた水みたいなのなーに?」

「これか? このまま冷ましても……パンには入れられねぇ。魔法の水だ」

「「まほう!?」」

「……って。美濃と違うぞ? 食材だ食材」

「「えー」」


 駿しゅんと驚いていたんだけど……本当の魔法じゃないのが残念。

 でも、おいしくなるための魔法みたいなのは気になるなあ?


「……段蔵さん。その魔法って」

「あ? 澪ちゃんは知らんか?」

「うちのお父さんなら知っているかもですが」


 あたしと駿は、美濃さんに呼ばれたから……生地のパンチを練習することになったわ。

 子どもだけだと、おっきな生地をお洗濯のようにたたんでいくのが大変。


「「うーんしょ!」」


 駿と別々のボウルの中身をたたんで。

 またドウコンの中に入れて……これをまた一時間待つらしい。

 その間も、おじいちゃんと澪ちゃんはカレーのお鍋の前でいろいろお話ししていた。


『さて。今回はまだまだ時間があるえ? パン粉を仕込んでみよう』

「「パン粉を?」」

『どう作るか知らぬじゃろう?』

「うん」

「はい」

『今回はそのうちのひとつじゃ』


 で、また用意してくれたのは……お野菜をちっちゃくしたチョッパー。

 あと……他には、前に作った丸いパン?


「これ使うの?」

『では、桜乃さくの? パン粉とはどうじゃったか?』

「……粉みたいなパン?」

『であれば、わかるであろう? このパンはあえて……固いものじゃ。柔らかいものもあるが、カレーパンには固いものもある』

「……あの。コロッケ作った時は、用意してくれましたよね?」

『そうじゃ。だが、今回は時間があるので手作りするのじゃ』

「「はーい」」


 作り方は、固いパンをちぎって……チョッパーに入れて、あとはひっぱるだけ。

 あっというまに……パン粉が!!


『魔法もいいが、知らないままの知識をそのままにしておくのも良くない。それはわかるかえ? わからない勉強を苦手なままにするのと同じじゃ』

「「……はーい」」


 あたしも駿も、算数苦手だから。

 今日のために……昨日おじいちゃんに見てもらったんだよね? パン作り……おあずけになるくらい。
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