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第50話 魔法じゃない機材

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 くつくつ、ぐつぐつ。

 お野菜が出来て、美濃みのさんがいためて……あたしと駿しゅんはおじいちゃんに言われながら、生地をこねこねして。

 時間短縮クイックをするかと思ったら、せっかくだからと『どぅ……なんちゃら』を使うんだって。

 美濃さんが手をぱんぱん叩いたら……ピンク色の窓がある冷蔵庫みたいなのが出てきたの。


「これなぁに?」

「これがドゥコンディショナー……涼太りょうたとかだと『ドウコン』って言うな?」

「「どうこん??」」

「どんな機材ですか?」


 みおちゃんも知らないみたいだわ。

 おとーふ屋さんだと使わないのかなあ?


「あー。簡単にいや、冷蔵庫の逆だな? あったかくして生地を発酵させてくれる機材。生地をそのまま入れるだけじゃなく……成形、形作ってからも発酵をやってくれんだ。常温だと湿度とかが左右されがちで難しい」

「「ん~??」」

『ほっほ。つまりは、時間短縮クイックも良いが……他の道具で発酵をすることが出来るものじゃ』

「今のパン屋さんらしい道具ですね? 冷やすことは出来るんですか?」

「出来るな? 特にクロワッサン生地は基本的に冷やさないとダメになる」

「クロワッサン! 大好きです!!」


 おとなのお話……むずかしいわ。

 澪ちゃんはすごいなあ? おとーふ屋さんでもわかることはわかるんだもん。


「……おべんきょーがんばる」

「……僕も」


 駿といっしょに、ガッツポーズがして……美濃さんがあたしたちがこねこねした生地のボウルを、上の扉に入れちゃう。


「……これだけ?」

時間短縮クイックしても良いが、今日はカレーの部分もあるからのお? じっくりゆっくり発酵させるのも乙なのじゃ』

「じっくりゆっくり?」

「普通のパン作りだと、この時間がめちゃくちゃかかるぞ」

段蔵だんぞうさん、どれくらいですか?」

「ガス抜きの工程も合わせりゃ……二時間だな?」

「「「に!?」」」


 あれ? けど……美濃さんとパンパンしてた時は、ぷくーってふくらんだのに?


桜乃さくのや。普通は魔法のようなことは出来ぬ。それはわかるか?』

「? うん」


 そう言えば、お家だと魔法のようなことは出来ないんだったわ。思い出すと、あたしは『うん』と首を縦に振った。


『将来、涼太らと共に仕事をしたいのであれば……少しずつじゃが、必要以上に魔法を使わぬことも覚えていこうぞ? 学校に行くのとは違うからなあ?』

「……そうなんだ」


 おとうさんがパンを作る時は、すぐに出来たのはほとんどなかった。サンドイッチとかのパンは、食パンがあるからすぐ出来てたけど。


『澪もわかるじゃろ?』

「そうですね? 豆腐が固まるのが早くなれば……って思っても難しいですし。早朝起きは、パン屋さんと似た感じです」

「澪ちゃん朝はやいの?」

「うん。桜乃ちゃんのお父さん達と似たくらいかなあ?」


 おかあさんは、宙太そらたが生まれてからは……起きる時は横にいるけど。

 その前は……いなかったわ。あたしは、おばあちゃんと一緒に寝てた。


『であるから、生地の仕込みの空き時間……カレーを仕上げようぞ?』

「「はーい」」

「スパイスもとりあえず出来た」


 っておじいちゃんが持ってきた、小さなボウルは……あたしも知ってる、『茶色の粉』だったわ!
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