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第34話 作りたいが
しおりを挟む「……伊澤の嬢ちゃんにか」
学校が終わって、おじいちゃんちで宿題をしてるときに。
すぐに、おじいちゃんになっちゃんのことを言ったの。
「……ダメ?」
「ダメっつーか」
おじいちゃんはうーんって、首をかたむけのよね?
何かあったっけ?
「?」
「桜乃、お前覚えてないか?」
「何が?」
「……その嬢ちゃん。料理がめちゃくちゃ下手だって言ってなかったか?」
「……あ」
思い出したわ。
ちょっとだけ、学校でぎょーじへのお菓子作りをしたの。火を使わずに、レンジだから大丈夫と思ってたら。
なっちゃんとあたしの班は……なっちゃんがレンジに材料を入れたら、レンジが壊れたのよね!? なっちゃんは泣かなかったけど。
『……お家でもこうなの』
って言ってたわ! それをおじいちゃんに話したことも思い出した。美濃さんは、つくもがみさまだけど……ままごとキッチンだから、壊れたら大変!!
「だろ? 不器用な子も世の中には居るんだ。美濃が壊れたら大変なのは桜乃だ」
「……うん」
なっちゃん、ごめん!
せめて……なっちゃんが好きそうなパンは、お休みの日に作って持って行こう。おじいちゃんに言うと、それは大丈夫と言ってくれたわ。
『ほほほ。今日はどうするえ?』
宿題も終わって、蔵に行けば。
美濃さんはお茶じゃなくて……こーひーを飲んでた。牛乳無しで、真っ黒だからわかるわ。
「……美濃さん、おいしい?」
『桜乃も、大きくなれば飲めるはずじゃ』
「……おとな?」
『早くて……高校生くらいじゃの?』
「ふーん」
真っ黒がおいしい……まだよくわかんないや。
うん、って首を縦に振ると……美濃さんは手をたたいたわ。
『そうじゃな。今日はコーヒーに合うものにしようぞ。桜乃にはホットミルクで良いが』
「? なーに?」
『シナモンロールと言うパンじゃ』
「しなもん?」
「味は面白いが、たしかにコーヒーに合うな」
おじいちゃんも好きなのか、うれしそうだったわ。
「どんなパンなの?」
「桜乃。ぐるぐるになってるパンあるだろ? 涼太が作るので」
「ぐるぐる?」
あったっけ? といっしょーけんめーに思い出してみたけど。
甘いので、ぐるぐるしているパンがあったのが思い出せた!
けど……あれって。
『どうしたえ?』
「……あれ、食べたことあるけど。あんまり良い匂いしない」
『ふむ。シナモンは独特の香りと味わいじゃからの?』
「……まあ、小学生だとな?」
『一度作ってみようぞ? 食わず嫌いは早いうちに治す方が良い』
「……はーい」
そうね。美濃さんと作るパンは……みんなおいしいもん。
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