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第4話 おじいちゃんのししょー

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「お? いたいた……は?」


 扉を開けてくれたのはおじいちゃんだったけど。蔵の中が電気をつけたように、明るいのにびっくりしたみたい。

 で、美濃みのさんを見ると……もっとびっくりしたようだわ。お口あんぐりしてたから。


『ほっほ。久しいなあ、段蔵だんぞう?』

「お……おま!? …………………………美濃、か?」

『ヒトゆえに、老けたのお?』

「…………その言い方、美濃だな」


 扉を閉めて、おじいちゃんは中に入ってきた。

 おじいちゃんだけど、お仕事はしてるからピンとしてて……美濃さんと並ぶと、おじいちゃんの方が背が高かった。


「……おじいちゃん、美濃さん知ってるの?」


 あたしが聞くと、おじいちゃんは困ったように笑いながら首をこくんとしてくれた。


「ああ。美濃はじいちゃんの大事な師匠だ」

「……ししょー?」

「パン作りを最初に習ったのが、この神様だ」

『ほっほ』

「……え?」


 美濃さん、パンが作れるの?

 神様だから? 神様だからなの?

 びっくりしたけど……いっぱい聞きたいことができたわ!!

 だから、聞こうと思ったんだけど。


桜乃さくの。お前、お母さんに『大嫌い』って言っちゃったんだろ? お母さん泣いてだぞ?」

「……あ」


 そうだった。ごめんなさいって言うの決めたけど。

 おかあさんが……泣いているなんて、考えてなかった。

 やっぱり……言っちゃいけなかったんだ。


『段蔵。桜乃は大層反省しておる。弟を母御ははごに取られたと思ってしまうのは……幼い子どもなら、考えてしまうのも無理ない。そちならわかるであろう?』

「……そうだな」


 美濃さんが、おじいちゃんに説明してくれた。

 おこっていない。

 おじいちゃんも困ってはいたけど、おこってなかった。

 で、あたしの頭をぽんぽんしてくれた。


「……おじいちゃん?」

「お母さんも、言い過ぎたって言ってたぞ? 桜乃も、ごめんなさい言ってから……自分の言いたいことちゃんと言いな?」

「……うん」


 いつもの優しいおじいちゃんだ。

 だから……あたしもうんと首をこくりとした。

 美濃さんはまた、『ほっほ』と笑ってたけど。


『母御がかかりきりなら……あちきが桜乃の相手をしようぞ?』

「……おい、美濃」

『そちの時のように……パン作りを教えてしんぜよう』

「パン!?」


 あたしはおとうさんの作り方を見ていただけだけど。

 自分で……パンが作れるかもしれない?

 すっごく……すっごくうれしい!!

 おじいちゃんは、おいおいって言ってるけど、気にしちゃダメ!!


『そうじゃ。美味いパン作りを教えてやろうぞ?』

「やった!!」

「美濃……桜乃はまだ子どもだぞ?」

『そちにも同じ頃合いに教えたであろう?』

「う」

「おじいちゃん、やりたい!!」


 お店のお手伝いが……出来ることがいっぱいあれば。

 おとうさんもだけど、おかあさんにも、もっと手伝えると思うから!!

 ジーっと、おじいちゃんを見てたら……おじいちゃんは『わかった』って言ってくれたわ!!


「ただし、慣れるまではじいちゃんも一緒だ」

「うん!」


 あたしも……パンが作れるんだ!!
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