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第一章
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来てしまった。
舞台袖に僕はピンマイクをつけた状態でスタンバっていた。
「バイオレットさん、大丈夫ですか?」
スタッフの言葉に僕は頷く。
本当にどうしてこうなってしまったのだろう。
今日は友達と遊びに来たはずなのに仕事だなんて。
こうなったら手当踏んどってやるから。
僕は決意を胸に闘志を燃やす。
「それでは今回の特別ゲスト、数々の功績を貰いながらもメディアとかでは姿を一切見せなかった幻の天才、バイオレットさんです。」
色々盛りすぎている言葉に僕は内心で苦笑しながらも、表では上品な笑顔を心がける。
「ご紹介いただきました、『技術者』のバイオレットです。」
「女性の方だったんですね。」
相手の言葉に僕は笑みを浮かべる。
「バイオレットさんの紹介をしたいところですが、あまりにも功績が凄すぎるので、後ろの画面で流させていただきますね。
さて、バイオレットさんさっそくなるんですけど、公の場に出られた感想などありますか?」
「そうですね、わたしとしてはただの『技術者』の一人でしかないので、このような公の場で出させていただくのは正直荷が重い所があります。
かなり場違い緊張と言いますか今スグ逃げ出したいのが正直なところです。」
「えー、全然そういうふうには見えませんよ。」
「かなり心臓がバクバクいっていますよ?」
「見えませんって。」
カラカラと笑う彼女に僕は何とか笑顔を保つ。
「さて、せっかくの幻のバイオレットさんがお越しいただいたので、色々お話を伺いたいのですけど。」
「なんか珍獣扱いですね。」
「珍獣でしょう?」
「ええ、わたしは平々凡々の一般人ですよ?」
「またまた~。」
という風にトークから始まり、司会者からのいくつかの質問、そして、とうとう客席からの質問タイムになってしまった。
正直、司会者とのトーク、質問、ならばあらかじめタブーな話題とか決められるのだが、客席からの質問は何が来るか分からないのでひやひやする。
「えっと、それじゃ、最初はそこのオレンジの帽子をかぶった人。」
「はじめまして、バイオレットさん。」
「はじめまして。」
「いつも、貴女様の作品を拝見させていただいております。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
「えっと、バイオレットさんが本当に初めて作った作品は何ですか?」
「わたしが作ったのですね…。」
僕は色々思い出し、そして、良子さんたちとの出会いに繋がる、それを思い出す。
「わたしが作ったのはオルゴールですね。」
「オルゴールですか?」
首を傾げる質問者に僕は微笑をたたえる。
「はい、わたしは無能力者と判断され、どうにかして自分でも自衛できるものがないのかと多くのアイテムを買いあさりました。
だけど、その道具もそれぞれの属性でしか発動しなくて、わたしはそれの違いを知りたかったので、たくさん分解しました。
ある時、それぞれの属性が発動するコードを見つけました、そこから、そのコードを使い、一つの箱でそれぞれの属性で反応して音を流すオルゴールを作り上げたのがわたしの原点だと思います。」
「凄いですね、そう簡単に理解できるものなんですか?」
司会者の言葉に僕は首をゆるゆると振る。
「簡単ではありませんね、理解するために家じゅうの物を分解していたので。
母たちにはかなり迷惑をかけましたね、家じゅうにあるものを分解しては組み立ててたんですから。」
「それは相当な数なんですか?」
「目覚ましに始まり、テレビ、トースター、など、冷蔵庫、洗濯機も分解しようとしたんですが、流石に怒られましたね。」
「一般家庭用品とかあまり関係ないと思うんですけど。」
「そうでもありませんよ、それらの仕組みを知る事で、わたしが理想とするものの原型が生まれます、あの時の行動は全く無駄じゃなかったと思います。」
「それはお母さまたちも報われますね。」
「どうなんでしょうね、今でもかなり迷惑をかけていますので。」
僕は渋面を浮かべる母さんを思い浮かべ苦笑する。
「オレンジの帽子さんこれで大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。」
「えっと、それじゃ…。」
あと数名質問を受け、何とか、僕でも答えられる範囲の質問ばかりだった。
僕は質問を受けならずっと気になる視線が一対あった。
それは憎悪の視線。
異質なそれに僕は気づくながらも無視をするしかなかった。
ものすごく悲しくなった。
だって、その視線を向けているのが林くんだったから…。
バイオレットを憎んでいる事を知っていたけど、ここまでとは思ってもみなかった。
舞台袖に僕はピンマイクをつけた状態でスタンバっていた。
「バイオレットさん、大丈夫ですか?」
スタッフの言葉に僕は頷く。
本当にどうしてこうなってしまったのだろう。
今日は友達と遊びに来たはずなのに仕事だなんて。
こうなったら手当踏んどってやるから。
僕は決意を胸に闘志を燃やす。
「それでは今回の特別ゲスト、数々の功績を貰いながらもメディアとかでは姿を一切見せなかった幻の天才、バイオレットさんです。」
色々盛りすぎている言葉に僕は内心で苦笑しながらも、表では上品な笑顔を心がける。
「ご紹介いただきました、『技術者』のバイオレットです。」
「女性の方だったんですね。」
相手の言葉に僕は笑みを浮かべる。
「バイオレットさんの紹介をしたいところですが、あまりにも功績が凄すぎるので、後ろの画面で流させていただきますね。
さて、バイオレットさんさっそくなるんですけど、公の場に出られた感想などありますか?」
「そうですね、わたしとしてはただの『技術者』の一人でしかないので、このような公の場で出させていただくのは正直荷が重い所があります。
かなり場違い緊張と言いますか今スグ逃げ出したいのが正直なところです。」
「えー、全然そういうふうには見えませんよ。」
「かなり心臓がバクバクいっていますよ?」
「見えませんって。」
カラカラと笑う彼女に僕は何とか笑顔を保つ。
「さて、せっかくの幻のバイオレットさんがお越しいただいたので、色々お話を伺いたいのですけど。」
「なんか珍獣扱いですね。」
「珍獣でしょう?」
「ええ、わたしは平々凡々の一般人ですよ?」
「またまた~。」
という風にトークから始まり、司会者からのいくつかの質問、そして、とうとう客席からの質問タイムになってしまった。
正直、司会者とのトーク、質問、ならばあらかじめタブーな話題とか決められるのだが、客席からの質問は何が来るか分からないのでひやひやする。
「えっと、それじゃ、最初はそこのオレンジの帽子をかぶった人。」
「はじめまして、バイオレットさん。」
「はじめまして。」
「いつも、貴女様の作品を拝見させていただいております。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
「えっと、バイオレットさんが本当に初めて作った作品は何ですか?」
「わたしが作ったのですね…。」
僕は色々思い出し、そして、良子さんたちとの出会いに繋がる、それを思い出す。
「わたしが作ったのはオルゴールですね。」
「オルゴールですか?」
首を傾げる質問者に僕は微笑をたたえる。
「はい、わたしは無能力者と判断され、どうにかして自分でも自衛できるものがないのかと多くのアイテムを買いあさりました。
だけど、その道具もそれぞれの属性でしか発動しなくて、わたしはそれの違いを知りたかったので、たくさん分解しました。
ある時、それぞれの属性が発動するコードを見つけました、そこから、そのコードを使い、一つの箱でそれぞれの属性で反応して音を流すオルゴールを作り上げたのがわたしの原点だと思います。」
「凄いですね、そう簡単に理解できるものなんですか?」
司会者の言葉に僕は首をゆるゆると振る。
「簡単ではありませんね、理解するために家じゅうの物を分解していたので。
母たちにはかなり迷惑をかけましたね、家じゅうにあるものを分解しては組み立ててたんですから。」
「それは相当な数なんですか?」
「目覚ましに始まり、テレビ、トースター、など、冷蔵庫、洗濯機も分解しようとしたんですが、流石に怒られましたね。」
「一般家庭用品とかあまり関係ないと思うんですけど。」
「そうでもありませんよ、それらの仕組みを知る事で、わたしが理想とするものの原型が生まれます、あの時の行動は全く無駄じゃなかったと思います。」
「それはお母さまたちも報われますね。」
「どうなんでしょうね、今でもかなり迷惑をかけていますので。」
僕は渋面を浮かべる母さんを思い浮かべ苦笑する。
「オレンジの帽子さんこれで大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。」
「えっと、それじゃ…。」
あと数名質問を受け、何とか、僕でも答えられる範囲の質問ばかりだった。
僕は質問を受けならずっと気になる視線が一対あった。
それは憎悪の視線。
異質なそれに僕は気づくながらも無視をするしかなかった。
ものすごく悲しくなった。
だって、その視線を向けているのが林くんだったから…。
バイオレットを憎んでいる事を知っていたけど、ここまでとは思ってもみなかった。
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