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第一章
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しおりを挟む気のせいだと思いたい。積み荷の陰に隠れている二人を見る。…ああ、残念、気のせいなんかじゃなかった。
何してるの?こんなところで。帝都に警報出たでしょうが。ほっとくわけにも行かず近づく。
「何をされているのですか」
「あ。いや。なんだおまえか」
おまえか、じゃない。先日会ったセウジ孫皇子と護衛対象のセリカ王女だった。
「避難警告がでたと聞いていますが。わざわざその現場に来るとは」
「クラーケンでたんだろ?見なくてどうする?!」
興奮気味にセウジ(いらっとしたので呼び捨てだ)が言う。
いや、私だって見たかったよ。そうじゃない。
「護衛はどこですか?」
護衛がつかないなんてありえない。本来近くにいるはずの人たちがいない。目をそらしやがった。
「…まいてきた」
バカじゃないの?!子供だとしても、自分が皇族てことくらいわかってるでしょうよ。
「セリカ王女、館まで戻ります。いつあの結界が破られるか、わかりません」
「で、も。あの、ではセウジも館まで行ってから」
この二人仲がいいのかな。呼び捨てで呼び合うくらいには。
「いやだ、せっかくここまで来れたのに」
時間なくてごねられると、イライラがますますつのるんだけど!
「セリカ様。私の護衛対象はセリカ様のみです。セウジ様にはご自分の護衛が来るでしょう」
「そんな!」
信じられないって見られてるけど、いやセウジ、君もなんでさ。自分でまいてきたくせに。守ってもらって当然って思ってるの?
「時間がありません。!」
破られた!五分五分とは思ってたけど。…これまずくない?
「お、おい。どうした?なんか近づいてないか?あれは何だ?!」
さすがにあれだけのモノが近づいてきたらわかるよね。波も明らかに高くなってるし。それに、なんかぶっ放してきたしー。
「走れますか?」
「ムシするなよ!」
「うるさいですね」
「なっ」
「ディタ」
年下の女の子にいさめられようとしているおばちゃんの私。でもね、ちゃんと言わないと。
「緊急事態にルールに従わず、自分勝手な行動をする人は迷惑です。あなたの護衛だって、今頃本来しなくてもいい行動をしてるし、あせってるでしょう?あなたのせいで」
ははん、そんな睨まれてもききませんよーだ。
「ディタ、言い過ぎです」
「セリカ様、私は今魔力が少ないのです」
はっと息を飲む。彼女は私の魔力がどれだけ多いか、今では知っている。それなのに少ないと聞いて驚かないわけがない。
「はん、これだから魔力に頼る魔法使は」
減らず口のお坊ちゃん、まじむかつく。その魔法使たちに守られてる、ていうのに。
「わかりました。急ぎましょう。セウジ、ここまでです」
急にきっぱりした態度になったので驚いたようだ。
「な、なんでだよ?」
「今、なにかあって頼れるのはディタだけです」
頭の回転早いし、切り替えも早い。即決力ある人は尊敬する。
二人は隠れてきた。そのうちここにいたら、周りにバレるだろう。そしたら、リヴァイアサンは二の次で優先順位はこの二人になる。戦力が落ち、港の守りも手薄になる。自分たちのせいで港を壊されるかもしれないのだ。人々を危険にさらすかもしれないのだ。下手したら命だって。
十二単が6枚になった。どれだけの威力なのー。と、移動した?!
あー十二単結界は動かない。固定されてるから。…しまった、いやあんなに横にずれて動くとは。
いやいや、動くよね、生きているもの、龍だもの。考えてなかったよー、そこまで。だって、今までまっすぐに進んでるとこしか見てなかったから。
ドォーン、と大砲から煙があがった。発射されたのか。大きな水しぶきがあがる。止まったかのように見えたが、ノーダメージだ。騎士たちの動きが大きくなる。あの大砲の弾に強化かけた方がよかったかな。どこまで威力出せるか、結果どうなるかわからない。港をふきとばす、まではいらないから、難しいだろうな。
「セウジ皇子、わかって下さい」
セリカ王女が説得している。かなりふてくされてるな。坊ちゃん余裕だな、おい。
「セリカ様、これを首からかけといて下さい」
念のために作っておいた王女専用のペンダント。万が一なにかあれば結界が作動するようになっている。
「道が壊れてないうちに移動します」
ここだっていつまで無事かわからない。あ、灯台折れた。ドボーン!と大きな水しぶきをあげて、海の中に落ちた。映画のワンシーンみたいだ。
なにあれ!水鉄砲というには物足りない、ビームだよビーム!
「わ、わか」
「ふせて!」
口から何か見えたから慌てて、二人の頭をおさえる。今更不敬罪とか気にしてる場合じゃない。
土埃の中、立ち上がると建物の一部が崩れていた。
そう、ビームでスパっと。水って強いね。世界一固い石のダイヤモンドだって確か水で削ってるんだよね。
あんなの当たったら一発でおさらばじゃんか!どこまで範囲は届くのだろうか。さっきの灯台への攻撃よりは弱いとみた。続けて打つと威力小さくなる?
建物が壊れるとなると、二次災害が起きる。上からも落ちてくるだろうから、瓦礫にも気を付けなくては。ガラスじゃないのが幸いというべきか。
「立てますか?」
「あ、たりまえだ。オレは」
おまえにきいてないよ。二人とも変装のつもりなのか、いつもの服装よりはだいぶ軽い。貴族に見えることには間違いないけど。よくここまで無事たどりついてこれたことよ。もっと市民に見えるように勉強しろー。市民はそんな羽のついた帽子かぶらないからね。今は帽子役に立ってるけど。
地形が若干変わって、わからなくなった。だって建物を目印にして来たからね。
「港を抜ける安全な道をどっちですか」
「そんなの知らない」
「先日お話にきいた避難路はあちらの方角だと思います」
さすがセリカ王女。それに比べてこの坊ちゃんは、さー。
大きなため息がでるってもんだ。
「な、んだよ」
「安全な道も知らないのに護衛まいてくるとか、どんだけなの?と思いました。自分の国なのにしかも帝都。足下じゃないですかー。役に立たないなぁ、て思いました」
「なぜ作文だ?!」
なんとなく。
「オレだってセリカの年になったらわかるようになってるさ」
ならないと思うなぁ。
「なんだその目は。疑ってるな?」
「あー、がんばってくださいねー」
棒読みで返しておく。
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