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第一章

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 轟音が無数の場所から同時に発せられる。

 僕は移動した時にテープレコーダを仕込んでおいた、実際は爆弾とかがよかったが、そんな事をすれば確実に弁償しなくてはならないので、泣く泣く、テープレコーダにした。

「――っ!」

 ひょうちゃんは音がした方向ばかりに注意を払っている。

 作戦通り。

 僕は地面を蹴り、そして、空中に身を投げ出す。

「なっ!」

 真上から僕が降ってきたことにより、ひょうちゃんは天に向かって手のひらを向けた。

 そんなのは想定通り。

 ひょうちゃんが風を僕に向けるが、僕にそれが当たる事はない。

「くそっ!」

 ひょうちゃんは一歩足を引き、氷を出そうとするが、僕の攻撃が早かった。

 僕は勢いを利用して、攻撃を仕掛けるが、残念ながらひょうちゃんはそれを受け止めた。

「……受け止められちゃった。」
「お前は……。」
「でも…。」

 僕は足を振り上げ、ひょうちゃんにそれが当たる。

 力を込めていたおかげで、ひょうちゃんは吹っ飛び、壁に背中を打ち付ける。

「――っく!」

 息を詰める彼が僕を睨んだ瞬間、部屋に明かりが戻る。

「あっ、明かりがついたね。」
「……。」

 気がそれたのか、ひょうちゃんは舌打ちをして、服についた土を払う。

「もういいのかな?」
「ああ。」
「一つ聞いてもいい?」
「何だ?」
「何で闇の属性の力を使わなかったの?あんなにも闇に包まれていたのなら、君ならやりたい放題じゃないか。」
「……。」

 僕の言葉に彼は固まる。

 あっ、これはそこまで考えつかなかったようだ。

「例えば、僕の位置を把握するのだって、楽だったよね。」
「……。」
「あと、僕を拘束するのだって、闇の力を使えばよかったし。」
「……。」
「そもそも、明かりをつけなくとも暗視を使えば見えたよね?」
「……。」

 僕が話せば話すほど唇が固く閉ざされる。

 うん…。

 確かに闇の力はマイナーだからあんまり考えられないかもしれないけど、ひょうちゃんなら応用し放題なんだけどな。

「お前ならどうする。」
「えっと、僕は無能力だから、武器を使うしかないけど。」
「そうじゃない、お前が俺ならばどうするって言っている。」
「君ならば。」

 僕はその言葉につきりと胸を痛める。

 やはり、彼は僕の知る彼じゃないのかもしれない。

 前の彼ならばきっとそんな事を言わなかった。

 昔の僕ならばこの言葉にきっと切り裂かれるような痛みを感じていただろう、だけど、僕だって成長したんだ。

 だから、この痛みだって力に変えられる。

「僕は僕でしかない、そうだね、君はきっと、もっと、僕を観察しなければならなかったね。」
「観察だと?」
「僕が何を持っているか。」
「何を持っているか?」
「能力、道具、戦略、君は見ればきっと気づけただろうからね。」
「お――。」

 ひょうちゃんが何かを言おうとするが、それを割り込むように放送がなる。

 どうやら、この復旧は一時的なものだから早く帰宅を促すアナウンスだった。

「御神くん、帰ろうか。」
「……。」

 ひょうちゃんはむすっとした顔で、そのまま出口に向かって歩き出す。

 僕はその後姿を見つめ、そして、彼の後を追うように僕も足を動かす。
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