上 下
38 / 125
第一章

36

しおりを挟む
「そんじゃ、お前ら先に入るやつを決めろ、五分後、後を追うようにもう一組が入れ。」
「どうする?」
「じゃんけんでいいじゃねぇ?」
「……。」
「うん、それで、いいね、御神くんと加賀くんでじゃんけんして。」

 ひょうちゃんが何で俺がというように睨んでくるが、僕はそれを無視する。

「基準は君たちSクラスの人だし、僕らよりはずっといいだろう?」
「そうだな、御神、ほら、最初はグー、じゃんけん…ぽん。」

 加賀くんはグー、ひょうちゃんはパーをだした。

「それじゃ、僕たちが入るね。」
「……。」

 ひょうちゃんはスタスタと中に入っていく。
 僕はそれを追いかけ、少ししてから彼に僕は選んだアイテムの一つを差し出す。

「何だ、これ。」
「通信機器だよ、耳に着けて、そこの黒い丸いものがマイクになっているから。」
「いらねぇ。」
「ほら、連携とかも重要でしょ。」

 僕は半ば無理やり彼にそれを渡せば彼は眉間にしわを寄せ、そして――。

「こんな玩具はいらない。」
「……。」

 ひょうちゃんは僕の作ったアイテムを燃やした。
 うん、予想はしてたよ、だけど、僕が一月くらい思案して作ったそれを一瞬で燃やすなんて酷くないか?

「お前も、適当に隠れていろ。」
「ついてくるなって言いたいわけ?」
「分かっているじゃねぇか。」
「……。」

 冷めた目で僕を見下す彼に僕は足を止める。

「君が好き勝手するのなら、僕もするから。」
「……。」

 僕の言葉を聞かない彼はそのまま中心部に向かって歩いていく。

「……。」

 残りの加賀くんたちが入ってくるまで、約三分。

 罠仕掛けるには道具もない、時間もない。

 となると。

 僕は持ってきたアイテムを三つ手放す。

 それは球体の追跡アイテムだった。一つはひょうちゃんに、もう二つは今から入ってくる彼らに着ける。

 僕は最後の持ち込み可能なアイテムを身に着ける。

 それは一見すればゴーグルだけど、暗視対応の僕の仕事道具だった。

「はぁ、やっぱり、通信機器じゃなく武器系統がよかったか?
でも、ひょうちゃんが受け取ってくれる可能性が……極めて低かったけどさ…というか、燃やす?」

 僕はため息を我慢していると、追跡アイテムの二つが起動する。

「さて、五分経ったみたいだし、ゲーム、スタート。」

 僕の力がどれほど通用するかはわからない、だけど、それはそれで楽しみだった。

「っと、はぁ、ひょうちゃんのバカ。」

 ひょうちゃんを追っていたアイテムのカメラが潰されたのか砂嵐となる。

「せっかくの雄姿を録画できるせっかくの機会だったのに、何で潰すかな…、というか、この機器だって結構高いのに…。次々壊されたら僕破綻するよ。」

 開始は味方による攻撃だったが、まあ、本番はこれからだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある日、人気俳優の弟になりました。

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

からっぽを満たせ

ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。 そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。 しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。 そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー

僕の宿命の人は黒耳のもふもふ尻尾の狛犬でした!【完結】

華周夏
BL
かつての恋を彼は忘れている。運命は、あるのか。繋がった赤い糸。ほどけてしまった赤い糸。繋ぎ直した赤い糸。切れてしまった赤い糸──。その先は?糸ごと君を抱きしめればいい。宿命に翻弄される神の子と、眷属の恋物語【*マークはちょっとHです】

【好きと言えるまで】 -LIKEとLOVEの違い、分かる?-

悠里
BL
「LIKEとLOVEの違い、分かる?」 「オレがお前のこと、好きなのは、LOVEの方だよ」  告白されて。答えが出るまで何年でも待つと言われて。  4か月ずーっと、ふわふわ考え中…。  その快斗が、夏休みにすこしだけ帰ってくる。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……

おがこは
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?! ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。 凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

処理中です...