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第一章
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「……っ!」
「まだ、倒れぬか。」
男の重い攻撃に僕は耐える。
拳一つ。
蹴り一つ。
どれも重い。
かといって体術にばかり気を取られていたら炎と風が襲い掛かってくる。
正直に言えば詰んでいる。
でも、ここで負けを宣言したら、ひょうちゃんの隣に立つ資格なんてない。
「……。」
動き辛いので何度着物を破ろうかと悩んだが、そのたびに小百合さんと鈴蘭さんの絶対零度の笑みが思い出される。
僕は一度距離を置き、体勢を立て直す。
「はぁ…。」
呼吸を整え、そして、男の攻撃を思い出す。
炎を出す時の予備動作がある。
風を出す時はまた別の予備動作。
そして、彼は炎を得意とするのか、そちらの方が、起動速度が速い。
体術は師範よりは弱いけれども、他のお弟子さんたちに比べれば断然強い。
どうする。
どうする。
僕は頭の中で何度もシミュレーションをするが、どうも決め手に欠ける。
成功率は一割を切る。
「かといって。」
うまくいきそうなモノも正直綱渡りだ。
一歩間違えれば負けるし、それに、大けがを負うだろう。
「……。」
「来ぬか。」
「……。」
男は痺れを切らしたのか、左手を動かす。
僕はその瞬間、仕舞っていた鉄扇を取り出す。
「――っ!」
炎が僕を包み込むように襲い掛かる。
大丈夫、このくらいの炎なら相殺できる。
でも、防戦一方じゃ、駄目だ。
僕の方が先に参る。
かといって、決定的なものがない。
「……ひょうちゃん。」
彼ならどうする。
きっと、力押しだろう。
彼はそういう人だ。
自分の力に過信になって、視野が狭くなる時がある。
「……。」
視野、視界か……。
あまり褒められたものじゃないかもしれない、でも、この一回しかない。
チャンスは一瞬。
相手がしのげば僕の負け。
相手が僕の思惑に嵌ってくれれば僕の勝ち。
さあ、道化は道化らしく踊ろうじゃないか。
「――っ!」
僕の表情から何か読み取ったのか男は警戒する。
でも、もう遅い。
僕は鉄扇を彼の目めがけて投げる。
男はそれを咄嗟に炎で焼くが、その鉄扇は炎では炭には出来ない。
「ちっ。」
舌打ちをして、風で叩き落とした時にはチャックメイト。
投げたと同時に床を蹴った僕は男の右側から攻撃を仕掛ける。
「金剛流 三の型 小夜嵐っ!」
うん…。やってしまった。
いや、まさか、こんなに吹っ飛ぶものかな?
炎と風を操っていた男は無防備だった、そんな無防備な体に僕の最大の力を込めた一撃に耐え切る事が出来ず、壁に叩きつけられた。
「えっと。」
「勝負あり…。」
師範も呆れた顔をして僕を見ている。
うん、やりすぎてしまったようだ。
「まだ、倒れぬか。」
男の重い攻撃に僕は耐える。
拳一つ。
蹴り一つ。
どれも重い。
かといって体術にばかり気を取られていたら炎と風が襲い掛かってくる。
正直に言えば詰んでいる。
でも、ここで負けを宣言したら、ひょうちゃんの隣に立つ資格なんてない。
「……。」
動き辛いので何度着物を破ろうかと悩んだが、そのたびに小百合さんと鈴蘭さんの絶対零度の笑みが思い出される。
僕は一度距離を置き、体勢を立て直す。
「はぁ…。」
呼吸を整え、そして、男の攻撃を思い出す。
炎を出す時の予備動作がある。
風を出す時はまた別の予備動作。
そして、彼は炎を得意とするのか、そちらの方が、起動速度が速い。
体術は師範よりは弱いけれども、他のお弟子さんたちに比べれば断然強い。
どうする。
どうする。
僕は頭の中で何度もシミュレーションをするが、どうも決め手に欠ける。
成功率は一割を切る。
「かといって。」
うまくいきそうなモノも正直綱渡りだ。
一歩間違えれば負けるし、それに、大けがを負うだろう。
「……。」
「来ぬか。」
「……。」
男は痺れを切らしたのか、左手を動かす。
僕はその瞬間、仕舞っていた鉄扇を取り出す。
「――っ!」
炎が僕を包み込むように襲い掛かる。
大丈夫、このくらいの炎なら相殺できる。
でも、防戦一方じゃ、駄目だ。
僕の方が先に参る。
かといって、決定的なものがない。
「……ひょうちゃん。」
彼ならどうする。
きっと、力押しだろう。
彼はそういう人だ。
自分の力に過信になって、視野が狭くなる時がある。
「……。」
視野、視界か……。
あまり褒められたものじゃないかもしれない、でも、この一回しかない。
チャンスは一瞬。
相手がしのげば僕の負け。
相手が僕の思惑に嵌ってくれれば僕の勝ち。
さあ、道化は道化らしく踊ろうじゃないか。
「――っ!」
僕の表情から何か読み取ったのか男は警戒する。
でも、もう遅い。
僕は鉄扇を彼の目めがけて投げる。
男はそれを咄嗟に炎で焼くが、その鉄扇は炎では炭には出来ない。
「ちっ。」
舌打ちをして、風で叩き落とした時にはチャックメイト。
投げたと同時に床を蹴った僕は男の右側から攻撃を仕掛ける。
「金剛流 三の型 小夜嵐っ!」
うん…。やってしまった。
いや、まさか、こんなに吹っ飛ぶものかな?
炎と風を操っていた男は無防備だった、そんな無防備な体に僕の最大の力を込めた一撃に耐え切る事が出来ず、壁に叩きつけられた。
「えっと。」
「勝負あり…。」
師範も呆れた顔をして僕を見ている。
うん、やりすぎてしまったようだ。
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