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第一章
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蘭さんの思いつきで僕たちは道場に向かう。
「お母様、着替えないの?」
「面倒だから、このままでいいじゃない。」
「そうだね。」
僕は二人をジトリと恨みがましく睨む。
鈴蘭さんも蘭さんも僕と違って比較的動きやすそうな恰好をしている。
「紫織、大丈夫か?」
「……そう思うんでしたら助けてください。」
僕は両隣に立つ師範と国明さんを睨んだ。
「これも試練だ。」
「……。」
「あいつの思いつきには付き合う方が賢明さ。」
「……。」
「あらあら、いいではありませんか、現役の警察官と戦えるのですよ。」
「……そうかもしれませんが…。」
後ろから小百合さんの声に僕は何とも言えない顔をする。
「それならばいいではないでしょうか。」
「……。」
明らかに笑っている小百合さんにばれないようにこっそりと溜息を零す。
「まあまあ、いいじゃねぇか。」
「全くの他人事だな。」
「しゃーねーだろう、おれだってそう思うし。」
「でも、どうするんだ、空野、大将だったらあいつだし、あいつの能力は火だぞ。」
四人の中でまともに心配してくれる今井さんに僕は口元に手を当てる。
「何でもありだし……。
火か……。
まあ、何とかなるけど、着物が燃えそうだしな……。
コーティングしても……焦げるよな……。
そうなると…武器……でも、僕の武器は基本体術だしな……。
木刀……邪魔になったら投げそうだし……。
かといって棒術は苦手ではないけど……うーむ。」
「あら、でしたら、こちらはいかが?」
そう言って小百合さんは袂から扇を取り出す。
僕はそれを何気なく受け取り、思わず呻いてしまう。
「う…。」
重い……。
これ…、ただの扇じゃない…。これは…。
「て、鉄扇?」
「正解。」
袖口で口元を隠して笑う小百合さんは明らかに目が笑っていない。
「マジ。」
「やばくねぇ?」
「いや死なないし………多分?」
「なあ、空野……そいつに刃ついているか?」
今井さんの言葉に僕はハッとなり、扇を点検する。
幸いにも刃はついていない、ただの鈍器だった。
「ついてないみたいです。」
「……よかったな?」
「疑問形かよ。」
「いや、分かる。」
「……空野はそれで戦うのか?」
「これなら、火の攻撃を受けたとしても、しのげるので……借ります。」
「そうか。」
四人は何とも言えない顔で僕を見るが、僕だって本当は使いたくはない、でも、明日は普通の授業だし。
それに実技実習も始まる、流石にパートナーを組んでくれる人はいなかったから、見学だと思うけど、万が一のことを考えると、万全の態勢を整えておきたい。
「そう言えば…ひょうちゃん、誰をサポータに任命したんだろう……。」
一瞬僕は余計な事を考えてしまい、頭をぶんぶん振る。
「んあ?」
「どうしたんだ?」
「顔色悪いぞ。」
「……悪いというかせわしなくないか?赤くなったり、青くなったり、白くなったり。」
「おお。」
「何をやっているんだ。」
「あらあら。」
僕は結局道場に着くまでひょうちゃんの事が頭から離れず、百面相していたそうな…。
「お母様、着替えないの?」
「面倒だから、このままでいいじゃない。」
「そうだね。」
僕は二人をジトリと恨みがましく睨む。
鈴蘭さんも蘭さんも僕と違って比較的動きやすそうな恰好をしている。
「紫織、大丈夫か?」
「……そう思うんでしたら助けてください。」
僕は両隣に立つ師範と国明さんを睨んだ。
「これも試練だ。」
「……。」
「あいつの思いつきには付き合う方が賢明さ。」
「……。」
「あらあら、いいではありませんか、現役の警察官と戦えるのですよ。」
「……そうかもしれませんが…。」
後ろから小百合さんの声に僕は何とも言えない顔をする。
「それならばいいではないでしょうか。」
「……。」
明らかに笑っている小百合さんにばれないようにこっそりと溜息を零す。
「まあまあ、いいじゃねぇか。」
「全くの他人事だな。」
「しゃーねーだろう、おれだってそう思うし。」
「でも、どうするんだ、空野、大将だったらあいつだし、あいつの能力は火だぞ。」
四人の中でまともに心配してくれる今井さんに僕は口元に手を当てる。
「何でもありだし……。
火か……。
まあ、何とかなるけど、着物が燃えそうだしな……。
コーティングしても……焦げるよな……。
そうなると…武器……でも、僕の武器は基本体術だしな……。
木刀……邪魔になったら投げそうだし……。
かといって棒術は苦手ではないけど……うーむ。」
「あら、でしたら、こちらはいかが?」
そう言って小百合さんは袂から扇を取り出す。
僕はそれを何気なく受け取り、思わず呻いてしまう。
「う…。」
重い……。
これ…、ただの扇じゃない…。これは…。
「て、鉄扇?」
「正解。」
袖口で口元を隠して笑う小百合さんは明らかに目が笑っていない。
「マジ。」
「やばくねぇ?」
「いや死なないし………多分?」
「なあ、空野……そいつに刃ついているか?」
今井さんの言葉に僕はハッとなり、扇を点検する。
幸いにも刃はついていない、ただの鈍器だった。
「ついてないみたいです。」
「……よかったな?」
「疑問形かよ。」
「いや、分かる。」
「……空野はそれで戦うのか?」
「これなら、火の攻撃を受けたとしても、しのげるので……借ります。」
「そうか。」
四人は何とも言えない顔で僕を見るが、僕だって本当は使いたくはない、でも、明日は普通の授業だし。
それに実技実習も始まる、流石にパートナーを組んでくれる人はいなかったから、見学だと思うけど、万が一のことを考えると、万全の態勢を整えておきたい。
「そう言えば…ひょうちゃん、誰をサポータに任命したんだろう……。」
一瞬僕は余計な事を考えてしまい、頭をぶんぶん振る。
「んあ?」
「どうしたんだ?」
「顔色悪いぞ。」
「……悪いというかせわしなくないか?赤くなったり、青くなったり、白くなったり。」
「おお。」
「何をやっているんだ。」
「あらあら。」
僕は結局道場に着くまでひょうちゃんの事が頭から離れず、百面相していたそうな…。
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