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第三章

《弟 10》

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「お姉様。」
「何かしら?」
「お姉様の周りには精霊王の方はどのくらいいらっしゃるんですか?」
「ソクドは何人だと思う?」

 セイラは少し意地が悪かったかと思ったが、ソクドは意外な反応を見せる。

「四人はいると思います。」
「「「「……。」」」」

 ソクドの言葉にセイラたちは少し驚く。

「何でそう思ったのかしら?」
「お姉様は方々と申しました。」
「ええ。」
「ぼくにはそちらの方が見えていますが、他のカルムさんたちはそれぞれ違う方向を見ていました。」
「……。」
「そう考えると、そちらの方に精霊王様がいると仮定すると、四人は確実にいると思います。」
「何と申しますか…。」
「流石セイラ様の弟君。」
「侮れないな。」

 洞察力のあるソクドに三人は目を見張る。

「私のお呼びした精霊王の方々は全員で六名よ。」
「六…。」
「ええ、火の方、水の方、風の方、地の方、光の方、闇の方の六名よ。」
「お名前はあるんですか?」
「ええ、私が名付けたのだけども。
 火の方は、緋焔。
 水の方は、蒼泉。
 風の方は、碧嵐。
 地の方は、黄砂。
 光の方は、陽冷。
 闇の方は、氷灯。」
「……。」

 ソクドはぶつぶつと呟き、名前を覚えようとする。

「ソクド、貴方が見えているのは地の方で――。」
「オウサ様ですね。」
「……まあ。」

 すぐに覚えたソクドにセイラたちは驚く。

「全員の名を覚えたの?」
「はい、父には人の名と顔を常に覚えるように言われているので。」
「そうなのね。」
「はい、苦手ですけれども、必要な事だと思うので。」
「えらいわね。」

 セイラはソクドの頭を撫でる。
 ソクドはまるで子犬のようにセイラに懐く。

「んじゃ、次はこっちな。」
「カルムさんは覚えました、そちらの方は?」
「私のメイドのミラとレラよ。」
「ミラと申します。」
「レラです。」
「ソクド・ウォルです、よろしくお願いします。」

 しっかりとお辞儀をするソクドにミラはため息を吐く。

「思ったよりも、しっかりとした方ですが、それでも、セイラ様のお近くには置いときたくはありませんね。」
「ミラ。」

 はっきりと拒絶の言葉を吐くミラにセイラは彼女の名を呼び、嗜め、ソクドはギュッと口を閉じた。

「貴方は何故、セイラ様がおひとりか分かりますか?」
「……分かりません。」
「そうですか。」
「分かりませんが「イミゴ」という言葉と何か関連があると思うのは分かりました。」
「「「……。」」」
「ソクドはどういう意味だと思う?」
「分かりませんが、胸糞悪い言葉だと思いました。」
「そう。」

 セイラはソクドの頭を撫でた。

「黒い髪と目を持った者は、忌子、不吉な子、悪魔の子、それぞれ言われているわ。」
「……。」
「災いを呼ぶ人の事、それが、忌子。」
「お姉様は違います。」
「いいえ、私はあの家にとっては災いを呼ぶ、忌子。ソクド、それでも、私の側にいたいと思う?」
「お姉様は違いますっ!」

 激しく否を申すソクドにセイラは目を見張る。

「災いを呼びと言うのなら、父です。」
「ソクド?」
「父の所為で、お母様がいなくなった、あの人が僕からお姉様を奪った。
 それを災いと呼ばず、何と呼ぶんですかっ!」
「………ありがとう、ソクド。」

 自分を受け入れる、無垢な魂にセイラは涙を一粒零し抱きしめる。

「ありがとう。」
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