102 / 133
第三章
《弟 10》
しおりを挟む
「お姉様。」
「何かしら?」
「お姉様の周りには精霊王の方はどのくらいいらっしゃるんですか?」
「ソクドは何人だと思う?」
セイラは少し意地が悪かったかと思ったが、ソクドは意外な反応を見せる。
「四人はいると思います。」
「「「「……。」」」」
ソクドの言葉にセイラたちは少し驚く。
「何でそう思ったのかしら?」
「お姉様は方々と申しました。」
「ええ。」
「ぼくにはそちらの方が見えていますが、他のカルムさんたちはそれぞれ違う方向を見ていました。」
「……。」
「そう考えると、そちらの方に精霊王様がいると仮定すると、四人は確実にいると思います。」
「何と申しますか…。」
「流石セイラ様の弟君。」
「侮れないな。」
洞察力のあるソクドに三人は目を見張る。
「私のお呼びした精霊王の方々は全員で六名よ。」
「六…。」
「ええ、火の方、水の方、風の方、地の方、光の方、闇の方の六名よ。」
「お名前はあるんですか?」
「ええ、私が名付けたのだけども。
火の方は、緋焔。
水の方は、蒼泉。
風の方は、碧嵐。
地の方は、黄砂。
光の方は、陽冷。
闇の方は、氷灯。」
「……。」
ソクドはぶつぶつと呟き、名前を覚えようとする。
「ソクド、貴方が見えているのは地の方で――。」
「オウサ様ですね。」
「……まあ。」
すぐに覚えたソクドにセイラたちは驚く。
「全員の名を覚えたの?」
「はい、父には人の名と顔を常に覚えるように言われているので。」
「そうなのね。」
「はい、苦手ですけれども、必要な事だと思うので。」
「えらいわね。」
セイラはソクドの頭を撫でる。
ソクドはまるで子犬のようにセイラに懐く。
「んじゃ、次はこっちな。」
「カルムさんは覚えました、そちらの方は?」
「私のメイドのミラとレラよ。」
「ミラと申します。」
「レラです。」
「ソクド・ウォルです、よろしくお願いします。」
しっかりとお辞儀をするソクドにミラはため息を吐く。
「思ったよりも、しっかりとした方ですが、それでも、セイラ様のお近くには置いときたくはありませんね。」
「ミラ。」
はっきりと拒絶の言葉を吐くミラにセイラは彼女の名を呼び、嗜め、ソクドはギュッと口を閉じた。
「貴方は何故、セイラ様がおひとりか分かりますか?」
「……分かりません。」
「そうですか。」
「分かりませんが「イミゴ」という言葉と何か関連があると思うのは分かりました。」
「「「……。」」」
「ソクドはどういう意味だと思う?」
「分かりませんが、胸糞悪い言葉だと思いました。」
「そう。」
セイラはソクドの頭を撫でた。
「黒い髪と目を持った者は、忌子、不吉な子、悪魔の子、それぞれ言われているわ。」
「……。」
「災いを呼ぶ人の事、それが、忌子。」
「お姉様は違います。」
「いいえ、私はあの家にとっては災いを呼ぶ、忌子。ソクド、それでも、私の側にいたいと思う?」
「お姉様は違いますっ!」
激しく否を申すソクドにセイラは目を見張る。
「災いを呼びと言うのなら、父です。」
「ソクド?」
「父の所為で、お母様がいなくなった、あの人が僕からお姉様を奪った。
それを災いと呼ばず、何と呼ぶんですかっ!」
「………ありがとう、ソクド。」
自分を受け入れる、無垢な魂にセイラは涙を一粒零し抱きしめる。
「ありがとう。」
「何かしら?」
「お姉様の周りには精霊王の方はどのくらいいらっしゃるんですか?」
「ソクドは何人だと思う?」
セイラは少し意地が悪かったかと思ったが、ソクドは意外な反応を見せる。
「四人はいると思います。」
「「「「……。」」」」
ソクドの言葉にセイラたちは少し驚く。
「何でそう思ったのかしら?」
「お姉様は方々と申しました。」
「ええ。」
「ぼくにはそちらの方が見えていますが、他のカルムさんたちはそれぞれ違う方向を見ていました。」
「……。」
「そう考えると、そちらの方に精霊王様がいると仮定すると、四人は確実にいると思います。」
「何と申しますか…。」
「流石セイラ様の弟君。」
「侮れないな。」
洞察力のあるソクドに三人は目を見張る。
「私のお呼びした精霊王の方々は全員で六名よ。」
「六…。」
「ええ、火の方、水の方、風の方、地の方、光の方、闇の方の六名よ。」
「お名前はあるんですか?」
「ええ、私が名付けたのだけども。
火の方は、緋焔。
水の方は、蒼泉。
風の方は、碧嵐。
地の方は、黄砂。
光の方は、陽冷。
闇の方は、氷灯。」
「……。」
ソクドはぶつぶつと呟き、名前を覚えようとする。
「ソクド、貴方が見えているのは地の方で――。」
「オウサ様ですね。」
「……まあ。」
すぐに覚えたソクドにセイラたちは驚く。
「全員の名を覚えたの?」
「はい、父には人の名と顔を常に覚えるように言われているので。」
「そうなのね。」
「はい、苦手ですけれども、必要な事だと思うので。」
「えらいわね。」
セイラはソクドの頭を撫でる。
ソクドはまるで子犬のようにセイラに懐く。
「んじゃ、次はこっちな。」
「カルムさんは覚えました、そちらの方は?」
「私のメイドのミラとレラよ。」
「ミラと申します。」
「レラです。」
「ソクド・ウォルです、よろしくお願いします。」
しっかりとお辞儀をするソクドにミラはため息を吐く。
「思ったよりも、しっかりとした方ですが、それでも、セイラ様のお近くには置いときたくはありませんね。」
「ミラ。」
はっきりと拒絶の言葉を吐くミラにセイラは彼女の名を呼び、嗜め、ソクドはギュッと口を閉じた。
「貴方は何故、セイラ様がおひとりか分かりますか?」
「……分かりません。」
「そうですか。」
「分かりませんが「イミゴ」という言葉と何か関連があると思うのは分かりました。」
「「「……。」」」
「ソクドはどういう意味だと思う?」
「分かりませんが、胸糞悪い言葉だと思いました。」
「そう。」
セイラはソクドの頭を撫でた。
「黒い髪と目を持った者は、忌子、不吉な子、悪魔の子、それぞれ言われているわ。」
「……。」
「災いを呼ぶ人の事、それが、忌子。」
「お姉様は違います。」
「いいえ、私はあの家にとっては災いを呼ぶ、忌子。ソクド、それでも、私の側にいたいと思う?」
「お姉様は違いますっ!」
激しく否を申すソクドにセイラは目を見張る。
「災いを呼びと言うのなら、父です。」
「ソクド?」
「父の所為で、お母様がいなくなった、あの人が僕からお姉様を奪った。
それを災いと呼ばず、何と呼ぶんですかっ!」
「………ありがとう、ソクド。」
自分を受け入れる、無垢な魂にセイラは涙を一粒零し抱きしめる。
「ありがとう。」
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
【完結】妃が毒を盛っている。
佳
ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。
王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。
側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。
いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。
貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった――
見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。
「エルメンヒルデか……。」
「はい。お側に寄っても?」
「ああ、おいで。」
彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。
この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……?
※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!!
※妖精王チートですので細かいことは気にしない。
※隣国の王子はテンプレですよね。
※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り
※最後のほうにざまぁがあるようなないような
※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい)
※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中
※完結保証……保障と保証がわからない!
2022.11.26 18:30 完結しました。
お付き合いいただきありがとうございました!
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる