今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

第二章

《学ぶ １４》

「すぅ、レラ、ミラ、カルム、そこに座りなさいっ！」
「「「……。」」」

　石畳を指さすセイラに三人はおとなしく座る。

「カルム、助かったわ、でも、先ほどの暴走は何なの。」
「……だって、お前が。」

　唇を尖らせるカルムにセイラは彼の頭を軽くたたく。

「私を化け物と言って切れていたら、そんなの体が持たないわよ。」
「――っ！」

　何か言いたそうな顔で顔を上げるカルムにセイラは悲し気に微笑んだ。

「仕方ない事なのよ、私の髪を染めたり、自分を偽らないと、化け物と言われ続けるのよ。」
「……そんなの、お前の所為じゃないだろう。」
「ええ、そうね。」

　セイラは俯くカルムを一瞥して、ミラを見る。

「ミラも切れてどうするの、私が居れば確かに守りは十分かもしれないけど、それでも、万一があったらどうするの、それに、カルムだけで十分だったでしょ。」
「……申し訳ございません。」

　俯き謝るミラにセイラがため息を零す。

「貴女やレラが傷つけば死んでしまったレミラに申し訳ないわ。」
「……。」
「私は貴女たとってはか弱い主ですけど、それでも、守られるだけの存在ではいたくないのよ。」
「……。」

　黙り込むミラにセイラはさみし気に微笑む。

「貴女が私を大切に思っているのと同じくらい私だって貴方たちが大切なのよ。」
「……。」
「レラ。」
「ひゃ、ひゃいっ！」

　先の二人と違い声音を変えるセイラにレラは肩を跳ね上げる。

「確かに帰るのが遅くなった私たちが貴女を叱るのはおかしいかもしれないけど、それとこれは話が別よね。」
「ご、め、なさい…。」
「こんなに暗くなっているのに出歩くなんてダメでしょ、そもそもすれ違ったりしたらどうするつもりなのっ！」
「か、風が教えてくれますから…。」
「それだったら、私たちが帰って来るのは分かっていたわよね。」
「は、はい…。」
「それなら、何で大人しく待ってないの。」
「だって…。」
「万が一があったら私は心配で死んでしまいそうだわ。」
「そんな。」
「だったら、三人ともちゃんと私が何で怒っているのか、何で心配しているのか、ちゃんと答えを出しなさい。」
「ああ。」
「畏まりました。」
「はい。」
「……ふぅ。」

　セイラはため息を零し、黙って自分たちを見ている老人に微苦笑を見せる。

「すみません、みっともない所を見せて。」
「いや…。」
「ほら、三人とももういいわ、立ちなさい。」
「「「……。」」」

　腰を上げようとした三人は同時にピキリと体をこわばらせる。

「どうしたの？」
「足が…。」
「しびれました。」
「動けません。」
「あら、あははは。」

　セイラは自分がやりすぎたことに気づき、から笑いを浮かべる。