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第二章
《名前 7》
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“黄”
“茶”
“橙”“
“土”
“砂”
“石”
“泥”
“地”
“岩”
「……私、「泥」って何よ、「泥」って。」
セイラは思いつかず多分適当に書いてあった文字を見て呆れながらその字を消した。
「うーん、色の文字的には「黄」か「茶」かな…、後は「砂」よりはもっとずっしりとした感じの人だったから、「岩」、「地」。」
でもなー、とセイラはぼやきながら頭を悩ませる。
「黄地か、黄砂がいいかな。」
「決まりそうなのか?」
頭を抱えているセイラにカルムはのぞき込む。
「うん、「黄地」か「黄砂」で迷っているの。」
「オウチかオウサな。」
あんまり大差ないんじゃないかという表情をするカルムにセイラは唇を尖らせる。
「もう、もう少し一緒に考えてよ。」
「と言っても、お前、もう決めているんじゃねぇか?」
「えっ?」
「だってさ、砂よりは岩や地とかい言ってたのに、それを選んでるんじゃねぇか。」
「……でも。」
「それに、確かノームの見たって、俺たちよりは年上でも、それでも、他の連中よりはちび何だろう?」
「……。」
「なら別に砂でもいいじゃねぇの?」
「……。」
カルムの言葉にセイラはジッと文字を見つめる。
「本当にかなわないな。」
自分でも意識していなかった部分をつかれ、セイラは困ったような笑みを浮かべる。
「もう…、私からカルムを手放せないじゃない…。」
一緒にいる事が最近当たり前になった。
意識してないのに差し出される手。
大丈夫かと問いかける瞳。
自分を想って繰り出される言葉。
「お前何言っているんだ?」
セイラの呟かれた言葉は本当に小さかったのにも関わらず、カルムはそれを拾い上げていた。
「まだ、お前は俺を引きはがすことを考えていたのかよ。」
呆れた顔を知るカルムにセイラは小さく顎を引く。
「本当にお前って賢いし癖に馬鹿だよな。」
「馬鹿なのか、賢いのかどっちなのよ。」
「両方だろう。」
「……。」
カルムの悪気ない言葉にセイラの心は地味に傷つく。
「普段はしっかりしているけど、どこか抜けているし。
それに、賢い癖にたまに突拍子もない馬鹿な考えを思いつく。
だから、俺は…俺たちはお前を放っておけないと思っているんだよな。」
「カルム?」
「ん?何でもねぇよ。」
最後呟きはどうやらセイラには聞き取れなかったのか、彼女は不思議そうな顔をしていた。
「で、どっちの名前にするんだ?」
聞いているはずなのにどこか決まっているんだろう?というような顔をしているカルムにセイラは彼を軽く睨む。
「こっちよ。」
セイラはやけくそ気味にそう言いながら「黄砂」に丸を付ける。
「だよな。」
やっぱりなというような満足そうな笑みを浮かべているカルムに、セイラはムッとしたのか彼の脚に向けて蹴りを繰り出す。
「ぐ…。」
当たり所が悪かったのか、カルムは呻き、目には涙を浮かべながら恨みがましそうにセイラを睨む。
その様子を見たセイラは溜飲が下がる思いがした。
「さーて、そろそろ、夕飯の準備をしようかな?」
「なんか手伝おうか?」
「ううん、大丈夫、この前みたいに台所を半壊されたくないしね。」
「……お前、それ引きずるな。」
「そうかな?」
セイラは小首を傾げ、カルムは苦虫を噛み潰したよう顔をする。
「ああ。」
「うーん、そんなつもりはないんだけど。」
「無意識か…。」
セイラの表情でそれが嘘ではないのだと理解したカルムは諦めたようにため息を一つ零した。
“茶”
“橙”“
“土”
“砂”
“石”
“泥”
“地”
“岩”
「……私、「泥」って何よ、「泥」って。」
セイラは思いつかず多分適当に書いてあった文字を見て呆れながらその字を消した。
「うーん、色の文字的には「黄」か「茶」かな…、後は「砂」よりはもっとずっしりとした感じの人だったから、「岩」、「地」。」
でもなー、とセイラはぼやきながら頭を悩ませる。
「黄地か、黄砂がいいかな。」
「決まりそうなのか?」
頭を抱えているセイラにカルムはのぞき込む。
「うん、「黄地」か「黄砂」で迷っているの。」
「オウチかオウサな。」
あんまり大差ないんじゃないかという表情をするカルムにセイラは唇を尖らせる。
「もう、もう少し一緒に考えてよ。」
「と言っても、お前、もう決めているんじゃねぇか?」
「えっ?」
「だってさ、砂よりは岩や地とかい言ってたのに、それを選んでるんじゃねぇか。」
「……でも。」
「それに、確かノームの見たって、俺たちよりは年上でも、それでも、他の連中よりはちび何だろう?」
「……。」
「なら別に砂でもいいじゃねぇの?」
「……。」
カルムの言葉にセイラはジッと文字を見つめる。
「本当にかなわないな。」
自分でも意識していなかった部分をつかれ、セイラは困ったような笑みを浮かべる。
「もう…、私からカルムを手放せないじゃない…。」
一緒にいる事が最近当たり前になった。
意識してないのに差し出される手。
大丈夫かと問いかける瞳。
自分を想って繰り出される言葉。
「お前何言っているんだ?」
セイラの呟かれた言葉は本当に小さかったのにも関わらず、カルムはそれを拾い上げていた。
「まだ、お前は俺を引きはがすことを考えていたのかよ。」
呆れた顔を知るカルムにセイラは小さく顎を引く。
「本当にお前って賢いし癖に馬鹿だよな。」
「馬鹿なのか、賢いのかどっちなのよ。」
「両方だろう。」
「……。」
カルムの悪気ない言葉にセイラの心は地味に傷つく。
「普段はしっかりしているけど、どこか抜けているし。
それに、賢い癖にたまに突拍子もない馬鹿な考えを思いつく。
だから、俺は…俺たちはお前を放っておけないと思っているんだよな。」
「カルム?」
「ん?何でもねぇよ。」
最後呟きはどうやらセイラには聞き取れなかったのか、彼女は不思議そうな顔をしていた。
「で、どっちの名前にするんだ?」
聞いているはずなのにどこか決まっているんだろう?というような顔をしているカルムにセイラは彼を軽く睨む。
「こっちよ。」
セイラはやけくそ気味にそう言いながら「黄砂」に丸を付ける。
「だよな。」
やっぱりなというような満足そうな笑みを浮かべているカルムに、セイラはムッとしたのか彼の脚に向けて蹴りを繰り出す。
「ぐ…。」
当たり所が悪かったのか、カルムは呻き、目には涙を浮かべながら恨みがましそうにセイラを睨む。
その様子を見たセイラは溜飲が下がる思いがした。
「さーて、そろそろ、夕飯の準備をしようかな?」
「なんか手伝おうか?」
「ううん、大丈夫、この前みたいに台所を半壊されたくないしね。」
「……お前、それ引きずるな。」
「そうかな?」
セイラは小首を傾げ、カルムは苦虫を噛み潰したよう顔をする。
「ああ。」
「うーん、そんなつもりはないんだけど。」
「無意識か…。」
セイラの表情でそれが嘘ではないのだと理解したカルムは諦めたようにため息を一つ零した。
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