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第二章
《名前 1》
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「名前か…。」
セイラはみんなが寝静まった後リビングで一人、紙を広げ、名前を考えていた。
「六人の名前か…無謀だったかな。」
単純な名前は嫌だった。
かといって下手に拘った名前は思いつかないというジレンマに彼女は頭を抱えていた。
「うーん…。」
「まだ、起きてたのかよ。」
「えっ?カルム?」
聞き覚えのある声にセイラが声をした方を見れば、少し汗をかいたカルムがそこにいた。
「どうしたの?」
「少し走っていたんだよ。」
「そうなんだ。」
「お前は…名前か?」
「うん。」
カルムはセイラが広げている用紙を見てひとり納得する。
「いっその事、赤、青、黄、緑、白、黒でいいんじゃねぇ?」
「駄目よ。」
カルムの言葉にセイラは軽く彼を睨みながら唇を尖らせる。
「でも…いっその事色の名前か…。」
セイラは思い当たる色の名前を浮かべる。
赤、蘇芳、薄紅、紅、朱、レッド、スカーレット…。
青、蒼、藍、碧、瑠璃、浅葱、ブルー…。
黄、萌黄、黄土、レモン色、イエロー…。
緑、グリーン、モスグリーン、カーキー…。
白、純白、白雪、ホワイト…。
黒、漆黒、黒曜、玄、墨、ブラック…。
「なんか、ぴんと来ないわね…。」
「お前、何だよ、その文字。」
セイラの手元を見ていたカルムは見覚えのない文字を見て、顔をしかめている。
「あっ、これは…。」
前世の記憶の中にあった漢字を思わず書いてしまったセイラはどう説明するか考えるが、言い訳が思いつかなかった。
「どこか遠い国の文字だったはずだけど、いつ覚えたのか忘れたな…。」
「ふーん、どういう意味だ?」
「これは「赤」カルムの瞳の色を指すの。」
「ふーん、こっちは?」
「「青」ね、こっちはミラの瞳の色。」
「面白いな、もっと、この字を教えてくれないか?」
「えっ?でも…。」
「こんな文字見たことないし、暗号代わりに使えるだろう。」
「……。」
カルムの言葉にセイラは納得する。
もし、万が一の時誰にも読まれたくない文章があれば日本語で書けばきっと知らなければ子供の落書きのように思われるだろう。
だから、カルムやレラ、ミラが知っていればきっとそれは強みになる。
セイラはしばらく考えて頷いた。
「いいかもしれない。」
「いいのか。」
「うん、でも、漢字は難しいから、まずは「平仮名」と「片名かな」を教えるね。」
「オッケー。」
ニカリと笑うカルムにセイラはほっと笑う。
彼がいるおかげでセイラは少し心に余裕を持つことができる、レラとミラはどこか妹や庇護の対象だと思っているところがある。
だけど、カルムは異性で、戦える人だと思っているからか、セイラは無意識に対等な人だと認識していた。
そのお陰でセイラは笑えるのだった。
セイラはみんなが寝静まった後リビングで一人、紙を広げ、名前を考えていた。
「六人の名前か…無謀だったかな。」
単純な名前は嫌だった。
かといって下手に拘った名前は思いつかないというジレンマに彼女は頭を抱えていた。
「うーん…。」
「まだ、起きてたのかよ。」
「えっ?カルム?」
聞き覚えのある声にセイラが声をした方を見れば、少し汗をかいたカルムがそこにいた。
「どうしたの?」
「少し走っていたんだよ。」
「そうなんだ。」
「お前は…名前か?」
「うん。」
カルムはセイラが広げている用紙を見てひとり納得する。
「いっその事、赤、青、黄、緑、白、黒でいいんじゃねぇ?」
「駄目よ。」
カルムの言葉にセイラは軽く彼を睨みながら唇を尖らせる。
「でも…いっその事色の名前か…。」
セイラは思い当たる色の名前を浮かべる。
赤、蘇芳、薄紅、紅、朱、レッド、スカーレット…。
青、蒼、藍、碧、瑠璃、浅葱、ブルー…。
黄、萌黄、黄土、レモン色、イエロー…。
緑、グリーン、モスグリーン、カーキー…。
白、純白、白雪、ホワイト…。
黒、漆黒、黒曜、玄、墨、ブラック…。
「なんか、ぴんと来ないわね…。」
「お前、何だよ、その文字。」
セイラの手元を見ていたカルムは見覚えのない文字を見て、顔をしかめている。
「あっ、これは…。」
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「どこか遠い国の文字だったはずだけど、いつ覚えたのか忘れたな…。」
「ふーん、どういう意味だ?」
「これは「赤」カルムの瞳の色を指すの。」
「ふーん、こっちは?」
「「青」ね、こっちはミラの瞳の色。」
「面白いな、もっと、この字を教えてくれないか?」
「えっ?でも…。」
「こんな文字見たことないし、暗号代わりに使えるだろう。」
「……。」
カルムの言葉にセイラは納得する。
もし、万が一の時誰にも読まれたくない文章があれば日本語で書けばきっと知らなければ子供の落書きのように思われるだろう。
だから、カルムやレラ、ミラが知っていればきっとそれは強みになる。
セイラはしばらく考えて頷いた。
「いいかもしれない。」
「いいのか。」
「うん、でも、漢字は難しいから、まずは「平仮名」と「片名かな」を教えるね。」
「オッケー。」
ニカリと笑うカルムにセイラはほっと笑う。
彼がいるおかげでセイラは少し心に余裕を持つことができる、レラとミラはどこか妹や庇護の対象だと思っているところがある。
だけど、カルムは異性で、戦える人だと思っているからか、セイラは無意識に対等な人だと認識していた。
そのお陰でセイラは笑えるのだった。
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