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第一章

《セイラ》

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 熱にうなされた彼女は前世の知識という名の記憶をフッと思い出した。ただ、自分がどんな名前でどんな性格をしていたかは忘れてしまったが、ただ、知識だけは彼女の中にあったのだ。

「セイラ様、大丈夫ですか?」
「……。」

 女性の声に顔を向けるとそこには金色の髪が綺麗な女性がそこにいた。

「……レ…ミ…ラ?」
「ああ……。」

 自然と零れた名前に女性レミラは涙を流す。

「よかった…神様、ありがとうございます…。」

 セイラはフッと自分の身に起こった事を思い返す。そう今日はレミラと彼女の娘たちと一緒に街を歩いていた。
 そして、知らない人にぶつかった瞬間チクリと痛みを感じて、意識が遠くなったのを覚えている。

「……。」

 セイラはようやく自分が毒で死にかけた事に気づいた。

「レミラ…ごめんね。」
「何がですか?」
「しんぱいかけちゃって。」
「いいのですよ、こうして生きていてくださったのですから。」

 涙を拭う彼女は本当の母親のようだったが、実際は違う、彼女は自分の乳母なのだ、そして、彼女は自分の母親を知らない。

「レミラ……ふたりは?」
「二人は自分の部屋で祈っていますよ。」
「いのり?」
「はい、セイラ様が意識を取り戻すようにと。」
「…ありがとう。」
「それは貴女様が元気になってから二人に伝えてください。」
「うん。」

 セイラは頷き、そして、だんだん落ち始めた瞼に、体が本調子じゃない事に気づく。

「まだ、体がお辛いですよね。」
「……うん…。」
「なら、お休みになってください。」

 自分の目元を優しい温もりが覆う。

「おやすみ…レミラ……。」
「はい、おやすみなさい。」

 優しい声を聴きながらセイラは意識を失うように眠りについた。
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